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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第一章 変わること、変わらないこと
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ネガティブ・ニューカマー(6)

「いやー、俺の両親はなんとか省?ってとこに勤めててさー。俺の小さいころから、『奇跡の子』に関わってたんだよなー。」


正くん、ペラペラと過去を語り始めました。

ところで、当たり前のように僕の席に座り込んでますが、

あの、邪魔なんですけど……着替えたいんですけど……。


「ナオキは成績良すぎるし、空気も読めないからさー。……中学は辛かったみたいだよ。」


元気いっぱい!というイメージだった正くんですが、

そう言ってちょっと何かを思い出すようにうつむきました。

まあ、人に言えない過去なんて誰にもあるものです。

僕も豚小屋時代は壮絶でした。いつもエサの奪い合いで……


「みたいだよ……って、中学は別々だったのか?」

「そだよ。俺はあいつみたいに成績良くないからさー。それに、ナオキは高校行ってなかったしねー。」

「……高校行ってなかった?」


服を脱ぎだそうか迷っている僕を見もせずに、

達也さんが正くんと会話を進めていきます。

まるで僕は露出狂です。恥ずかしいけど、気持ちいいみたいな……


「コミュニケーション能力の再教育とかなんとかでさー。中学の頃にナオキが失敗したのは、教育委員会も予定外だったみたい。」

「……『奇跡』も大変だな。」

「まあ、こうしてナオキと同じ高校になったし、あいつが楽しんでくれれば一番良いんだけどさー。」


遠い目をして語る正くんは、直樹さんの良き友達ですね……。

こうやって思ってくれる方が居れば、大丈夫なんじゃないかと、

ちょっと甘いかもしれませんが、僕は思いました。



「みんな揃ってるな。なんかあったのか?」


そうこうしている内に、直樹さんが戻ってきました。

話の雰囲気には当然気づかず、いつも通りイケメンスマイルです。


「おせーよナオキ!用事あって来たのに、もう時間ないじゃんかー!」

「悪い悪い、それで用事って何だ?」

「ん?……えーっと……忘れたしー!」


気づいたんですけど、直樹さんのご友人とは言え、

正くんって結構おバカさんではないでしょうか?

僕もどっちかと言うとバカなので、こんな事言うのはおこがましいですが、

ポリポリと頭をかく様子がなんともおマヌケです。


「……ま、いいかー!それじゃまたなー!あんまりナオキを甘やかすと調子乗るから気を付けろよー!」

「おう、ありがとな正。」

「……何だ何だ?何話してたんだ?」


走っていく正くん、手を振る達也さんと僕たちの顔を見ている直樹さん。

なんかこの三人の関係性が面白いと感じるのは僕だけでしょうか?



「ってか、お前らもう正と仲良くなったんだな。」

「あ?……あいつが人懐っこいだけだろ。まったく。」


直樹さんが驚いてますが、僕は少なくともまだ打ち解けられてないので、

達也さんのコミュ力が高いからだと思いますぅ。はい。

さて、正くんも居なくなって僕も着替えられると思った所で、

担任の水郷先生がホームルームで帰って来ました。


「ホームルーム始めるぞ!ん……あれ、まだ着替えてない奴いるのか!何やってたんだ!」


す、すいませええん。こんなのばっかり。


さて、HRを終え、達也さんと簡単な会話を交わした後は、

ベンチ入りという叶わない夢を見ながらバットを振り、

キャッチボールで暴投して相手に嫌な顔をされつつ、

先輩に頭を下げていると、みるみる日が落ちていきました。


もし直樹さんが野球部だったら、こんな練習しなくても、

あっさりレギュラーを勝ち取って、得点王とかになる勢いなんだろうなあ、

……たぶんその嫉妬心から、みんな彼を避けていくのだろうなあ、

なんて事を思ってしまいました。

まあ僕の場合は、常人より出来ない事が多すぎるので、

日頃から嫉妬する気持ちさえ無くしてしまいましたけどね。あはは。



「あきらめたら、そこで試合終了じゃん。」

「……いや、あの何かそんな低いテンションで名ゼリフ言われても……」


寮の夕食時間。カツカレーを食べるうのぽん。本当に食べ方汚い。

直樹さんの……『奇跡の子』の事について、ちょっと伝えてみました。

あんまり言いふらすのって、良くないんですかね?


「完璧超人、俺は友達になりたいけどね。直樹くんだっけ?」

「……ええ、話せるようにはなれると思いますよ。ただ、話してて不思議な感じというか……」

「不思議な感じ?」

「うーん、何言っても響かないというか、ちゃんと聞いてるけどそうじゃないっていうか……」

「恒太の話がつまらんだけじゃね?」

「うっ……」

「つまらんくてリアクション取れないとか。苦笑いで精一杯とか。」

「や、やめて!もう恒太のHPはゼロよ!」

「古くね?」

「と、とにかく……多分心が無いって事なんだと思います。」

「ふーん。でも、カンタンに他人の言葉で心動かされるよーな人間もそれはそれでつまんないと思うけどね。」


うのぽんはそう言って一瞬僕の目を見た後、また手と口を動かし始めました。

え、何ですかそれは僕が簡単に心動かされるっていう事ですか?

確かに僕は達也さんに簡単に心奪われましたけど、でもそれとこれとは……

そもそも運命が……(略)出会った時……(略)それで……(大幅に略)、

ところでうのぽん、カツカレーを素手で食べてるんですけどインド人ですか?


「……別に恒太の事言ってるわけじゃないじゃん。」

「あ、そうなんですか。安心しました。じゃあスプーン使って。」


でも僕が思う心に響かないっていうのは、うのぽんが思ってるのと違って、

本当に聞いた耳から逆の耳へ通り抜けていくような感覚というか、

……うーん言葉にできないですね。

少なくとも、あんまり感情を出さずブレる事のないうのぽんとは、

また異質な反応をするのが直樹さんなわけです。


「奇跡か……おもしれーじゃん。」



「フハハハハハハハ!奇跡か!それすなわち神の二つ名であるぞ!」


…………。はい。来ましたね。

うのぽんも僕も、非常に落ち着いて食事を続けています。

真横から高らかな笑い声が、意外と小声で聞こえてきました。

眼鏡をクイクイ上げながら確実に距離を詰めてくるあの男。


「ハッ!神を奇跡と呼ぶとは!宇野君も分かってきたようだな!」

「呼んでねーじゃん。」

「ハッ!強がるでないぞ!神の前では体裁など無力!」

「そもそも神様の話なんてしてなくね?」


うのぽんの冷めた口調もさておき、無駄なハイテンションで僕らを襲うのは、

みんな大好き★自称神様こと上川大樹(カミカワダイキ)さんです。


「ハッ!ならばどこだ!奇跡を起こす異教徒の神は!落合君、答えたまえ!」

「ど、どこでしょうね……よく分からないですが……」

「地球の裏側とかじゃね?行ってらっしゃーい。」


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