男性用【語り部影函〜魔女編〜】
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影函
[あらすじ]《3分程度》
語り部影函は老ゐを知らぬ。魔女と呼ばれ畏れられる者からの呪ゐを受けた彼は、死ぬ迄若く在り続けたとゐう―――。
【影函】
よし、始めるとしようか! ボクは影函。語り部やって、恐らくは四十年ほど経ってるかな。
(困惑する客に気付いて)
ん? ああ、ボクの見た目について? まあ所謂少年って感じだね。これについては……あ、そうだ。今日はこれについて語ってしまおう。
何だかんだこの話は…嗚呼、昔やったっけ。朧に怒られた奴だ。あんな地であんな醜女の話をするんじゃね〜…! って。はは、懐かしいなぁ。
…っあ、話が逸れてしまったね。それじゃあ、老いを感じるヒマもなく、有意義な時を過ごそうか。
その魔女はゴーシェの森に住んでいた、悪戯好きの愚かな女だって有名でね。まあ、悪戯って可愛いもんじゃなかったけれど。
悪戯って魔女が自称してるだけで、中身はヒドイもんだったよ。
家の屋根を吹き飛ばしたり、飼われている犬を勝手に魔物のエサにしたり、魔物を人間に変えて町中で突然変化を解いたり…。
挙げていくとキリが無いほどにヒドイものばかりだったんだけど、誰も魔女になんて手出しは出来ない。
…だってそんな魔女に手出しなんてしたら、どんな報復が返ってくるか分かったもんじゃないでしょ?
屋根を吹き飛ばされた家の住民がずぶ濡れになってるのを見て、指を差して。
腹を食いちぎられた犬の死体を見て、泣き喚いている飼い主の子供を見て、腹を抱えて。
魔物に引き裂かれる町の人間を見て、涙が零れる程に笑い転げるような醜女だもの。
そんな、正しく魔女と呼ぶに相応しい女にボクが掛けられた呪い――いや、これも彼女にとっては悪戯だったのかもしれないけれど。
ゴーシェの森に、ほど近い町には魔女の悪戯に疲弊する人達が居た。ボクはそこで魔女の愚行を聞いて憤ったよ。
当時、齢十三だったボクを優しく受け入れてくれた町の人達になんて事をするんだって。
でもほら、まだ子供だったし。憤った所でボクには何も出来ないんだけどね。
そうしたら、町を出る前日だったかな。
「魔女」が来たんだ――。
その日も語りを終えて、お客からの金を数えてそろそろ片付けに入ろうと思ってた目の前に影が入ってね。
顔を上げると真っ黒な何かがニヤリと笑った気がしたんだ。そうしたら、「 」が言った。
「今日は、お前にしよう」
(大きなため息を吐いて)
……。
あれから四十年くらい経つけど、ボクの体はずっとあの頃のまま。
(自嘲して)
……大っ嫌いなあの頃のままなんだ。
まあ、これが。
ボクに呪いを掛けた、人になりきれない可哀想で愚かな魔女の話。
さて、人生のほんの僅かな時間を捧げてくれてありがとう。ボクはこの辺で失礼するよ。
どこかで会えたら声掛けて。それじゃあね。
STORY END.