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8、非情のライセンス(笑)

 ギルドでの換金など手続きを終えてパパヲが帰って来たのはそれから二時間以上経ってからだった。


 夕食は予告通りの馬肉のステーキ。岩塩と若干の胡椒をかけた逸品である。この胡椒もパパヲが以前依頼主から貰ってきた戦利品である。


『『『『『『うまうま』』』』』』


 子供達の心が一つになった。いや、ダジャレじゃなくて、純粋に美味だということだろう。これだけのステーキは流石の我が家でもめったに口にはできないご馳走なのだ。俺はというと、離乳食として少しだけミンチにしたお肉を貰った。しかし、俺のメインディッシュは別にあった。それは、


「さぁ、ジローちゃん。おいちぃデザートでちゅよ~」


 キモイ笑顔で俺に向けて食べさせようとしているパパヲがスプーンの上に乗せているもの。それは、


 ぷるん


 なんと、ちっちゃなスライムである。


 某どらごんなくえすとに出てくるようなスライムのちんまいのを生きたまま踊り食いさせようとしているのである。あ、目が合った。


 スライムは涙目でこちらをみている。


 青、というよりは若干紫っぽい体色で、つぶらな瞳が愛らしい。


(おねがい、わたしをたべないで)


 そう言われているようで、何とも罪悪感はんぱねー! そして、その向こうには


「おいちいでちゅよ~」


 キモイ笑顔のパパヲがスプーンをこちらに押し付けようとしている。


 これ、食べなきゃ駄目?


 ママメはというと、にっこり笑顔である。ヤバい。これ、期待してる顔や!


 ええい! ままよ!


 ぱくっ! あわれ、スライムは泣きながら俺の胃袋へと消えて行った。合掌。


 パラパパッパパッパッパ~♪


 へ?




 ジローラモはレベルがあがった。


 ちからが2あがった。

 すばやさが3あがった。

 たいりょくが3あがった。

 まりょくが12あがった。

 せいしんりょくが8あがった。


 スキル「非情のライセンス(笑)」をてにいれた。


 けいけんちを2てにいれた。




 え? ええっと? どういうこと?


 味は思っていたものとは違い、葡萄のような甘いさわやかな味だった。


「おお! いきなりレベルアップしたみたいだぞ! ジローは優秀みたいだな」

「うふふ。きっとパパヲに似たのね」


 ? 夫婦二人は何だか理解してるみたいだが・・・


 つまり、こういう事みたいだ。


 さっきのスライムは食材ではなくれっきとした魔物であったと。ただ、食べられるようで、食べて殺せば経験値となる。だから生きたまま食べさせれば僅かばかりとはいえ経験値となって場合によればレベルが上がる、と? 




「山肌の麓で葡萄の木を見つけてな。ちょっと調べたら居るわ居るわ、グミスライムの群生地でな。ジローとヒメの為にたんまり捕って来た。もちろんみんなの分もあるから、食後に一人一匹ずつ食べような!」


 すると、みんなわーい! と大喜びだった。結構人気の食べ物なんだろうか?


 ともあれ、みんなおいしそうに食べていたところ、姉ともう一人マローがレベルが上がった。

 最年長のストックは、それを羨ましそうに見ていたが、


「まぁ、ストックはそろそろレベル10近くまで上がってるし、そうそう上がらんよ。お前はそろそろゴブリンとか、その辺の魔物にも負けない位の下地が出来たことだしな。どうだ? 冒険者の試験、受けてみないか?」


「え? 本当ですか? やったー!」


 ストックは大喜びでピョンピョン跳ねまわっていた。それを見ながらケラケラ笑う子供達。

 なんとなく、俺も嬉しくなる光景だった。


「でも、危ない事は駄目だからねっ!」


 マリーに釘を刺されていたのはまぁ、聞いといた方がいいぞ。


「どうせなら、マリーも受けてみないか? 二人でバディを組んで活動すれば生還率も上がるだろうから、それにやっぱストックにはマリーが付いていないと危なっかしいしな」


 パパヲが爆弾をぶっ込んできやがった。流石にストックは


「いや、パパヲさん! 流石に何も準備していなかったマリーがいきなり合格するとも思えません。冒険者になるのには反対しないけど、ここは堅実にFランクから……」


「才能の無い奴ならFだろうが、その下の伝説のGランクからでも通用しねぇよ。だが、マリーならいけると俺は思うぜぇ! ママメもそう思うだろ?」


「ええ。家事の上手な子は冒険者としても最低限身を守る術は身に付けているものよ。それはただ戦闘だけの事じゃなくて、生きて行く上での大事な事を知っているという意味でもね」


「いや、だからって」


「あたし、やってみようかな?」


「へ?」


『『『『『『ええええっ!』』』』』』


 この日一番のサプライズは最後の最後にやってきた。




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