男性用【ノイズが鳴く】
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画面に映る男
[あらすじ]《3分半程度》
一通のビデオレターが送られてきた。再生した、時折ノイズが入る画面には八年前から行方不明の親友が映し出されていた―――。
【画面に映る男】
今回で、800回目だ。
こんな膨大な数を律儀に数えるなんて、オレはお前の言う通り真面目だったんだな。
…気はもう狂ってるさ。大体18回目くらいだったか。自分の首を掻き切ろうとしたんだがな。どうも度胸が足りなくて、痛いだけだったよ。
でもな、「昨日」に戻ったら首の痕も綺麗さっぱり消えていて。
何だかその頃になると、妙に落ち着いてきてな。
「昨日」のお前との会話を少しだけ楽しむようになったんだ。
確かあれは、421回目だったか、422回目だったか。だいぶ記憶も曖昧だな…、時間が無い証か。急がなければ。
…ああ、そうだ。422回目の「昨日」のお前はいつもと違ったんだよな。その時のお前はオレを見て信じられないという顔をしたんだ。
そうしてお前は言ったな。
「どうして耐えられるんだ」って。
…信じたくなかったよ。だってそんな事を言うって事は、オレがこうやってずっと「昨日」を繰り返しているのは、お前のせいって事になる。お前が仕組んだのか、間接的にお前が関わっているのかは知れないが、…そういう事だろう?
だから信じたくなくて、それから何百回も「昨日」を過ごしたよ。でも、422回目のお前は二度と現れなかった。
……、そして今回で800回目だ。
次の「昨日」のお前に会う前にオレはこの世界を終わらせるよ。
何でかって?
今回の「昨日」のお前は、死ななかったんだ。初めて、笑って手を振れたよ。
だから、その記憶で終わりたいんだ。
何度、お前が死んだろう。
何度、お前を殺したろう。
幾度もお前が現れて。
幾度も「昨日」を繰り返した。
…………。
次の「昨日」で終わったオレが、どうなってしまうのか分からないが、例え元の世界に戻れたとして。
お前に会いたいとは思わないさ。
お前に会ってしまったら、お前を殺してしまいそうだからな。
いやな、お前を嫌いになったとかそういう事ではないのさ。この頭のおかしい「昨日」の繰り返しにお前が関わっているのだとしても、復讐してやりたいとかそういうのではないのさ。
ただな、ここでは普通だったんだ。
お前が死ぬ事が。お前を殺す事が。
だからその普通に狂ってしまえた自分がお前に会ってしまったら。
……………。
…なあ。親友。
お前が何を思ってこんな事をオレにしたのか…すまないが、心当たりがないのだ。だから、考えない事にする。信じない事にする。
オレはずっと、お前の事を親友と思う事にする。…さよならだ、親友。……お前は、最高の友だ………。
STORY END.