13 魔王VS獣帝
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「ふう」
ゼガートは玉座に深々と腰をかけ、熱い息を吐き出した。
魔王の座。
何度座っても、最高の心地だ。
「ようやくここまで来ることができた」
ゼガートは今までの道のりを思い返した。
魔王城の地下には、太古の戦いで魔王ヴェルファーが神から奪い取った『力』が眠っているという。
絶大にして絶対なる力。
先の戦いで勇者リアヴェルトが手に入れたのは、その一部だ。
だが、欠片ほどの力でも、魔王フリードの魔法を『拒絶』し、渡り合えるほどの威力を発揮した。
もしも、そのすべてを手に入れたなら、どれほどの強さを得られるか──。
ただし、その力は極めて不安定であり、魔の属性を持つ者がうかつに触れれば、消滅は免れないようだ。
ゼガートとツクヨミは魔王城の深奥を調査し、その『力』を慎重に研究した。
そして、神と交信するすべを得たのだ。
──『力』を渡せ。
──それはもともと我のものである。
神はゼガートたちにそうメッセージを送ってきた。
代わりに、魔王打倒のための方策を授ける、と。
つまり、取引だ。
神は力を取り戻し、ゼガートは新たな魔王の座を得ることができる。
危険な賭けではあったが、彼はそれに乗った。
そして神からいくつもの有用な情報を教わった。
・フリードが元人間であること。
・神や魔族ですら超えられない『因果律』という理を、なぜか彼だけは超えてしまい、絶大な魔力と能力値を得ていること。
・ただし、元人間という特性から『攻略法』が存在すること。
・その攻略法とは、魔王剣の欠片と奇蹟兵装を併用した戦術であること。
──などである。
そして、その戦術通りにフリードを追い詰めたのだ。
「ここまでは上手くいった。問題は、この先──」
「取引通りに『力』を渡せば、間違いなく神は魔界を滅ぼすのであります」
玉座のかたわらでツクヨミが言った。
「いちおう協定を結んではいるが、な」
うなずくゼガート。
魔界が人間界を不当に侵さないなら、魔族の存続を認める、と。
不倶戴天の敵である魔族に取り引きを持ち出すほどに──神は、それだけ失われた力に執着しているのだ。
神が取り引きをすぐに反故にする可能性は、おそらく低い。
力を取り戻した後も、神が自身にそれをなじませるには時間がかかる……らしいからだ。
「すぐに魔界へ攻撃を仕掛けてくることはない、と考えるのが妥当でありますな」
と、ツクヨミ。
「ああ。もちろん、先のことは分からん」
実際、神がこちらにした約束は方便だろう。
いずれ力を取り戻せば、魔界を滅ぼしにかかるはずだ。
「だが、時間さえ稼げればいい」
うなるゼガート。
「その間に魔王城地下に眠る防衛兵器を修理し、天軍を迎撃する体勢を整えるのだ」
そしてゼガート自身も──必ず神を凌ぐ力を身に着けてみせる。
いわば、この協定は神とゼガート陣営が互いにさらに力をつけ、いずれは雌雄を決する──というのが既定路線。
フリードは互いにとって害にはなっても益にはならない。
ゆえに互いの利が一致し、力を合わせて排除する──というのが大枠である。
「ゼガート様、緊急事態です!」
と、謁見の間に獣人系の魔族が入ってきた。
「なんだ?」
「そ、その、魔王様──いえ、フリード一行が……ぐあっ!?」
爆発とともに、その魔族は吹き飛ばされた。
床に叩きつけられ、気絶してしまう。
「敵襲か」
ゼガートは玉座から立ち上がった。
かつ、かつ、と甲高い足音とともに黒いローブをまとった人影が、続けて銀髪の美しい少女や赤い髪の少女戦士、そして髑髏の剣士が現れる。
「儂に挑みに来たか。魔王である、この儂に」
「お前に王位を譲った覚えはないぞ、ゼガート」
先頭に立つ仮面の男──フリードが静かに告げた。
「魔王の名において、お前を討つ」
※
「魔王の名において、お前を討つ」
俺はゼガートをまっすぐに見据えた。
「ふん、儂を討つ──か?」
うなる獣帝。
いや、奴自身はすでに新魔王のつもりだろう。
「今のお前が儂に勝てると思うのか?」
「勝てるかどうかじゃない。勝つ」
傲然と腕組みするゼガートに言い放つ。
「必ず──」
王として。
仲間を守るために。
そして魔界を守るために──。
絶対に負けられない一戦だ。
「ステラ、リリム、リーガル。打ち合わせ通りに頼む」
背後の三人に告げた。
他の警備兵たちは別の場所で待機させていた。
大人数でかかったところで、ゼガートの戦闘能力は並の魔族とは次元が違いすぎる。
いたずらに犠牲を増やすくらいなら、この場にいないほうがいい。
歴代最強の魔力が大幅に弱体化している今、頼みはこの三人との連携だ。
「承知」
リーガルが俺の側に並び、骨を組み合わせたようなデザインの剣を構える。
「私が奴の動きを読みます。魔王様はそれに合わせてください。リーガル、リリムもだ」
と、ステラ。
「あたしもがんばります~!」
リリムが元気よく叫ぶ。
「打ち合わせは済んだか? 数をそろえたところで、この魔王ゼガートは倒せんぞ」
「どうかな?」
「俺たちの力を甘く見るな、ゼガート」
うなる獅子の獣人に、俺とリーガルが突進した。
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