女性用【ハッピーエンド】
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冷静な表情の少女
[あらすじ]《3分半程度》
大きな玉座に座るのは、私の娘よりも幼い少女だった。その頭に被るには少々大きい王冠は、だけれど彼女によく似合っているように見える。
私を見据えた少女は静かに口を開いた―――。
【冷静な表情の少女】
…よく来た、勇敢で愚かな騎士よ。
私は魔を統べる王、…だったものだ。
かつて大陸中を死の恐怖に陥れた力はもう無い。つい先程、最後の眷属との契りを解いてやったところだ。
今やたった一匹のスライムよりも非力な私に何用か。
……何? 私が何故王になり得たか、だと?
…………知らぬ。
気が付けば私は私だった。“王”と崇められ、“王”と恐れられていた。
私のひと振りであらゆる生命が死んだ。太陽は沈み、海は割れ、また多くの生命が魔に堕ちた。
それによって私は力を得、数多の魔が眷属にと頭を垂れてきた。
息をつく間も無かった、いや、必要が無かった。私は常に前を見ていた。その背を、玉座に預けたことなど一度も無かった。
…勇者、…と名乗る者が現れた。強さは羽虫以下だったけれど、妙に熱い奴だった。
勇者――アレンは何度も何度も私の前へやって来た。
私がアイツに隙を見せた事など一度だって無かったが、…諦めの悪い、愚かな奴だった。
…………ヒトの命は有限であると気付いた時には、もう。アレンが来なくなって数百年が経っていた。
(嬉しそうに)
しかし奴はまた現れた。
アレンという名では無かったけれど、魂が同じだった。私が違える筈も無い。
ある時は魔術師。ある時は武闘家。又ある時は弓使い。
アレンの魂は幾度も“ウマレカワリ”をして、私の元へ現れた。…奴は何も覚えていなかったがね。
だけれど、数百年経っても、数千年経っても、私の強さは変わらなかったからな。
どのアレンも、私に過擦り傷一つ付けられなかった。
…だけれど、楽しかったよ。
私を恐れる者ばかりだった。私を崇める者ばかりだった。
だから、私を倒さんと挑んでくる存在の、何と嬉しかったことよ。
アレンを待つ日々だけが、この永い時の中での癒やしだった。
…はは、これが、“魔王”と恐れられた女の末路よ。
さあ、もう充分。
これ以上、私に構う理由もないだろう。
…………次の“ウマレカワリ”では、もう…私に縛られる必要はないのだからな。
STORY END.