男性用【語り部亀八郎〜海涙編〜】
台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。
『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。
※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。
♂1︰♀0︰不問0
亀八郎
[あらすじ]《4分半程度》
語り部の亀八郎は親も兄弟も居ない。毎日食っていく為に預けられた親類の家を飛び出し、自身の経験や又聞きした御伽噺を語りながら生を繋いでいた―――。
【亀八郎】
さあて! そろそろ始めやしょうか!
あっしは語り部。語り部の亀八郎。おやっ、聞いた事ありやすか! 有難い限りでやすねぇ!
語り部なんぞ自らが食い繋ぐ術でしかなかった訳でやすけど…、続けてみるもんですね。
語り部を? 辞めようだなんてそんな。
誰でやすか、そんな下らない噂を流したバカは。…まあ大抵の予想は付きやすが。
まあ! そんな与太話は置いておいてささっと始めやしょう。
この地方はどこを歩いても海がよぉく見えやすからね。今日は海から生まれる“海涙”という、鮮やかな蒼い宝石について語りやしょう。
事はとある王家に生まれた愛らしい御姫様の不可思議なチカラから始まりやす。
その姫の名はツユカ。もう遠い昔に「アズマ」の歴史から消えた王族の名です。
ツユカ姫は自分の涙を宝石に変えるチカラを持っていやした。だけれど、まだ幼かったツユカ姫にはそのチカラが何なのか、見当もつきやせん。
しかし、感情が昂り涙する自分に、両親である王や王妃、親類が大喜びする様を見て…少し、不気味に思いやした。
だからこそツユカ姫は成長すると共に、感情を表に出す事を辞めたんです。
何でって? 自分の涙に喜ぶ者は居ても、自分の心の痛みに寄り添う者は居なかったからでやすよ。
だけれど、そんなツユカ姫を更に追い詰める声もありやした。
“お前の涙は人々を幸せにする、その義務を果たさぬのは怠慢だ”と。
そう言って彼女を責め立てる者の中には、彼女の両親さえも居たとか。
ツユカ姫は下らない大人の下らない欲望に振り回されて疲れ果てやした。
どこか、誰も居ない所でゆっくり眠りたい。
そんな折でした。
ツユカ姫の住む国で暴動が起こりやした。彼女の両親、王と王妃は馬鹿なりにも悩んで、悩んで。悩み疲れた先で“妙案”を囁かれやす。
“暴動が起きたのは人々が幸せではないからだ。
人々が幸せだったあの頃は一体いつだったか。
ああ、そうか。
ツユカが、あの娘が。
あの涙を宝石に変えていた時だ。
だから、この暴動はあの娘のせいだ”
今となっては誰がそんな浅はかで稚拙な事を言ったかなんて分かりやせんが、王や王妃、王族関係者はそれに便乗しました。
そうして彼女へ“泣いてくれ”と頼みに行った両親は唖然としやす。
“涙を宝石に変える娘”の姿が、どこにもない。
両親や親類は必死になって探しやした。
ベッドの下や、鏡台の裏、小物入れの中まで。
だけれど、“不幸の原因”は何処にも居やしない。
両親や親類がガックリと肩を落とす中、彼らに踏み付けられたメッセージカードが一つ。
―――“もう、泣きたくないの”
(一呼吸置いて)
………その翌年。
度重なる暴動と、彼らが引き起こした内戦によって国は落ち、短い歴史に幕を下ろしやした。
それから数年。
かつての城があった場所から南へ少し行った綺麗な海から、宝石が採れるようになりやした。
その宝石こそ、後に海涙と呼ばれる事となる、鮮やかな蒼い宝石です。
……とまぁ、これが悲しき姫の御伽噺ってところでやすかね。
ちなみにこれがその海涙でやすよ。昔は希少だったみたいでやすけど、今は旅のお守りとしてよく使われてやす。
石言葉は…何てったか…。嗚呼、『泣かないで』。
それじゃあそろそろ終わりやしょう。
語り部亀八郎、今日はこの辺で失礼致しやす! またどこかで!
STORY END.
23/3/22 大幅改変により再投稿




