一章 崩壊とチート 1話 日常
主人公、唯竺悠人の一人称です
夢の世界から僕らを現実世界へと引き戻す、聞き慣れたチャイムの音、続く椅子を引く音。
眠い目を擦りながら、今日もまた、平和な1日を送っている。
「おはよー、ハル。今日はお日柄もよく、さぞかしよく眠れたことでしょうね」
僕の前の席に座ってる、親友の一人―巡迪 碧が話しかけて来た。いつものことだ。
「おはよ、碧。そうだね、子守唄もいつも通り流れてたし、朝の目覚めもスッキリだよ。」
「今は朝じゃねぇぞ、悠人。てか碧もその言い方なんかキモい」
「そうか、テツは冗談もわからない悲しい男だったんだな、おいハル、行こうぜ」
「おいちょ待
「そだね、行こうか、碧。」
「おい待て悠人、それは納得がいかない。」
「そんなんだから冗談もわかんないって言われてるんだよ?哲平。」
「わかってたさ、わかってたけどツッコミの血が騒いだんだ。」
『厨二......』
「やめろ」
今話しかけたのは僕のもう一人の親友―奈緒 哲平だ。
キャラの濃い僕の交友関係の中で、もっともキャラが薄いという理由から、"普通"と呼ばれてしまっている、我らがツッコミ役だ。
「さて、そろそろ帰る―――おっと?唯竺くん?我らの目の前におわしますは悠人君のお嫁さんである深幹瑞樹さんじゃないですか?」
「嫁じゃないし人の傷口に塩を塗りたくる仕打ちはやめ
『だが断る』
「:(;゛゜'ω゜'):」
嫁、傷口の二単語でわかる人もいるかもしれないが、僕はつい先日この深幹瑞樹さんにフラれている。
それをこいつらは知った上でからかっているのだ。それがかれこれもう二週間前のことだ。
先の"つい先日"発言と矛盾してるのはわかってるんです。
だけど......泣くよ?そろそろ。
「悠人。顔。やばい、よ?」
「ハッ」
「お、コマさん。今帰り?」
「玄関、で待ってた、けど、いつまでたっても、みんな来ない、から。」
「わりわり、こいつがどうしても深幹の顔見たいって駄々こねてよ?」
「流れるように責任転嫁するなバカ碧」
「バカはひどくね?!」
「否定、でき、ない……」
「おいちょっと待てコマさんそこは嘘でもいいから否定してくれ。」
今会話に入って来たのはこれもまた親友である狛鈴 和だ。僕と哲平はコマ、と呼んでいる。
この3人とは中一〜中三の3年間同じクラスだった。
哲平と碧は今も同じクラスだが、コマは今年になって別々のクラスになってしまったが、帰るときは今でも一緒だ。
ちなみに、深幹さんも同じ中学出身で、僕は中二のときからずっと片想いをしていた。
「さて、今日はどっか寄る?」
「あぁ、わりぃ、今日朝から頭いてぇから俺パスで」
「そっか、他は?」
「カラオケじゃね?」
「じゃそれでいい?コマ」
「(コクリ)」
「じゃ、いってら」
「ん、また明日〜」
「おう、また明日な」
いつも通りの日常、無くなることなんてないと思ってた、"平和"。
それがこんなにも貴重なものだなんて、
――――このときは知らなかった。
プロット組んでみて、ダブル主人公を謳っておきながらもう一人の主人公視点になるのが遠い...