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無限幻想 -灰と忘却のパヴァーヌ-  作者: 支倉文度
第二章
12/32

#10 燃えよ魔術 その①

 サンシュルピス・モンテ・クリスチオ地下神殿 第1層。


 歯車たちのけたたましい音。

 古代の威容さに、リョドーとグラビスは、ただひたすら舌を巻くばかりだ。

 

「出来りゃゆっくりと観光したいところだが、あの早く3人を探さなくちゃあな」


「うん……そうだね」


 感動もほどほどに歩みを進める。

 水路の幅が徐々に広くなっていく。

 その先は崖のようになっており、巨大な滝となって水が流れていた。

 

 実に心地良い。

 これが地下にあるというのが嘘のようだ。

 やがて、天井を覆うほどまでの煌びやかな壁画が現れる。

 ひんやりとした空間に、溶け込むようにずっと先まで続いていた。


「見事だ……。ここまで完全に残されているものなど他にあっただろうか」


 並ぶ壁画たちに心を奪われる。

 だが、逆に気味が悪くもあった。

 周囲に警戒を払いながら進んでいくと、4方形の空間へとでる。

 高さは大よそ4m程で広さは一教室といったくらいか。


「なに、これ……?」


 一方の壁に描かれた大きな子宮。

 その中に、紫色で塗りたくられた胎児が身を屈めている。

 それも、無数に。

 

「こっちにもある」


 反対側の壁の上側には、特徴のあるシワを持つ丸み。

 これは脳みそだ。

 しかも、いたるところを灰色で塗りたくられている。

 その下に描かれているのは、折り重なる無数の死体。

 そして、降り注ぐ楕円状のなにか。

 焼かれる街に。

 そして、なぜか描かれる下卑た笑みを浮かべる無数の顔。

 

「ひどい……」


「これは、戦争か? いや、そんな単純なものじゃあない。なんだ、なにを表している?」


「見てて気持ち悪い……、ここは音楽を司る神殿じゃあなかったの?」


「……地下神殿は別の目的で建造された可能性が高い。あるいは、歴史の真実とかな」


(まさに表と裏、か。なにより気になるのは、何故この神殿の上に校舎が建てられたということかだ。)

 

 リョドーは親指で顎をなぞりながら考えていた。

 グラビスはこの部屋の壁画を見まわしている。

 だが、その最中に、おぞましいほどの殺意を感じ取った。

 まるであらかじめここで、待ち構えていたような。


「地下神殿からのサプライズかな」


 ポンプアクションの音が響く。

 同時に、壁を突き破って幾人もの"ヒトのようなもの"がなだれ込んでくる。

 だが、様子がおかしい。

 奇声を上げる彼らの肌は紫がかり、瞳は真っ赤に濁っている。

 老若男女、果ては幼子まで。

 黒い装束を身にまとった彼等は、破竹の勢いで2人に襲い掛かる。 


「グラビス!」


「任せて」


 銃弾と魔力弾が、次々と刺客達の体を貫通していく。

 しかし、勢いが止まる気配は一切ない。

 腕や足に当たった程度では痛がるどころか、怯みすらしなかった。

 撃たれて転がる死体を、彼奴等は踏みちらしながら、全速力で迫っていく。


「グラビス、後ろにある通路に走れ!」


「わかった、おじさんも急いで!」


 グラビスの安全を最優先にし、自らは殿しんがりを務めた。

 巧みな銃捌きで敵の腹や頭を吹っ飛ばしながら、後退の機会をうかがう。


「しぶといんだよお前等あっちいけ! ハウス! ハウス!」


 リョドーの心からの叫びは、数多の奇声で虚しく搔き消えた。

 だが、ようやく、機会は訪れた。

 敵の勢いが弱まった。

 後退しながら銃弾を放ち、急いでグラビスの後を追う。



 一方、グラビスにもまた試練が待ち構えていた。


「あなたたちがどんな存在かは知らないけど、邪魔しないでくれる?」


 通路の先にもまた、例の者共が待ち構えていたのだ。

 猛獣のように喉を鳴らし、今にも飛び掛からんばかりの雰囲気である。

 しかし、グラビスは臆せずに、鋭く睨みつけていた。


「いいわ、相手になってあげる。そのかわり、後悔しないでね?」


 グラビスの掌に収束する魔力の光。

 そこから現れたのは煌びやかな装飾がされた魔杖。

 先端は槍のように鋭い。

 それを、巧みに軽く振り回す。


「来なさい、叩きこんであげるわ!」


 

 

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