プロローグ
黒い雲が空を駆けている。僕は不思議に思った。雲が黒くても降ってくるのは透明な雨であることに。そして僕は感じた。やはり僕は世界から離れていると。
身体が世界と精神をつなげるインターフェースだとしたら、それは完全に機能を停止していた。僕の体は健康で、感覚も正常であるはずだった。にもかかわらず、僕は現実を完全に見失っていた。どれほど、いや、どのようにもがけばいいのかもわからず、僕は仕方なしにさも何の疑問も不満もないというふうに日々を振る舞っていた。
僕が明確に、世界との関係に不安を持ち始めたのは、2011年、あるいは2012年だったと思う。逆に僕が現実に溶け込んでいたのは2005年前後であり、さらに言えば、僕にとって現実とはその時であった。2010年まではとうとう近未来に足を踏み入れたかという現実的な感触があった。しかし、2011、2012年と、震災、受験、そして思春期の到来と、およそ僕の感覚を狂わせることが続いた。とどのつまり、2005年があらゆる僕の基準であり、2011年以降は完全に近未来であった。2016年現在、その感覚は歪んだままで、世界を正常に読み取れない状態が続いている。
ハローハロー、応答願います。ハロー。
こんばんは。こちら僕。システムは完全にショート。沈黙を続けます。