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4話 宴の席で

10/24各話にタイトルを付けました。

「「「カンパーーーイ!!」」」


あの後、溜まった水が穴に流れ込み池へと変わったのと見届けた後、俺はマナを大量に使った影響もあり、村長の家で休ませてもらうことになった。

日が落ち、夜へと変わるころに目覚めた俺を待っていたのは、宴であった。


この村の宴は、各家それぞれが料理を持ち寄り、みなで食べ比べて騒ぐといったものであり、今も俺の周りには各家庭から持ち寄られた料理が所狭しと並んでいる。

村長の家の隣に隣接した集会場には、村の住人、数十人ほどが集まっていて、集会場に入りきれなかった人たちは、集会場の前の広場で焚き火を囲んで、歌ったり、踊ったりしている。


「楽しんでいられますかな?」


「村長」


村長が飲み物を片手に俺の隣に腰を下ろしてくる。


「どうぞ」


「ああ、すみません」


飲み物の器を傾けてきたので、コップを差し出す。


「このたびは本当にありがとうございました」


「いえいえいえ、そこまで感謝される事でも……」


元々の原因は俺のようだし、こうやって感謝されると罪悪感がしくしくと痛む。


「そんなことはございません、村の危機を救っていただき、ユレン様には感謝しております」


「そこまでの事は……、それに俺のような子供にそこまで敬意を払う必要はないですよ」


実際、危険性は説いたが、そこまで被害が出るようなことではなかったとも思う。


「いえいえ、村の恩人に払わない敬意などありません」


「はあ」


この手のタイプの人は、無理に砕けた態度になってもらおうとすると、意固地になってしまいそうな気がするし、このまま放っておいてもいいか、それに比べて……。


「よーうボウズ! ちゃんと食べてっか!」


この人は砕けすぎな気もしなくはない。


「食べてますよ、ダンカさん」


俺の頭に手を乗せてガシガシなでてくるダンカさんは、だいぶ酔っぱらっているようだ。


「ほれ! これうちのカカアが作った飯だ食べでみな!」


左手に持っていた皿を俺の前に置いてくる。


「それじゃあ、いただき……って、これ米?」


本来、ここより遠く東方のよく食べられる食べ物が出てきたので、驚いてダンカさんを見る。


「おっ、米知ってるんか、こいつは米で作った“おにぎり”ってやつだ」


ダンカさんの言うとおり、皿にはおにぎりが並んでいる。


「米って……、高かったんじゃないの?」


東方でよく食べられる米は、生産も東方で行っている為、小麦主体のこちらの地域で出回ってはいない。

また、出回ってはいても、輸送の関係や希少価値の高さから、相当な高値で取引されており、普通は辺境の村の宴で出てくるような品物ではない。


「あっはっは、心配すんな、これはうちの畑で採れたもんよ」


「嘘!? 稲作やっているの?」


本来、豊富な水源が必要な稲作だ、


「ああ、でも確かにこの村ならできるかも」


山から豊富に川の水が流れるこの村なら、環境次第では稲作も不可能ではない、しかし、


「よく、稲作のやり方知っていたね?」


稲作と小麦の栽培方法は違う、小麦の栽培方法で米を育てれば、米は育たない。

もちろん、小麦と米の二毛作を行うこともできるので、やり方を知っていれば栽培はできる。


「まあ、ちょっとな」


ちょっと、酔いが醒めたような顔をして顔をそらすので、


(わけありかな?)


とりあえず、深くは突っ込まないで置く。


「そんなことより、ボウズ、お前すげえなあ!」


あからさまに話題がそらされたが、気にせず乗っておく。


「すごいって?」


「あの池だよ!」


「池って、昼間作ったあれの事?」


「そうだよ、魔法使い(マギア)ってのはあんなにすげえことができんのかよ」


「確かにあれはすごかったですね」


村長も乗ってくる。


「んー、さすがにみんながみんなあそこまでの事ができるわけじゃないよ」


自分自身凄腕のマギアの自身はある。


「はー、ボウズすごかったんだなー」


すごいと思ってるなら頭に置いてある手を退けてほしい……縮みそうだ。


「なあなあ、俺にも魔術ってやつだっけか? 使えねえかな?」


ダンカさんがそう尋ねてくるが、


「無理」


一言で切って捨てる。


魔法使い(マギア)になるには資質と条件がいるんだよ」


「資質と条件ですか?」


村長が尋ねてくる。


「そう、資質っていうのは、俺たちが体に持っている魔石、この魔石が一定以上大きいこと、んで条件っていうのは子供のころにマナの放出ができるようになっていることだよ」


生物ならだれもが持っている魔石、この魔石にはマナを生成、蓄積、増幅する能力がある。

この能力は、魔石の大きさが大きく、質が高い程高くなる。

魔術を使うには、一定量の以上のマナが必要になるため、その必要量のマナを生み出せるほどの魔石の大きさが必要になる。


「「マナの放出?」」


二人して首を傾げているので、解説する。


「魔術を使うには、体の外にマナを出さないといけないんだけど、そのマナを出すための穴? っていうのかな、目に見えないくらい小さいんだけど、それが体が出来上がると閉じちゃうから、子供のころに放出の訓練をして、開けておく必要があるんだよ」


「そんなことが必要なんですね」


「そうなの、だから実際、マギアの資質を持っても、これができてなくて魔術の使えない人ってのは結構いるんだよ」


都会の街ならともかく、普通のだとそういったことを知らなくて、まれに生まれてくる資質を持った子供が気付かずに一生を終える人は多い。


「まじかー、それだったら俺が幼いころに知ってたらマギアになれたかもしれないのかー」


ダンカさんは残念がっているが、それは難しいだろう。


「いや、マギアの資質は、マギアの親でも子供が違うっていうのはあるし、普通の人から生まれる確率は低いから、村の中に100人中1人いればいい方ってところだと思うよ?」


「そんなに低いのですか?」


「これでも結構高い方だと思うよ」


実際は最低限のマギアの条件にあう資質を持った人間であり、資質が高ければ高いほどその条件は厳しくなる。

まあ、資質を上げることもできるので、条件に当てはまる人間を増やすこともできる。


「まあ、両親がマギアだと生まれてくる子もマギアがってのは多いから、結構貴族にはマギアも多いね」


もちろん、資質自体はあっても、魔術の腕の方は保証できないが、


「なら、昔見た領主様のご子息はもしかしたらマギア様だったのかもしれませんね」


村長がそのようなことを言ってくる。


「会ったの?」


「ええ、今はもう領主を継いでいらっしゃりますが、領地を継ぐ前に、視察と称していろいろと領内を回っていたそうで、私が若いころにこの村にもきたことがあります。」


「へー、どんな人だったの?」


「フォレド伯爵家のテスタ様といいまして、とても優しくて誠実な方でしたよ」


「おお、あの方は素晴らしい方だぜ」


珍しい、普通、税を徴収する貴族は、あまり平民には好かれないものなのだが、よほどいい経営をしているのかもしれない。


「なあなあ、マギアの資質ってどんなのがあるんだ?」


「それは私も知りたいですね」


「マギアの資質? いろいろと確認方法はあるけど、一番わかりやすいのは普通より力が強かったり体が頑丈だったりすることかな~」


体内に満たされたマナは身体能力を上げる。

だから生まれつき身体能力が高い子供はマギアの資質を持っていることが多い。


「まあ、違う場合もあるけどね」


「つうことは、もしかしたらドンカはマギアの資質を持ってたのかもしれねえのか」


「たしかにそうかもしれないですね」


「ドンカさん?」


俺を山から拾ってきてくれたドンカさんは熊のようにでかくて大きいし、力も強そうだ。


「あいつは、昔から体が大きくて、力も強かったから狩人になったんだ」


「もしかしたら、マギアになっていたかも知れませんね」


「そういえば、ドンカさんは?」


宴の中にドンカさんはいない。

あれだけの体格の人なら、どこにいてもすぐわかるんだが、


「あー、ドンカはたぶん家だ」


ダンカさんがバツの悪そうに答える。


「宴に参加しないの?」


「彼は、あまり大勢のいるところが好きではないのですよ」


村長も困り顔で答える。


「ガキの頃からでかい体で村から浮いてたせいで、今でも柵の向こう側に山小屋作って住んじまってるんだよ」


まあ、あれだけの巨体なら、村でも目立つか。


「別に俺らも嫌っちゃいないんだけどよ、あいつが壁を作っちまってな」


ダンカさんが困ったように髪を掻く。


「嫌われないのはいいことだよ、マギアの資質をもっているならなおさらね、辺境でマギアの資質を持っているのはあんまりいいことじゃなしね」


「どういうことです」




「マギアは高値で売れるからだよ」


実際、辺境にマギアがいない理由はこのことが多い。


「マギアの奴隷は高値で取引させるし、資質を持っているだけでも高値がつく」


実際、マギアの資質を持った人間同士を番わせてマギアを増やそうとするようなところもある。

また、魔石は生活全般にも使える為、大きな魔石を持っているマギアを殺して魔石を売り払われるなどといった行為もスラムなどではよくおこなわれている。


「辺境でマギアを見ない理由はね、危険だから近づかないのと、居ても売られちゃうからだよ」


事実俺も、旅をしている中で命を狙われることやさらわれそうになることもが多々あった。

獣や魔獣、モンスターに襲われることもある世の中では人の命の値段は低い。

辺境の貧しい村々であれば、金に換えようと思う人間も多いというものだ。


実際俺も、ドンカさんに拾われて山小屋で起きてから、周りの警戒を怠ってはいない。

池を作ったときも、村長の家で休んでいる時も、宴の席でも常に一定の警戒をしていたし、食べ物も注意している。


「だから、俺なんかを売れば高値がつくと思うよ?」


そういって、二人を見つめる。

さて、どういう反応するのかね?



ちょっと増量中

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