男性用【語り部蝋卵〜鬼才編〜】
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蝋卵
[あらすじ]《3分程度》
語り部の蝋卵。界隈の一部から物好きと謗られ続け、早数十年。語り草は絶える事無しと、ほくそ笑んでいる―――。
【蝋卵】
やあ、こんにちわ。…こんばんわかな? ひひ、夕暮れ時の挨拶が欲しいものだね。
ワタシは蝋卵。語り部の中では古参、と呼ばれるようになったのかな。
ひひ、時の流れは水鳥の様にとはいかないねぇ。
ワタシが語る“もの”? ひひ、ワタシは“者”を語るのさ。それも、“語り部”をね。
今日は誰を語ろうか。有名どころにも無名達にも、これ以上にないほど、濃厚で芳しい道があるからね。
(ハッとして)
そうだ、今日は“彼”にしよう。
大丈夫、語り部業が素晴らしく栄えている、この時代に生きる全ての人間が知っている名だ。
『第二の咲鳥』。
最初に彼をそう呼んだ誰かは、彼を妬んでいたのやもしれない。彼がその名を与えられて、困ればいいと企んでいたのやもしれない。
でもその名は、彼を益々有名どころにしてしまった。この名を聞けば、ニワカも振り向くご活躍だ。
彼の出生はご存知かな? 名家の分家に生まれ、彼にとっては記憶にもない“些細な出来事”によって、本家の養子になった。
つまり、彼は今後生き長らえるのに、何一つ困らない地位に居たクセに、それを手放して語り部になったのさ。
ひひ、天才の考える事ってのは、凡人には理解し難いねぇ。
そうして、無名だったのはほんの数ヶ月。どこぞの騎士崩れに名を授かると、同時期の無名達を一気に置き去って、中堅になる頃には、誰もが知っている語り部となった。
ワタシから言わせてもらえば、“あり得ない”。そんな、伽話のような展開があってたまるかい。
戦えもしなければ、顔が利く訳でもなく、ただあったのは語りの才だけ。
ひひ、正しく夢物語だよ。
…だが、彼は居る。
有名を目指した無名達が歯軋りをした先に。
向けられていた視線を奪われた“元”有名達が目を逸らした先に。
ひひ、『第二の咲鳥』だなんて。
とんでもない。そんな異名、彼の足元にも及ばないさ。
ひひひ、
彼は『鬼才』なのだから。
一度は誰もが夢を見るソレを、夢見ることなく手に入れて、その地位に驕る事なく居座り続けられる、…その強欲さに目眩がするよ。
ひひ、天才の思考なぞ、凡人には理解できないけれど。
……いつまでその栄光が続くのか、見てみたい気もするけど…ワタシが堕ちる訳にはいかないねぇ。
さあ、今日はこれにて閉幕しよう。その天才に会いたければ探してみたらいい。
…逃げ足がとてつもなく早いらしいからな、逃げられないようにね。
STORY END.