男性用【分岐を違える】
台本タイトルは【ぶんきをたがえる】と読みます。
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思い出す男
[あらすじ]《2分程度》
馬鹿な人でしたね…。自嘲も混ぜてそう言った男は目を伏せて、だけれど悲しげな空気など感じさせないままに、溺れていたんです、と微笑んだ―――。
【思い出す男】
お人好しでしたよ、こんな裏社会で生きていくには、苦労しそうなほどに。
とある男が、金に困っているのだと咽び泣けば、懐にある数少ない金を全て分け与えてしまうんです。
とある女が、子供に食べさせてやれないのだと縋りつけば、盗られないようにと、忍ばせていたはずのパンを差し上げてしまうんです。
例え、その困窮が偽りだとしても、彼女は困っている人は居なかったんですね、良かったです、と笑うんです。
……偽善です。
彼女がしていたのは、誰の心も幸せにしない行為です。
簡単に聖女と呼ばれてしまうような、非常に鬱陶しいエゴです。
だというのに、私は彼女に手を差し伸べて共に歩く道を提示しました。
貴女が来ないと困ります。そんな風に言えば、彼女が何物も差し置いて着いてきてくれると分かっていました。
案の定。とでも言いますか。
ふふ、そう差し向けたというのに、変な言い方ですね。
彼女が私と共に行くようになって、いくつかの事が変わりました。
最も変わった点は、彼女に声を掛ける物乞いが居なくなりました。…えぇ、全く。何かしたか、ですって?
(少し笑って)
まさか。私は善良な一般人ですから。野蛮な事は御免ですよ。
まあ、そんな風に良い事もありましたけれど、悪い事もたくさんありましたよ。
だけれどその度に彼女が笑うんですよ。大丈夫です、と。誰もケガしなくてよかった、と。
少しね、平和ボケしていたんですよ。…ええ、きっと。
……………………。
彼女が、最期に言ったんです。
“アナタが、ケガをしなくて良かった”
…………お人好しですよ。
……ほんっとうに…、イヤに、なるくらい……。
STORY END.