静かな無常観
コスモより電力確認。ハロー、ハロー、応答願います。ハロー。
ジリリリリリン。ジリリリリリン。
深夜に二度電話が鳴った。僕は電話をとらなかった。こんな深い夜に電話してくる輩がまともな奴であるはずがないからだ。そして、僕は電話というやつが苦手であった。顔も見えない相手と声だけで会話するのは恐怖であり、また、時折会話を不成立にさせるからだ。だから電話を使うことにかなりの抵抗があった。しかしほんの少し、なぜこんな時間に、僕の家に電話がかかってきたのか気になりもした。寝床で静かにうつらうつらとしながらも僕はそんな些細な疑問を転がしていた。
ジリリリリリン。
三度目の音が鳴った。目覚まし時計であった。僕は慌ててそれを止める。また今日が始まる、漠然とそう思った。
外は昨日に引き続き曇りだった。その雲の向こうでは太陽がいつも通り輝いてるらしい。
天気がどうであれ、ほぼ一日中屋内にいる僕には関係のない話だ。空を眺めたって世界が変わるわけではないし、気持ちが落ち着くわけでもない。もちろん眺めなくたって変わるわけではない。唯一変化の可能性があるものと言えば、革命的な思想ぐらいのものではないだろうか。だが、今のところそんな思想には残念ながら出会っていない。だからおそらく、今日も世界は相変わらず太陽の周りを回るのだろう。
それより今は眠い。昨日の電話のせいだ。そしてお腹も減っている。一見そういったものが僕に現実感というものを与えてくれそうなものなのだけれど、そういったものは一過性の痛みと同様に気をそこに傾倒させられるだけに過ぎない。
ああ、もう一度眠ってしまおうか。
おはよう。こちら僕。システムは完全にショート。沈黙を続けます。