女性用【貴方がそう決めたならば】
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シュリーナ・フォン・アダテール
〈公爵令嬢。第一王子の婚約者。真面目で慈悲深い彼女への断罪は彼女を知る者が目を瞠る程に予想外だったらしい〉
[あらすじ]《4分程度》
「お前を国外追放とする!」
声高らかにそう宣言した婚約者の言葉にシュリーナはドレスを少しだけ強く掴む。だけれど、表情は変えず、いつもと同じような声色で切り返した――。
【シュリーナ・フォン・アダテール】
ミクリオ殿下。それが貴方の決断ならば、従いましょう。
ですが、いくつか訂正と意見を申しても宜しいでしょうか。
まさか、この国の第一王子ともなる御方が相手の言い分も聞かず、臣下の意見にも取り合わず、独断で自分の婚約者を国外追放などと、馬鹿げた事は仰いませんよね?
あら、良かった。それでこそ、ワタクシの知っている…、ワタクシが好きだった殿下ですわ。
ではまず、そちらにいらっしゃるウィラー男爵様のご令嬢、マリアンヌ・ウィラー様への『嫌がらせ』の件ですが、全くもって身に覚えのないことでございます。
従者や取り巻きにやらせた? いやですわ、殿下。
いくら婚約者になってから一度もワタクシの家へ来ない殿下でも、ワタクシが従者をこれ見よがしに侍らす事や使う事を苦手にしているのは……知っていますよねぇ?
それに、“取り巻き”とはどなたの事を仰ってますの? ワタクシにはそのような存在は居ませんわ。一体誰を、そうだと、勘違いなさっているのです?
フラミー令嬢やメリナ令嬢、ハーニャ令嬢……?
(発言の意図に気付いて怒りを滲ませ、)
……っ! 殿下! 今すぐ発言を撤回して下さいまし! 彼女達は間違ってもワタクシの取り巻きなどではございませんわ!
彼女達は、ワタクシの大切な友人です。
この国の第一王子で有らせられるミクリオ殿下の婚約者。そんな立場のワタクシに遠慮すること無く、対等な関係でいてくれる数少ない、大切な、本当に大切な友人なのです。
(冷静になって)
…発言の撤回、感謝致します。
ワタクシはマリアンヌさんへ嫌がらせなど行っておりません。先程殿下が仰られた、教科書を破る、水を掛ける、大人数で集って理不尽に責め立てる……なんて。
そのような幼稚な事をしているヒマなどないのですよ。
ワタクシは貴方様の婚約者ですもの。
王族としての振る舞いやルールを学ばなければいけません。
パーティーのご来賓の名前を覚え、その方の国の特徴や特産を覚え、その方に失礼のないように出迎えなければ。
ああ、王妃様のお茶会にも出席して、…ああ、ダンスも所作も完璧にして、……。
ワタクシ、他人の学園生活の邪魔が出来るほど、優秀ではありませんの。何もかも覚えるのが遅くて、教えてくださる先生方にはいつも迷惑ばかり…。
貴方様は、知らなかったでしょう?
貴方様の前では、常に微笑みを絶やさない、毅然とした婚約者でいようと努力しましたもの。
たくさん、…ったくさん…! 貴方様の隣で、笑えるように、努力を…しましたものっ…!
(声が震えないようにして)
だから、贈り物の一つもせず、お出掛けの一つも誘わず、事務的にエスコートをこなしていらっしゃった貴方様は、…気付かなかったでしょう?
……、マリアンヌさん、そのカチューシャ。とっても可愛らしくて、貴方の桃色の髪によく似合っていてよ。
殿下からの贈り物ですわね。…後生大事になさって下さいな。
――殿下。
もう、良いですわ。
いくら否定しても、いくら望んでも、貴方様の心にワタクシの声は届かない。
だから、もう良いのです。
(独り言のように)
…ああ、だけれど不思議ね。
公衆の面前で謂れの無い罪を裁かれても、
婚約者でもない女性を、はしたなく侍らせていても、
まだ、こんなに好きなのね。
……なんて、諦めの悪い女…。ワタクシの方が…はしたなくて、本当…嫌になるわ。
STORY END.