*男性用【語り部六嘉〜黒焼き編〜】
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六嘉
[あらすじ]《4分程度》
“元男娼”。そう言って語り始めた語り部の名は六嘉。もう引退したのだと笑う彼は妙に色気のあるその形で老若男女を魅了する―――。
【六嘉】
は〜、暑っついわねぇ。どうなってんのよ、この地方の温度。アテシったら思わず脱ぎそうになっちゃったわよ。
あら、失礼。じゃあそろそろ始めようかしら。準備はオーケー?
アテシは語り部。語り部の六嘉よ。知らない? あ〜ら、じゃあこの際だから聞いてきなさいよ! 損なんてさせないからっ。
アテシ、語り部やる前は男娼だったんだけどねぇ。売られたのかって? 違うわよ、アテシがやりたくてやってたの。
闇が深めの職業だから、まあ薄暗い事もよく見たし、何なら被害者だった事も加害者だった事もあるわね。
あっはは〜! よく生きてたもんよ、ホント!
そうね、じゃあ今日は界隈外でも代表的な惚れ薬「イモリの黒焼き」について話そうかしら。
アンタ達の時間、ちょっとアテシにちょーだいなっ。
アテシの元お客でね、安達っていう金持ちの男が居たの。もう歳だからって自分はアテシの相手はしなかったけど、若い男を連れてきてはアテシと男が絡むのを見る、物好きな老耄だったわ。
話はそいつじゃなくて、そいつがその日、連れてきた明らか生息子な男の方なの。会話も吃るし、見合いかって話題の振り方しかしないし、いざ本番ってなったら着物の脱がせ方もぎこちないし。
お生憎にも名前なんてとんと忘れちゃったのよね。でもよぉく覚えてる。
触り方もへったくそな子だったけど、安達が厠へと席を外した途端に目の色が変わったの。
恐怖? 無かったわ、そんなの。
経験もない若造一人が興奮しきったところでアテシも男だもの。細っこい受けしかやらない子達とも違うしね。
ただ、…そうねえ。
そいつが取り出したものには驚いたわ。
そう、黒い粉。
一目見て分かったわ、「イモリの黒焼き」だって。
惚れ薬だとか振りかけた相手が自分を好きになるだとか色々言われてるけどね、結局は迷信よ、あんなの。
何の根拠も無し、アテシも何度か使われた事はあるけれど顔や身体が汚れただけで相手の事なんて微塵も気にならなかったわ。
まあ、生息子な男がどうやってそんな高価なものを手に入れたかの答えなんて、…とっても最悪なタイミングで席を外した耄碌なジジイしか無いんだけれどね。
その後どうなったかって? やぁねえ、せっかちさん。話してあげるから待ちなさいよ。
生息子がそんな高価なものをおバカにも持ってきたんだからアテシも御もて成ししなきゃじゃない?
だからちょっ〜〜とだけ気のあるフリをしてあげたら…
…はぁぁあ…鼻血吹き出してぶっ倒れちゃったわよ。
気が抜けるってこういう事を言うのね〜…。仕方ないから若い衆を呼んで外へ放り出してもらったわよ。
まあ、それが使い方も曖昧な 「イモリの黒焼き」を持ってきたおバカさんの末路かしら。
アテシ、そこの陰間茶屋では結構有名な男娼だったから、そこから追い出されたっていうのは安達にとっても素敵なレッテルだったんでしょうね。
え? そんな太客逃がしていいのかって? いいわよ、別に。安達じゃなくってもイイ男なら沢山居たもの。
何なら今だって、アテシが語り部になったなんて風の噂をコロッと信じて、金を貢ぎに来る馬鹿も居るんだから。
あら、そろそろ時間? じゃあ仕方ないわね。お開きにしようかしら。
アンタ達の時間、有意義に使わせてもらったわ。お礼は恵みに変えてちょうだい。アテシの為を思うならね。
それじゃあ、また会いましょう。
今度はもっとアテシが輝ける場所で。
STORY END.