一章 遊び部
「人狼」、それは満月の夜に人間を食べた狼が月光の魔力でその人物になりすまし家族や友人をよるゴト一人ずつ餌食にしていく恐ろしい存在。人々はどんどん狼に食われていきそれに対抗すべく能力を持った人が現れた。預言者、狩人、霊媒師。彼らは全力を尽くし狼に立ち向かう。しかし狼は騙すのがうまくついには村は全滅へと追い込まれた。狼はそれでも満足せず次なる村へと旅立っていった。
一章遊び部
何も起こらない平和な日常。高校へ入れば何かが変わると思っていた。中学時代特に何もしたいで適当に過ごしていたらいつの間にか終わっていた。高校ではやりたいことを見つけて頑張ろうと思っていた。ところが結局グダグダした生活を送り部活にも入らず怠惰な生活を続けていた。
「なんか起こんないかな」
急に背中をドンと叩かれ「ふぇ」とかいう変な声を出していた。
「物騒なこと言うんじゃねぇよ!京治!平和が一番だろ」
こいつは中学時代同じクラスだった宮崎陽太。乱暴ですぐ手が出るしうるさいけど結構優しいやつだ。
「陽太、暇って一番辛いんだぜ」
「じゃあ忙しくしてやるよ!」
そう言うと陽太は僕の前に紙の束をどさっとおいた。
「宿題は自分でやれい」
陽太は「チェ」と残念そうな顔をするとすぐに諦め紙の束をカバンにしまった。
「それより部活まだ入っていないんでしょ?」
そう、僕は何の部活にも入れていない。運動部に入るほど根性ないと思うし文化部にはめぼしい物がなかったのだ。
「実は俺も部活入ってないんだけどさ、小さい頃からの夢があるんだ」
「お前もかい!って夢?」
「そう。自分で部活を作って見たいんだ」
バカバカしいことを言っているのに真面目な顔をしている。調子が狂う。
「作りたいって、何で?」
「京治くん。そんなの男のロマンだろ」
「ロマンって」
「アニメとかでよくあるじゃん。なんか青春って感じでいいじゃん」
それには同意する。しかしそう簡単に創部などできないことを僕は知っている。
「そもそも何部作るの?」
「決めてない!」
僕はため息をつくと学ランを羽織った。
「帰ろうぜ!」
陽太は頷き一緒に下校することになった。
「それじゃーね」
分かれ道で陽太と別れた僕は一人暮らしをしているマンションへ向かった。
「ただいま」
「おかえり!京治♡」
玄関にはワンピースにエプロン姿、長い黒髪を後ろで一つにまとめているポニーテールの女の子が立っていた。
「愛美!?何でうちに?」
「私京治と同じ学校に入りたくて!こっちに転向しにきました」
「いやいや、そんな理由で」
「私にとっては重要なことよ」
急に真面目な表情になった彼女に僕は何も言い返せなかった。
「まぁそう言うことでこの部屋住ましてね」
しばらく彼女の言っている意味がわからなくてぽかんと突っ立っていたが意味を理解した瞬間に僕は大声をあげた。
「おま、言ってる意味わかってるのか?」
「うん!同棲?」
「ウオォおおおおぉおおおぉおおぉぉぉ」
僕は急いで愛美の家に電話をかけた。
「もしもし愛美のお母さんですか」
「あら京治くん!久しぶり」
「おたくの娘さんがうちにいるんですが?」
「あぁ愛美ちゃんが京治くんと同じ学校行きたいって言い出したからじゃあ同棲しちゃえばって提案したのよ」
愛美が僕の方をポンと叩き電話をしていない方の耳に囁いた。
「親公認よ」
こうして僕と愛美の同棲生活が始まった。
次の日学校に着くとクラスの男子がみんな僕を睨んでいた。
「村雨京治!一発殴らせろ」
そう言うと溝うちに軽く一発パンチを入れてきた。
「よ!村雨」
背中を思いっきり一発叩かれる。
「いてぇな!お前らなんだよ」
「何だよじゃねーよ!誰だその美少女」
僕の横にいる美少女、愛美に注目が集まっていた。
「あぁこいつは僕の幼馴染というか昔馴染みというか」
僕が喋っている途中にどーんと全身を使い背中から愛美が抱きついてきた。
「妻です」
愛美の発言にその場の空気が凍りついた。次の瞬間、僕はボコボコにされていた。
「それでは、転校生を紹介する」
「朝霞愛美です。仲良くしてくれると嬉しいです」
彼女は僕の幼馴染、というか同小の元クラスメイトで中学は少し遠くの女子高へ通っていたという。中学時代愛美と遊びに行った時告白され「兄妹のように思っていて恋愛対象にはできない」と断ると次の日から猛アピールしてくるようになった。正直愛美は僕には勿体無いほど可愛い子だ。多分好きだと思う。だからこそ愛美には幸せになって欲しい。汚れきっている僕となどくっつかない方がいい。だから僕は彼女と距離を取るために東京で一人暮らしをしようとしていたのだ。だけど愛美はきてしまった。
「同じクラスになれて嬉しい!」
愛美は笑顔で僕にそう言った。僕もにこりと表情で返事をした。
昼休みになると陽太が僕の席にきた。
「昼食おうぜ」
「私も混ぜて!」
僕と陽太の横に愛美が立っていた。
「よし!じゃあ三人で食うか」
「ところでさ陽太、部活どうするの?」
「いいことを聞くではないか!京治、実はもう書類用意しているのさ」
そういうと陽太は四つ折りにされている紙をポケットから取り出した。
「三人だと部活にするのは無理だけど同好会なら認められるらしい」
「ちょっと待て、勝手に愛美を含めるな!愛美は運動とかすごいしちゃんとした部活入った方がいいと思う」
愛美は少し照れながら僕の袖を引っ張った。
「そんな褒めないで恥ずかしいよ。でも私は京治と一緒の部活入りたいから人数含めちゃって大丈夫だよ。えっと陽太くん?」
「おう!それじゃまずは部室見つけないとな!」
僕らは部室を探すため教員室へ行くことにした。
「せんせ!」
部室を貸して欲しいと担任に伝えると先生は「何の部を作るの?」と聞いてきた。陽太が「これから決める」と言おうとしていたのがわかったので僕はとっさに「遊び部」と発言していた。遊び部といえば日本の伝統文化をどうたらこうたらいえば認めてくれる気がした。しかしその考えは甘かった。
「えっとね、三人で同好会ってのはいいんだけど今空いてる教室とかなくてね。それに・・・」
僕は大きなミスを犯していたのだ。
「遊び部って部活、もうあるのよね」
みんな黙り込んだ。僕は恥ずかしさでみんなの顔が見れずうつむいて顔を隠した。
「でもそこを使うことをある条件で認めてあげる」
急にそんなことを言われるとなんかとんでもない理由があるのだと嫌な予感がした。
「今の遊び部は不良たちの溜まり場みたいなものになっちゃってるのよ」
理解した。彼らを更生したらとかいう条件だろう。そんな面倒引き受けるわけ・・・。
「やってやろうじゃん!」
「うん!」
めっちゃやる気だった陽太と愛美に僕は賛同せざるを得なかった。
遊び部の部室は旧校舎の端っこのジメジメしている、幽霊の出そうな場所にあった。気味の悪い場所で好んでくる人はあまりいないだろう。
「ごめんください」
ドアを開けると中には金髪にピアスのみるからにグレている男、さらしを巻いて特攻服を羽織っている黒い長髪の女、制服姿だがマスクをして木刀を握りしめてる赤くそめられた短髪の女。肩幅がすごく柔道部みたいな分厚い胸板をしているでかい男。この四人が部室でわいわいやっていた。
「お前らもセンコーの刺客か?」
先生に言われて来たわけだし刺客っちゃ刺客なんだろうがそんなこと怖くて言えるわけがない。
「嫌だなぁ、君たちと仲良くしたくてさ」
偽善ぶる僕に金髪ピアスの男が立ち上がって怒鳴った。
「もうそういうのはうんざりなんだよ!どうせお前らも俺らを否定しに来たんだろ。更生とか何とか言って!」
図星をつかれた。僕はふと二人を見た。恐怖からか固まっている。僕が何とかしなくては。
「お前らが不良やってるのを否定する気はないよ。どうでもいいし」
「喧嘩売ってんのか?」
「でもな、しっかりと部活をやってない連中にこの部室を使う資格はない!」
正論を言ってやった。僕らは活動しようとしている。活動してない奴らよりも使う価値はあるだろう。ってあれ?僕らもただたむろしようとしていただけじゃないか?
「ごめん、今言ったことはなし。僕らも君たちと同じ理由でここを使いたいんだ」
「同じ理由?俺らはな、学校から、信用していたセンコーに裏切られたんだよ!居場所を失った俺らはここにあった遊び部を乗っ取ってここを拠点にセンコーに復習すべくしっかり活動してんの」
「おい龍!そんな敵の刺客にペラペラと情報を喋んなよ」
後ろにいた特攻服の女が会話に入って来た。
「おい、私らはここからは動かないぞ、喧嘩するなら受けて立つ!」
喧嘩なんてまっぴらごめんだ。痛いのは嫌いだし。でも退屈な日常が終わってくれる気がして少しワクワクしていた。
「そういう事情ならわかった。僕らを仲間にしてくれ。先生への復讐?手伝うよ」
僕の発言に不良四人はぽかんとした表情でしばらく固まっていた。
「い、言ってる意味わかってるのか?お前らも不良とみなされるぞ」
「いいさ。僕は退屈な日々がそれで終わってくれるなら」
陽太は僕の発言に驚きの表情を表していたが特に否定や拒否はしなかった。愛美は僕についていくと言って遊び部に一緒に入ってくれると言ってくれた。
創部しようと思っていたら変な部活に入ることになっていた。陽太ごめん。お前の創部するっていう男のロマン、ぶち壊してしまった。
手を合わせ陽太の方をみ「ごめん」と目配せすると陽太はそんなに嫌そうな態度は取らずにこりと笑っていた。
さてここからが僕の作戦なのだ。とりあえずこの活動していない部活(同好会?)に入って活動をしっかりやらせて内部から乗っ取るのだ!
「せっかくの遊び部なんだしなんかゲームしないか?」
僕の発言に不良四人は自分たちは関係ない風に無視して来た。
「みんなでやれるゲームないかな?」
愛美が発言した。さらっと不良四人組を遊びに誘うナイスプレイだ。
「そうだ!人狼ゲームとかどうだ?」
陽太が発案した。これはすごくいい案だと思う。人狼ゲームは大人数で行うパーティーゲームだ。きっとみんなの仲も良くなるだろう。
「いいね!やろうぜ!」
「は?俺らはやらねぇぞ」
金髪ピアスの龍とかいう男が威圧して来た。僕を凝視する彼の目はゾッとする恐怖を僕に味あわせた。
「やってくれたら無条件で貴方達のいうこと何でも一つ聞いたる」
僕がそういうと龍だけでなく残りの不良たちも全員にやりと笑いみんなやる気を出してくれた。
「さぁ、人狼ゲームを始めましょうか」