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6 集結、七大魔軍長

 そろそろ、時間だ。


 俺は魔王城内の巡回を切り上げ、謁見の間に向かっていた。


「あ、魔王様だ。こんにちは~」

「魔王様、おつかれさまです」


 駆け寄ってきたのは、警備隊長のリリムや配下の兵たちだった。


「あたしたち、また新しい戦闘フォーメーションを考えたんです。よかったら見ていきませんか~?」


 にっこりと笑うリリム。


「名づけて『帰ってきたフォーメーション・ザマトMKⅡ』です」

「今度のはすごいですよ。通常のフォーメーションの三倍の速さで急降下するんです」


 その配下たちも熱心に俺を誘う。


「悪いが、今日はちょっと急ぐんだ。これから魔軍長たちとの謁見があってな」


 俺はリリムたちに断りを入れた。


「今度ゆっくり見させてくれ」


 彼女たちといると心が和むし、できれば少しくらい見ていきたかったんだが。


「あ、そうなんですか。引きとめてすみません」

「いや、少しくらいなら話す時間はある。とはいえ、遅れると臣下に示しがつかないからな」


 と、苦笑する俺。


「まあ、王の面子というか」

「上に立つ方にはそういう苦労があるんですねー……」


 リリムが、しみじみとした様子でつぶやく。


「あたしも兵たちを束ねる立場。そのお気持ちは痛いほど分かります。上に立つ者の悲哀と切なさですっ」


 グッと拳を握りしめて力説するリリム。

 だが、


「隊長は全然苦労してないでしょ」

「私たちにまかせっきりじゃないですか」


 部下たちにツッコまれていた。


「あ、ひどいなー。あたしだって、こう、いざというときはビシッと! キリッと! シャキッとしてるもん!」

「してましたっけ……?」

「ほぼほぼユルい姿しか見たことないぞ……?」

「もう、みんなして~」

「ははは」


 ほのぼのとした彼らに癒され、笑みをこぼす俺。


「ぜひ、戦技の向上に努めてくれ。頼むぞ」


 名残惜しさを感じつつ、俺は話を切り上げた。


「はーい。じゃあ、もっとフォーメーションを磨き上げるので、いつか見てくださいね。みんな、魔王様に見てもらえるよう、がんばろっ」

「おー!」


 リリムの掛け声に意気上がる兵たち。


「じゃあ、俺はそろそろ行く。またな」

「はーい!」

「魔王様、おつかれさまです!」


 リリムや兵たちの見送りを受け、俺は廊下を進んだ。


 今日は、俺が魔王になって初めて──七大魔軍長が勢ぞろいする日だ。




「よく来てくれた、我が側近──魔軍長たち」


 玉座についた俺は、七人の魔族に呼びかけた。


「はい、魔王様」


 恭しく跪いたのは、長い銀髪に軍服風の黒い衣装をまとった美しい少女だ。


魔神眼(ヴィジョン)』のステラ。

 俺が魔王に生まれ変わってから最初に出会った魔族であり、もっとも信頼する側近中の側近といっていい。

 諜報能力に長けた第一軍を統括する魔軍長である。


「こうして七人そろうと壮観ですな。たとえ百万の勇者どもが攻めてこようと、ものの数ではありますまい」


 体を揺すって豪快に笑ったのは、輝くような黄金の体毛を生やした獅子の獣人だった。


獣帝(ギガントロア)』ゼガート。

 魔軍最強の攻撃力を誇る第四軍を統括し、みずからも白兵戦では無類の強さを誇る猛者だ。


「魔王様の命令とあらば、自分はいつでも駆けつける所存であります。まったく、仕事が山積みだというのに、いちいち集合をかけないでほしい……あ、いえ、これは独り言であります」


 淡々と機械的な口調で告げつつ、最後にボソッと文句を付け加えたのは、銀色の金属でできた魔族。


錬金機将(アルケミスト)』のツクヨミ。

 前魔軍長のイザナが制作した改造生命体(ホムンクルス)であり、錬金術の能力はそのイザナをも凌ぐという。

 機械的な製造分野を受け持つ第七軍を統括する魔軍長だ。


「いつでも呼んでくれていいのよ、魔王様? 謁見の間だけじゃなく、寝室にだって──あたしなら昼でも夜でもお相手できるわよ、ふふ」


 薄桃色の髪を長く伸ばした美女が、蠱惑的な笑みを浮かべる。

 下着と見まがうような露出度の高い衣装が扇情的だ。


夢魔姫(デッドチャーム)』のフェリア。

 精神に作用する魔法や呪術のスペシャリスト集団である第三軍を統括している。


「どうせなら、もっと美少女や美女の魔軍長を増やしてくれれば、私の妄想もはかどるんですが……ああ、お姉さまとフェリア様のカップリングで着想が湧いてきちゃった……また一本描けそう……ふふふふ」


 心ここにあらずといった様子で妄想しているのは、九尾の狐の少女。


邪神官(プリースト)』のオリヴィエ。

 彼女が統括する第六軍は、治癒能力に長けた魔族たちで構成されている。


「私はそろそろ昼寝がしたいんだけど。早退していいかな? ふぁ……」


 あくび混じりに言ったのは、銀髪褐色の秀麗な少年だった。

 その外見とは裏腹に、もっとも古き魔族の一人であり、魔王クラスの魔力の持ち主だ。


極魔導(マスター)』ジュダ。

 魔術師系の魔族集団、第五軍を統括している。


「昼寝だと……? 今はまだ午前だろう、ジュダ軍団長」


 古めかしい甲冑をまとった髑髏の剣士が訝しげに言った。

 卓越した剣技や白兵戦能力、そして相手の生命力を吸収する力を備えた高位のアンデッドだ。


不死王(ロードアンデッド)』のリーガル。

 アンデッド軍団である第二軍を統括している。


「堅苦しいなぁ、リーガルくんは」

「魔王様の御前だ。全員、不要な私語は慎め」


 ぷうっと子どもみたいに頬を膨らませたジュダに、ステラが眉を寄せた。


「ステラったら、あいかわらず魔王様に忠実よねー。忠誠心が厚いというか、乙女心全開というか」


 指摘するフェリア。


「お、乙女心ではない。私はあくまでも、ち、忠誠心から言ってりゅだけだっ」

「ふふ、噛んでるわよ」

「うぐぐ……」


 ステラは顔を赤くしていた。


「二人のやり取りが可愛いです……尊いです……お姉さま×フェリア様の妄想がはかどりますね……ふふふふ」


 その隣で、オリヴィエがぽわんとした顔だ。


「あ、でもフェリア様×お姉さまも捨てがたい……百合のバリエーションは無限大……はふぅ」


 そんな三人を横目に、


「ふん、前魔王様のときに比べて、随分とかしましいことだな」

「自分の見立てでは、会議としていささか効率が悪いと思うのであります」

「お互い忙しい身だからな」

「早急に本題に入るべきかと。まったく、こちらも暇じゃないというのに……手間を取らせないでほしいであります」


 ゼガートとツクヨミが話している。


 ……七人そろうと、全然まとまりがないな。


 俺は内心で苦笑しつつ、魔軍長たちを見回した。


 まあ、能力面ではそれぞれに秀でたものを持っているんだ。

 力を合わせて、来たるべき勇者たちの侵攻に備えよう。


「お前たちに集まってもらったのは、他でもない。来たるべき勇者たちの侵攻に備えてのことだ」


 魔王と新生七大魔軍長が一堂に会しての、初めての魔界防衛会議が始まった。

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