男女兼用【しょっぱい温度】
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疲れきった声
[あらすじ]《4分程度》
こちらを非難する声より、ずっと痛かった。よく知りもしないクセに、なんて。在り来りなセリフを吐いてしまえるくらいには、恥も何もかも無くなっていた―――。
【疲れきった声】
逃げていいって、何処へですか。頼っていいって、誰をですか。投げ出していいって、何をですか。
逃げる道は何処ですか、頼る相手は誰ですか、投げ出した先には何があるんですか。
貴方へ逃げていいんですか、貴方を頼っていいんですか、貴方へ投げつけていいんですか。
…………ほら、何も言わない。
(イラついたように)
結局、口だけ出すんですよ。“貴方達”は。同情して、正義面して、ボク達の事を『可哀想』って言うんですよ!
努力っ…しましたよ…っ! 勉強もした、体力づくりもしたし、身嗜みにも気を遣いました…!
それでも止まらないんですよ、嘲笑が。
それでも止まないんですよ、ボクらを指差す大人達の小さな声が。
……。
『死は救済』だと、何かで読みました。
巫山戯たシスターがそんな事を言って、殺人を正当化しているマンガか何かだったかな…。
使い回された、在り来りな、だけれどその言葉の意味は正しく理解されていない。
でも、ボクらは知っています。
死は…救いなんですよ。逃れられるんです、今のこの状況から。
生きているだけで、後ろ指を差されて、笑われるこの状況から、逃げ出せるんです。
(諦めたように笑って)
…………………。
逃げていいと、みんな言います。
頼っていいと、みんな言うんです。
でもその先に、みんなは居ないんです。
自分の所へ逃げて来ないように。
自分の事を頼って来ないように。
姿の見えない所から、中身のない甘い言葉を落としていく。
それを拾っても、落とした人はもう何処にも居ないのに。
ボクらは誰かにしがみつきたくて、縋りたくて、それでも目の前の人達の顔を曇らせたくなかった。
ボクらが我慢すれば、ボクらが耐えればって…無理矢理、自分を納得させてた。
だけど。
…痛かった、つらかった、苦しかった。
…逃げたくて、逃げたくて、たまらなかった。
どうしてボクらが、って。
何も悪い事なんてしてないのに、って。
……。
本当は…、『逃げていい』って。『頼っていい』って。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ心が軽くなってたんですよ。
だけれど、ボクらは色んな事を考えてしまって…。
逃げられた先の事…逃げられなかった時の事…頼った先で拒絶されたら…頼った人を悩ませたり、困らせたりしちゃったらって…。
(今にも泣きそうな声で)
………ごめんなさい…手を差し伸べられても、ボクらはその手を上手く掴めないかもしれません。
たくさん悩んでしまうから、待たせてしまうかもしれません。
………“それでも、いい”?
…は、…ははは…。ぁぁ、…はは…っ…
(涙声で)
…あの、…手を、握っていてくれませんか。
…ありがとうございます…、…ああ、温かいなぁ………。
STORY END.