男性用【語り部亀八郎〜茂木編〜】
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亀八郎
[あらすじ]《4分半程度》
語り部の亀八郎は親も兄弟も居ない。毎日食っていく為に預けられた親類の家を飛び出し、自身の経験や又聞きした御伽噺を語りながら生を繋いでいた―――。
【亀八郎】
さぁ、寄ってらっしゃい聴いてらっしゃい! 平凡な日常にちょいと語り部の華ァ、咲かせやせんか?
なァに、お時間は取らせやせん。何ならちょっとばかしお耳を貸して頂けやしませんかね。…聴いて後悔させるような欠伸が出る話は生まれて此方した事もありやせん!
どうか安心して聞いてやってくださいな。……っと、そうだ。あっしの名前は亀八郎。亀が八匹、亀八郎と覚えて帰ってほしいですが、次にどこで会うかはお客さん次第でやすね。
そうだ、今日は亀八郎の一番弟子。茂木という男について語りやしょうかね。
さあさあ、皆さん。この茂木という男。容姿端麗、眉目秀麗、付け加えて頭脳明晰と並ぶ…まぁ、有り体に言えば『よく出来た男』なんです。
街を歩けば年頃の娘達に囲まれ、年頃の青年達に妬まれやした。
いやぁ、あっしも苦労したんです。目を離すと人だかりの中心に居やすし、色恋沙汰に勝手に巻き込まれちまってたりもするんです。
えーっ……と、どこまで話しやしたかね。あ、そうそう。この茂木という一番弟子は、元々は良家の愛息子でやした。あっしとは違って、両親からの愛をふんだんに注がれて育ちやした。
そんな茂木の家に弟が生まれやした。可愛らしい赤ん坊だったと茂木はよく修行時代、語ってやしたねぇ。
もう一度会いたいとあっしの耳にタコが出来るくらい言ってやして…当時のあっしは茂木の口から『弟』という単語が出る度に耳を塞いでやしたね、ははっ。いやあ、懐かしい。
随分と疑問だったかもしれやせんが、良家出身の長男が何故語り部という不安定な職についているのか。
茂木の人生に転機が訪れたのは弟が生まれ、少しした後の事でやした。
茂木の両親は誕生した弟に茂木と変わらぬ愛を注ぎやした。茂木もそれなりに弟を愛していたし、傍から見れば『幸せそうな家族』だったのだろうと茂木は言ってやした。
だけれどそんな幸せの中にも、不幸というのは疼いてるものなんですねぇ。
ある日、茂木は仕事場へ出掛けた父親へ忘れ物を届けに家を出やした。母親は弟の世話で忙しかったようですから、まだ幼いながらもそれを理解していた茂木は一人で父親の元へ向かったんです。しかし……。
(間を空けて)
忘れ物を届けて褒めてもらおうと思った幼き茂木の目に入ったのは、見知らぬ女に腕を組まれ花街に消える父親の姿でした。
茂木はそこがどういう所かよく知ってやした。だからこそ茂木は忘れ物を握り締めて踵を返しやした。
走って、走って……。
家に着いた時には汗だくでした。
母親は驚いて茂木に聞きやした。茂木はその時の事を、今でも誤魔化せば良かったと後悔してやす。
それからすぐに茂木の両親は離婚しやした。茂木は父親に、弟は母親にそれぞれ引き取られやした。
茂木は自分が離婚の原因だと父親に責められやした。勿論離婚の原因は父親の浮気です。
豹変した父親と上手く行くはずも無く、茂木は年頃の青年になると同時に家を飛び出しやした。
そうして途方に暮れた先で語りをしていたあっしに泣きついてきた、という訳です。
修行期間を終えて既に独り立ちしているんですが…。まぁどこかで『語り部の茂木』を見つけましたら、宜しくしてやって下さいな。
という訳で今日はこの辺で失礼致しやす。またどこかで!
STORY END.