男女兼用【冬の底】
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春を待つ誰か
[あらすじ]《２分半程度》
痺れるような痛みは寒さだと知った。刺すような寒さは痛みだと知った。服の袖に手を隠して、そっと白い息を吐けば、それは冬の色に染まっていた――。
【春を待つ誰か】
春はすごく暖かいんだって、誰かが言ってたよ。
空気も、動物も、植物も。だから喜ぶんだって、キミが…言ったんだっけ？
いいなあ。
心臓さ、春まで持ちそうにないんだって。何だかすごく納得しちゃったんだ。
だって、今まで何とも感じなかった寒いだけだった冬がさ、“痛い”んだ。
空気を吸う度に、上を見上げる度に、朝起きる度に、痛くて痛くて。死んじゃいそうなんだ。
……………。
（俯いて涙を堪えて）
……いいなぁ……っ、
当たり前みたいに、春を受け入れられる人達は…どうやって呼吸をしているの…？
当然みたいに、春を見上げる人達は…どんな風に歩いているの…？
……あーあ。
………ズルいなぁ………。
ボク、取り残されちゃうんだなぁ…。
ボク、春の朝を迎えられないんだなぁ…。
……。
（ヤケクソで叫ぶ）
あーあっ！ やだやだ、こんな辛気臭い自分も嫌になる！
もっと楽観的にいかないとさ！ ………はあ〜あ………。
…。ねえ、キミはさ。
心臓、どうにか出来たりする？ …夢を見過ぎだって？ いやいや、キミと話せてる時点でとっくに夢なんだけど。
まあ、人間が“人間の形をした人間じゃないナニカ”に期待を寄せるのはアニメや漫画の見過ぎって話なら納得だけど。
…でも、夢は見過ぎなくらいが丁度良いんだよ。
それを叶える力量が自分に無かったとしても、そんな風に考え出せた自分、天才！ ってなるじゃない。
…他の人はそうはならない？ 夢と現実の差に愕然とする？ …ふーん、割り切れない人達が多いんだね。
…で、話を戻すけど。
冬に取り残されちゃうボクを可哀想だと思うなら、“ものすごく凄いチカラ”でボクのボロボロの心臓をどうにか出来たりしないかな？
…。
やっぱ駄目か〜…。
神様名乗ってるんだし、余裕かと思ったのに。
………ま、でもそうか。キミは神様は神様でも、“死神”だもんね。
…はいはい、検査の時間まで大人しくしてますよ〜…。
STORY END.
