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5 オリヴィエとのひととき、リーガルとの会談

「お前の働きは重要だ、オリヴィエ。これからも第六軍をまとめ、魔界を守る力に──その癒し手として存分に働いてほしい」

「あ、ありがとうございますっ」


 オリヴィエの狐耳としっぽが、ぴょこん、と跳ねた。


「えへへへ……」

「ん?」

「えへへへへへへ……」


 なんだ、顔が異様なほどにやけてるぞ?


「普段から褒められ慣れてないので……」


 にやけた顔のまま、オリヴィエが言った。


「照れてしまいます~」

「褒められ慣れてない? だが、お前の治癒能力は魔族の中でも群を抜いているだろう。十分に賞賛されるべき力だ」

「私、もともと魔力の発動が不安定で……一族でもあまり重用されてこなかったんです。無能扱いされることも珍しくなくて」

「発動が不安定……か」


 そういえば、こいつは妄想で気持ちが高ぶったときだけ魔力が極端に跳ね上がるそうだからな。

 安定して力を発揮することはできないわけだ。


「これだけの魔力を持っているのに無能扱いはひどいな」

「い、いえ、こんなふうに比較的安定して治癒魔法を発動できるようになったのは、最近なんです」


 と、オリヴィエ。


「たぶん、憧れのステラお姉さまやフェリア様、リリム様たちと接する機会が増えたおかげです。百合カップリング妄想できるシチュエーションがあちこちにあるので、妄想百倍、魔力千倍、って感じです!」


 今一つピンとこないが『萌え』の力とやらだろうか。


「理由はどうあれ、お前の働きは大きい。感謝している。俺だけでなく、お前の力で癒され、救われた魔族全員が」

「私が……救った?」

「お前は大勢の魔族を救ってくれた。そして、これからも──その力で魔族(なかま)たちを守ってほしい。期待しているからな」


 俺はオリヴィエの肩に手を置いた。


「期待……魔王様が、私に期待……はふふぅ……」


 オリヴィエは顔を赤らめ、両手で頬を覆う。


「どうかしたか、オリヴィエ?」

「お、おかしいんです……可愛い女の子を相手にしているみたいに、胸がどきどきして」


 ぴょこんっ、とひときわ激しく尻尾が揺れた。

 気持ちが高ぶっている証だろうか。


「これはもしや、新たな萌えが芽生えたのかも……!」


 オリヴィエが目をキラキラさせて俺を見上げた。


「萌え……?」

「私、今までは可愛い女の子にしか萌えたことがなかったんです。魔軍長だと、ステラお姉さまとかフェリア様とか。あと、お姉さまとかお姉さまとかお姉さまとか。さらにお姉さまにも萌えたりしますね」

「ほぼステラだな、それ」

「だけど今、魔王様を前にして胸がときめきました。男性を相手にも萌えることができるみたいです、私。新たな属性が開発されてしまったようですねっ」


 ぐっと拳を握りしめて叫ぶオリヴィエ。

 同時に、彼女の全身から魔力のオーラが立ち上った。


 あいかわらず、すさまじい魔力量だ。


「ふふふふ、萌えを補給すれば、私の力は無尽蔵に湧いてきますよっ」


 オリヴィエが元気よく叫ぶ。


「というわけで、また治癒に戻ります!」

「ああ、よろしく頼む」


 俺はオリヴィエに言った。


「ただ、無理はしないようにな。さっきも言ったようにお前の働きは重要だ。これからも力になってほしい」

「わっかりました! 不詳オリヴィエ・キール、無理せずほどほどに、全力でがんばってきまーすっ!」


 言うなり、オリヴィエは走り去っていった。




 救護所を出た俺は、続いてリーガルの元を訪れた。


「リーガル、傷の具合はどうだ?」


 先の戦いで、リーガルは四天聖剣と戦い、全身を砕かれてしまった。

 オリヴィエの力で完全回復したのだが──いくら不死身の魔物といえど、体調面が気になるところだ。


「私はアンデッドゆえ痛みとは無縁です。砕かれた体はオリヴィエ魔軍長の治癒で完全に元通りになりました」


 と、リーガル。

 その声には、いつも通りの覇気がみなぎっていた。


「戦闘に支障はありません。以前と同じく──いえ、今まで以上に働いてみせましょう」

「頼もしい言葉だ。王として嬉しく思う」


 俺は鷹揚にうなずいてみせた。

 恭しく無言で一礼するリーガル。


「恐れながら、王よ。一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「ん、なんだ」

「あなたの仮面の下は──」


 リーガルの双眸──黒い眼窩の奥にある赤い輝きが、俺を見据えた。

 まるで仮面の下にある、俺の素顔を突き刺すような鋭い輝きだ。


「……いえ、なんでもありません」

「リーガル?」

「あなたは魔軍長を七人そろえ、魔軍を立て直しました。『光の王』や『神の力』を得た勇者といった強敵も退けました。勇者の攻勢が激化している今……あなたは魔界を守ることができる『強き王』だと私は考えています」


 初めてリーガルに出会った時のことを思い出す。

 俺のことを『甘い』と断じ、戦いを挑んできたことを。


 その戦いを制し、当面の忠誠を得たものの──それはあくまでも『暫定』という感じだった。


 今は、少しは変わったということだろうか。

 少しは、俺を認めてくれたんだろうか。


「これからも、あなたの剣として働く所存」

「──今後とも頼りにしている」


 俺はリーガルをまっすぐに見つめた。


「期待しているぞ、リーガル」

「はっ」

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