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7、13人いるっ!



 あれから一年半たちました。


 俺もこの頃ではハイハイできるようになり、すこやかに成長しています。

 そろそろ立ち上がってもいいでしょうか?


 あれから、チュートリアルダンジョンは使えなくなったものの、夢の中でだけ使えるスペース(精神と時の部屋みたいなの)の中で毎日修行はしてました。ええ、オンドレさんに貰った器具を駆使して。


 え? 13人の子供の話はどこへ行ったって?




 今からちゃんと説明しまっせ。


 ありていに言えばイチヒメを除く12人は、俺とは血の繋がりはなかった。

 と、いうのも、俺の家は、孤児院をやっていたのである。


 元々、父パパヲは冒険者としてそこそこ名の通った人物で、依頼で知り合った孤児院経営者の母ママメと出会って結婚したということだ。


 6年前、孤児院を営んでいた母が地元貴族からの求愛を受け、嫌がらせを受けていたことがあったそうだ。孤児院の子供を捨てて母一人を妻として迎えようとしていたらしい。


 地元の与太者によって、当時居た子供たちが誘拐され奴隷落ちさせられようとしていた処、以前より知己のあった父のパーティー仲間から依頼を受けるという形でこの誘拐事件を解決したというのがなれそめであったそうな。


「本当に、その時は英雄様が私を助けてくれたと本当に思ってしまったのよ。一目惚れだったわ。それに、あの人も私を抱きしめて、『二度と心配しなくていいからな。俺がお前を守る』なんて言ってくれたのよ。きゃーっ」


 などと惚気ていた。俺を含むまだ小さい子に向かって。


 姉はともかく、他の子供たちは胸焼けしてるみたいな顔してたから、日常茶飯事に聞かせているのだろう。




 とはいえ、今でも当時助けられた子供達は一緒に住んでいるので、特に年長組はやはりパパヲに心酔している者も多い。


 代表格が最年長のストックである。現在14歳なので当時は8歳か。以来パパヲのような強い冒険者になろうと日夜訓練に励んでいる。剣の筋はいいらしいが、父曰く「線が細い。肉喰え、肉!」との事、体作りの為、必死こいて飯を喰らう毎日だ。


 そして、同じ歳のマリーも、パパヲに助けられた口だ。とはいえ、冒険者になりたいと言っているストックには思う所があるらしく、冒険者になる事に反対している。彼女は孤児院に残って子供達の世話を母と一緒にしたいみたいだ。


 次に年上のタックは12歳。そろそろ自我が発達してきて反抗期なのだろうか? 彼も6歳の時に誘拐された組で、以来悪い事に対して許せない思いがあるらしく、将来は騎士を目指しているらしい。とはいえ、普段は悪戯ばかりして女の子達から顰蹙を買っている。俺も一度顔に落書きをされた。


 その次がハナ11歳。ここから下は誘拐未経験者である。俺の両親が結婚してから院に入った子で、口減らしの為に森へ捨てられていた所をオーガ退治をしにきたパパヲに見つけられ連れてこられたとか。


 そして、10歳の少女二人、ノーベとチノ。ノーベは俺っ娘。ショートカットの青い髪を振り乱しながら町中を走り抜ける元気っ子。一度散歩に連れていかれたが、小一時間走りっぱなしですんげー酔った。


 チノはおしゃれさんで、ふわふわの綿菓子みたいな金髪がかわいらしく俺好みの容姿である。しかし、その実裏の顔はやや黒く、一つ下のマローなどは子分扱いで顎で使っていたりする。おにゃのここえー!


 そのマロー9歳だが、甘えん坊で自立心が乏しくうちの母にべったりである。最近では三歳になった姉イチヒメと母の取り合いをしている。もっとも、姉に対して本気になる訳にもいかず、大抵はだだっこパンチに頭を抱えて逃げ出す始末。そして、逃げた先でチノに捕まるというコンボで毎日泣き濡れている。合掌。


 同じ歳の双子の姉妹ロロとルルは、サイドテイルの結びが右左という以外は見分けがつかない。大人しくて無口な二人であるが、俺はステータスを調べて二人の間に繋がっているテレパシーで会話をしている事を知っている。色素の薄い二人は髪色も薄く、何となく薄幸の美少女という感じだが、その実、二人の回線では何やら面白ネタで盛り上がっているらしい。


 そしてアファムとカナンの6歳コンビ。二人は好き合っているらしく、将来結婚すると公言している。当然うちの両親の影響であろうが。共に昨年俺が生まれる直前に連れて来られたらしいが、ある意味一番母の惚気に付き合いのいい二人である。リア充はリア充を知るという事か。爆発しろー! 爆発五郎!


 最後に最年少のプチェット、4歳。イチヒメのお姉ちゃんを自称するおしゃまな子。元はパパヲのパーティーメンバーだったハーフエルフの女性の娘であった。彼女は3年前に戦火の中で亡くなり、当時乳飲み子だった彼女はマローと共に亡命する所だった。金髪碧眼の可愛らしい子だが、残念ながらエルフ耳は受け継がれなかった。


 と、まぁ現在俺ら家族4人の他に12人の孤児が俺の家には住んでいるのである。


 他に通いの家政婦であるヨネさん(49)が居るが、朝夕の食事の支度と簡単な掃除程度で帰る為、一緒に住んでいる訳ではない。


 なんにせよ、総勢16人の大所帯。これが俺の家の事情である。




 今日は、おさんぽで母と姉、それにロロ、ルルの双子と街まで出て来ている。


 この街はキルトクール伯爵領、バクロシティといい、人口7500人程の小さな街であるが、町民の大多数が馬の仕事に従事している比較的裕福な街である。


 この街の入り口には馬車の駅があり、ここからあちこちの街に行く駅馬車の始発点でもある。

 また付近には馬を生産する牧場があったり、馬を売買する市が立つ市場などもあり、馬具を作る馬具職人、蹄鉄を付ける装蹄師、獣医、または馬の皮で色々な細工物を作るコードバン職人や製肉業者など(あえて何の肉とは言わないが)多種多様な仕事がある。


 当然、馬一頭となると、一度の取引でもかなりの金額が動く。通常王都でも、銅貨、よくても銀貨が流通の基本であるのだが、この街はある意味国でも一二を争う程の金貨が流通する。


 ついでに、この国の通貨の基本を説明しておくとしよう。


 我が国、カペード王国では、以下の通貨が流通してる。


 銅貨

 これは、三種類あり、一単位を表すガバス銅貨、半分の重量の半銅貨、1/4の四半銅貨で、1銅貨が大凡日本円の100円位の価値だと思っていいだろう。大体、これ一つで黒パンの小さいのが一つ買える程度。四半銅貨で買えるものはほぼ無く、精々豊作時に余った作物一個でその程度という感じだろうか? 大抵は、柔らかい白パンなど付加価値の高い商品に1と四半ガバスといった感じで値付けするのに利用するのが主となる補助通貨である。


 銀貨

 通常、通貨と呼ぶ場合はこちらを指す。こちらも3種類。100ガバス=1ガメルに匹敵するガメル銀貨は一枚が4g程度の小銀貨、その10倍の10ガメル銀貨は重さ40g程度で穴が中央に空いている。この穴に紐を通して持ち運びするのだ。更に滅多に使わないが、200g程度の50ガメル大銀貨というのがある。まあ、そこまで用意するなら金貨の方が楽なの流通量は少ないのだが。


 金貨

 一枚が100ガメルの正金貨と、通商や大口取引などにのみ使われる大金貨がある。

 正金貨は一枚32g程度でこちらで言う所の1オンス金貨に近い。含有率はこちらの世界と比較にならないかというと、さに非ず。魔法で精製する為むしろこちらのクオリティの方が高い。一枚100ガメルということは、10000ガバス、つまり、日本円に換算すると約百万円ということだ。大金貨はそれの10倍の大きさで320g程度。価値は1000ガメルである。他の街は知らないが、この街では結構出回る事もある。大体馬1頭、それも戦争に使える軍馬などはこの大金貨10枚などという値段がつく事もあるのだ。


 そして、結構我が家ではこの大金貨というのは身近に存在する。なぜならば、


「おーい! ただいまーっ!」


「ぱーぱ、おかえり~」

「パパヲ、おかえりなさい。お疲れ様でした」


 駅の近くまで来た所で門の外から帰ってくる父に出会った。

 パーティーメンバーも後ろに控えている。


「ようやくグリフィン共を退治できたぜ! この季節は野良グリフィンが牝馬を狙って押し寄せて来るからなぁ」


「まぁ、おかげで俺達冒険者は割りの良い仕事にありつけるんだけどな」


「もっとも、グリフィンを退治できる冒険者なんて数も知れてるからな。中途半端な腕じゃ返り討ちだし」


 父とその仲間のガンツとバッテンである。皆いかついマッチョの脳筋軍団であるが、持ってる武器の加護が凄まじく完全に人間の域を突破しているAランク冒険者である。


 この街は馬が多い事あって、それを狙った大型の魔物が近寄って来ることがままある。それも、グリフィンの様に繁殖目的や、ワイバーンら亜竜のように食糧として狙うものも多い。


 特にグリフィンは、牝馬に力を示す為、種牡馬を殺してから牝を孕ませるのである。そうして、生まれてくるヒポグリフは、母馬の腹を喰い破って生まれる為、一番価値のある種馬と母馬、生まれる筈の子馬を一度に無くし、牧場経営が成り立たなくなるので牧場経営者も必死である。無論、そんな状態ではおちおち放牧も出来ない為、一定以上の力量のある冒険者に警備や魔物の間引きを依頼する事が多いのだ。


 当然ながら、そういった強い冒険者は雇うにもコストがかかる。支払が金貨や大金貨になる事も度々だ。俺達の家は、そういった割のいい仕事を求めてこの一年の間に王都からこの街に引っ越してきた。パーティーはもとより、孤児院ごと。まぁ、王都は子育てや孤児院をやるには余り宜しくない環境だという事もあるが。




 いずれにしても、俺の家は孤児院なんかやってる割には裕福である。それも、この環境があればこそであるが。もっとも、平民としてはという但し書きが付くが。

 とはいえ、結婚前はかなり貧しい生活だったらしく、王都での主食は麦粥と雑草のスープばかり、良くてパンに貰った屑野菜を挟むサンドウィッチだったとか。


 それが、この街に来てからは毎食パンとスープだけでなく肉もそれなりに食べられる生活になったとか。しかも、うちには風呂まであるのだ。


 そう、異世界転生ものの定番である風呂を作るまでの苦労が俺の場合、既にあるという環境なのである。しかも、おにゃのこと混浴! いや、赤ん坊なので誰かが面倒見なければ入れないのだが。




「俺達はギルドで依頼達成の手続きをしてから帰る。今日はステーキだからな。みんなに楽しみにしてるように言ってくれよ。それと、ジローにもお土産があるからな」


「わかりました。楽しみにしてますね?」


 そう言ってパパヲ達はギルドへと向かった。

 ステーキひゃっほい!


 いや、俺まだ食べられないけどね。馬肉だろうから固いだろうし。


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