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無限幻想 -灰と忘却のパヴァーヌ-  作者: 支倉文度
第二章
13/32

#11 燃えよ魔術 その②

 グラビスの咆哮と共に、一斉に襲い掛かる。

 まず、一番最初の敵の繰り出す、乱雑な腕ふりをを3寸退きで躱す。


「甘い」


 後続の2人は側方からきた。

 右舷からの掴みかかりと、それに合わせた左舷からの拳打。

 魔状の先端で拳打を弾き、右からの掴みかかりに対しては、強烈な蹴りを顔面に見舞ってやった。


 「ぐぇッ!!」

 

 ヒールが頬骨を砕き、貫通する。

 それと同時に情けない声を出して、壁に叩きつけられた。

 続いて、蹴りの際に発生した運動エネルギーを利用し、体を空中1回転。

 振り回した魔杖の先端で2人の首を刈り取る。

 その動きは魔術師とは思えないほどの、身のこなしであった。


「……まずは3人」

 

 悲鳴を上げる間もなく倒れた2匹。

 その姿を見た残りの敵は、激昂したように唸りを強める。


「まだやる気なの?」


 不満げな表情を見せながら槍術の構えをとる。

 だが、これ以上時間をかけるわけにはいかない。

 一気に片を付けようと、グラビスは目を細めながら思った。

 

(魔術で一気に吹っ飛ばす。これが1番手っ取り早いわ)


 魔術。

 術理を紐解き、魔力によって万象の一部を具現化させるもう1つの法則。

 あらゆる可能性に、枝葉を伸ばせるのが魔術の利点だ。

 それらを扱うのが魔術師。


 まずは術理を紐解く、即ち詠唱だ。

 詠唱を口にし、自身の魔力と万象の法則とを繋ぎ、技と成す。

 技と成せれば、戦闘において威力は御墨付だが、そうもうまくいかないのが世の中だ。


(うわぁ、魔力練ったら滅茶苦茶反応した。詠唱をし始めたらすぐにでも襲い掛かるつもりね)


 魔術の規模にもよるが、詠唱には大抵時間がかかる。

 このように少しでも魔力を感知されるようなことがあれば、隙を狙われオダブツとなる。

 一部の魔術師にとっては、詠唱時こそ死地なのかもしれない。


 だが、グラビスはいたって冷静だった。

 それどころか、詠唱する気配すらない(・・・・・・・・・・)

 ただ、じっと相手側のほうを睨んだままだ。


 そんな状況にしびれを切らし、全員がグラビスに襲い掛かる。

 間合いは2・3m。 

 しかし次の瞬間、魔杖の先端から、爆炎と熱せられた鈍重な大槍が無数に飛び出す。

 それもガンマンの早撃ち、神速の剣捌きともとれる動きの中で詠唱や術式一切なしで(・・・・・・・・・・)の強力な魔術であった。


「――――聖痕の串刺王(ダーインス・レイヴ)


 本来は、長い大詠唱を必要とするものであり、半径2km圏内に爆炎と共に熱せられた大槍を地面から突き出させる技だ。

 炎と闇の属性を組み合わせた上位級魔術であり、今回は空間の広さや神殿へのダメージを考慮に入れ小規模のものへと変換したが、その威力は折り紙付き。

 ものの見事に、襲い掛かってきた敵達を串刺しにしていった。


 砂ぼこりと炎が舞う中、敵の死体を眺めるグラビス。

 これはグラビスの才能とでも言えばよいのか。

 グラビスは、『魔術に詠唱を必要としない』

 そして、『自分がこの目で見た異能の技は、どんなものでも再現できる』

 たとえそれが最上位級魔術であろうと、宇宙の真理に触れるような禁術であろうと。

 覚えてしまえば一切合切短縮して、行使することが出来る才能を持つ。


 いわゆる天才と言われる部類の人間だ。

 何より1番驚くべきは、底なしの魔力である。

 生まれた時の才能、若しくは努力次第で、魔術師の魔力容量は上がる。

 だが、グラビスの魔力量は、最早無限の域と言っても過言ではなかった。

 そんな魔力量で、詠唱無しに魔術を行使する様はまさに、『人類最強』


「よっし、終わり。……そういえばおじさん遅いなぁ。大丈夫かな」


 戦闘を終え、軽く伸びをするグラビス。

 汗1つかくことなく終わらせ、未だ戻らぬリョドーの身を案じ始める。

 しばらく待つと、1人分の駆け足の音が近づいてきた。 


「グラビス! 無事だったか!」

 

 ようやくやってきたリョドーに大きく手を振る。

 

「……これ、お前がやったのか?」


「うん、全然余裕だよ」


「はぁ、無茶しやがって……」


 グラビスの強さは知っていたがこれほどとは。

 内心ゾッとしたリョドーだった。

 





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