証
『何をしておる。近くに寄れ。』
「は、はぁ…。」
神奈の脳内はパニック状態に達していた。
『綺麗に化粧までして、ますます俺好みだ。神奈は、嫁に来ることが怖いとは思わないのか?』
「それは…、怖くないといえば嘘になります。でも、私にはこの道しかないのだからと、幼いころから言われてきました。」
『それは、自分の意志か?』
トーンを落としたその言葉に体が反応してしまった。幼いころからこの世界では18までしかいられないと言われてきたため、その後のことは一切考えてなかった。
「…。私はずっと、あなた様をおそばで支えるるために、この18年間を生きてきました。」
『なら、未練はないというか。』
「はい。ございません。」
神奈の一言に、神は
『首を出せ、儀式を終わらせる。』
「えっ、…?」
『首に俺の証としての紋章をつける。なぁに、心配するな少し痛いくらいだ。』
紋章は、主である神から妻となる巫女につけるものだ。しかし、普通の神たちは半年前に付けに来る。
__巫女が怖くなり逃げ出さないように、首輪の代わりとしてつけられる。__
付けられるだけならいいだろうが、この紋章は村から出られない仕組みになっている。
つまり__、
『1年間、お前をこの村から出させない。今そう決めた。』
「は!?ちょっ、待ってください、それだけはっ…!」
その瞬間、首筋に痛みが走った。
「くぁっ…、なんでっ…。」
『お前の気持ちに隙が見えた。そのまま野放しにしていたら、逃げられると判断したからだ。』
そんなっ…。
最後は涙しかなかった。
「なんでっ…、どうしてこんなこと…。」
『すまんな、しかし、これがお前の運命だ。受け入れてくれ、神奈。』
とても暖かかった。
抱きしめられていることに気づいたとき、離れようとしたらまた繋ぎとめられた。
あぁ、この暖かさを感じたのは、いつぶりだろうか…。