男性用【目先の手紙に】
台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。
『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。
※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。
♂1:♀0:不問0
手紙の主
[あらすじ]《1分半程度》
手紙が届いた。一年前の手紙だった。少しだけ色褪せたそれが破け落ちないよう、慎重に開く。敵兵が気まぐれに落とした爆弾の餌食になった故郷からの手紙だった―――。
【手紙の主】
あれから何年経ったろうか。
もう寒くはないだろうか。
随分経ったよ、本当に。こちらかい? 楽しい事もあったよ。悲しい事も勿論あったさ。だけれど、君との日々に比べれば殆ど些細な事だったよ。
そういえばね、あそこのカレー屋さん。覚えているかい? 君がカツカレーを頼んだけど食べきれなくて泣いていた時の。
だいぶね、繁盛してたんだけど。店主が癌で倒れちゃってからは侘しくなったのさ。
またおいでよ、って女将さんは言っていたけれど…帰ってこれそうかい? 前は、随分と前は忙しいって言ってたけど。あれから手紙も何にも送ってくれないだろう?
みんな心配してるんだよ。
君は内勤だけれど、危ない所で働いてるからケガでもしてるんじゃないだろうかとか。色々ね、ほら。年寄りは心配性だからさ。
そうだ、次の休みは帰っておいでよ。
君の好きなぜんざいでも作って待ってるから。
……だからさ。
そんな寂しいところで一人眠っていないで帰っておいでよ。寒いだろうよ。
不思議だな。
僕はこうやって手紙を書いてるんだから、声の届かない場所に、遠い場所に君が居るってのは分かってるんだけどさ。
君の事を考えて手紙を書いているからかな。君がまるで目と鼻の先に居るような、そんな気分になってくるんだ。
……どうか。
帰っておいでよ。
もう一度、君を抱き締めたいからさ。
STORY END.