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落ちる

作者: 甚八

ふと、目に付いた空が綺麗で、足を止めてぼんやりと眺める。

ひやり、として足がすくむ。思わず目を逸らす。空に、落ちるのでは無いかと。

吸い込まれそうな、とは良くある表現だけれど僕にはその感覚はわからない。

吸い込まれそうな青空、なんて良く耳にする。

吸い込む、なんて言うと僕はどうしても掃除機をイメージしてしまう。周りの空気と一緒に絡め取る様な、そう言うイメージ。

僕は空を見上げると落ちそうになる。

本当に、高い所から落っこちそうになる、あの感覚と同じなのだ。

ひやり、として全身の毛が立つ様な生きた心地のしない感覚。

高い高い空のずっと遠くへ落っこちていきそうで、思わず近くの物にしがみつく、足にぎゅっと力が入って地面を踏みしめる。

小さな頃友達と外で走り回って遊ぶ。

その合間合間に、何気無く空を見る。落ちてしまう様な恐ろしい気分になる。

僕は地に足を付けて。それ以上落ちる所も無いだろうに、地面を強く踏みしめる。

もう頼れる物はこの大地しか無いのだと悟る。この足が地面を離れてしまえば、もうどこまでも際限無く落ちていくのでは無いか。

空に落ちるとどうなるのだろう。

幼心に言い知れぬ恐怖を感じた事もあった。

思えばこの地球は、宇宙の、ぽっかりとした何も無いその空間にただ浮かんでいるのだ。

浮かぶ、というのも正しくは無いのかも知れない。

何も無い空間にただ、ある。

そこがどこかも定かで無く、ただただ、ある。

地に足を付けて生きた心地を味わっても、その地が揺蕩っている。

その理解し難い様な事実に対する根源的な恐怖では無いか、とすら思う。

考えて欲しい。

宇宙服一つで真っ暗な宇宙を漂う恐怖、不安、孤独。

宇宙服を宇宙船に置き換えてもその恐怖や不安や孤独は全て消えはしないだろう。

更に大きな物に置き換えていけばどうだろうか。

最後に地球に置き換えてた時、恐怖や不安や孤独は何処かに飛んで、消えてしまっているだろうか。

僕は怖い。不安で孤独で、おかしくなりそうだ。

生まれて、老いて、死ぬ。自分の人生は自分一人だけ。誰かと深く関わっても、心も体も本当には分かち合うことは出来ない。


見知らぬ山の中で一人ぽっち。帰る道も分からず。泣いても誰も答えない。その恐怖。

何処に居ても、誰と居ても。本当はいつも天も地も無く、暗い場所で一人居る。

空へ落ちて、何処までも何処までも。踏みしめる大地すら無く。ただ一人。

何を言っても語り過ぎず。また語り足らないということもない。

そういう人になりたい。

今はまだ遥か対極に居る。

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[良い点] 全身の毛 [一言] 恐怖の宇宙服一つで
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