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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第一章 変わること、変わらないこと
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色恋沙汰に神降臨(2)

気持ちの良い朝だ。こんな日こそ神の心も躍る。

二年一組の教室は、いつも賑やかな空気に包まれている。

その中心で、特別際立った雰囲気を発しているのが、

『お嬢』こと「鈴木美沙子」である。


「あらん、今日のダイヤは少し汚れてますわ!どなたか拭いてくれません事?」

「……お嬢!俺がやります!」


飛んできたのは男子生徒A。ただのモブキャラである。

圧倒的な美貌を有する彼女は、ほぼ男子校と言っていいバルガクの中で、

一気にスーパーヒロインとして注目されている。

お嬢様である彼女に近づけば、金銭的な施しも受けられる可能性があると、

浅はかな考えを持っている男子生徒も多い事だろう。


「よくやってくれましたわ。こちらお駄賃ですわ。」

「か、かたじけない!」


千円札だか五千円札だかを受け取って、男子生徒は舞い上がっている。

ハッ!実にバカバカしい。金でしか人民の心を操れぬとは。

神ならばその巧みな話術で人民を操り、神のもとに集わせ……



「こらお嬢!いい加減やめろって。」


そんな男子生徒からお金を取り返し、鈴木の手に戻した人物こそが、

爽やかな雰囲気の漂う、快活なイケメン住田洋次だった。

彼の身長はぐんぐん伸び、モデル体型に近づいている。いかん、よだれが……。

住田の態度に、鈴木がムッとして言い返す。


「殿方だけですわ。わたくしのやる事なす事に文句をつけるのは……召使のくせに、図が高いです事。」

「お嬢が勝手に召使にしただけだろ!俺は承諾しとらんわ。」


あっさりと鈴木の要求を払いのける住田。

鈴木も思い通りにいかないのが悔しいのか、ムッと頬を膨らませる。


「良いですわ、もう。また外で別の召使を探します!」

「おい、待てって!」


そんなただでさえ目立つ鈴木が、訳の分からない事を他でしないかどうか、

見張って注意する役。世話焼きの住田はそれを勝手に引き受けているようだ。

……テル君が勘違いするのも分かる気はするが、

あの二人の間に、恋愛関係はひとまず無かろう。



「そうなのよね。あれからテル君すっかり勘違いしちゃって上の空。何とかならないもんかしらね?」

「ハッ!勘違いする方もする方だ。ちゃんと確認を……って、当たり前のように侵入してくるでないぞ、綿華君。」


いつの間にか神の隣に立ち、様子を伺っていたのは綿華君。

テル君と住田君の関係にやきもきして、動き出したお節介ガールだ。


「嘘の体験談作ってまで、テル君を動かそうとしてみたけど、あれは頑固すぎるわ。洋次君も洋次君だし……これは一筋縄ではいかないわね。」

「ハッ!せめてお互いの状況をもっと把握していればいいんだがな。お互いが中途半端に距離を取っているせいで事が進まんぞ。」

「そうよね。こりゃたっちゃん(達也)を動かして、何とかお互いのズレに気づかせるしか無いかしら……」

「ハッ!長瀬君を勝手に巻き込むでないぞ。前も言ったとは思うが、これはテル君と住田君の問題。理想は彼らが自分たちで解決する事だ。神はあくまで導くだけ。手助けをしてはならんぞ、綿華君。」

「はいはい。お節介もほどほどにするわー。」


綿華君は気のない言葉を返した。納得していないらしい。

彼女にこれ以上言っても無駄か。神も彼女には困り果てたものだ。

まあ、強がって行動するなんて事は無くなったから、

前に比べたらマシか……とは思うがな。



「それよりあたし、あっちの方が気になるんだけど?」


綿華がニヤニヤしながら指さした方には、

宇野君と、それから野上の姿があった。


ツインテールの野上は、特徴的な上目づかいをしながら、

次々と男子生徒を喰っているという噂まで出てくる始末。

確かにまとわりつくような粘着質な声は、「釣り」を思わせるものだ。

もちろん釣りの相手は、免疫の少ないバルガクの男子たちである。


「かつてあたし達の追求を振り切ったうのぽんが、あんな目立つ餌に引っ掛かるとは思えないけど……でも、気になるわよね?」


悪い事だとは分かっているが、綿華君にそそのかされて、

神は彼女と一緒になって耳を澄ませる。



「ねえ宇野君、教えてよお?」

「駄目じゃん。プライバシーの問題じゃね?」

「ええええ、野上がこんなに聞いてるのにい?」

「駄目じゃん。」

「ええええ、宇野君のいぢわるう!」


宇野君の袖を掴んだり、前に立って上目づかいをしたりと、

色んな作戦を用いる野上だったが、宇野君にはあしらわれる。

綿華もそんな様子に眉をひそめていた。


「あの子、何を知ろうとしているのかしら?」

「ハッ!分からんが、軽音部に入り込んだのは、転校生を中心にイケメンが多いからともっぱらの噂だぞ。」

「ふうん……ねえ神様、ちょっと調べてみてよ!」


急に突拍子もない事を言い出す綿華君。いつもの事だが。

しかし、作戦も無くしてあの女から何かを訊き出すのは難しいぞ。


「ハッ!どうやって調べると言うのだ?」

「こっちから声を掛けてみたらいいじゃない。あの子も何かを知りたがってるんだから、知ってる情報は教えてあげる、って言ってさ。」

「ハッ!何を知りたがっているか分からんのにか?」

「でもうのぽんに訊くような内容でしょ?全知全能の神様なら、知ってる可能性が高いと思うけど?」

「ハッ!都合のよいところで神を利用しおって!良い死に方せんぞ!」

「安心して、あたしは地獄に落ちるわ。地獄で恵まれない貧乳の子を集めてハーレムを作ってやるわよ!」


……実に勝気な女だ。

しかし、うちのクラスには鈴木といい、野上といい、

綿華に劣らぬ変な女子ばかり転校して来たもので、

それが神を悩ませている、という程ではないが、

常日頃一組の話題の種になるには十分すぎるインパクトがあるぞ。


そもそも神が少々危険を冒して、野上に接近する意味はあるのだろうか?

神は傍から見て、視野の狭そうで真面目な顔をした男、

不審者や、ストーカーの類だと間違えられかねんぞ。


「ハッ!綿華君が行った方が、不審に思われないのではないか?」

「あたしはあたしで忙しいのよ。やる事もあるしさ!だから神様お願い!信仰してあげるから!」

「ハッ!都合が良すぎるにも程があるぞ!神を何だと思っているんだ!」

「神様だと思ってるわよ?そんなわけで、野上はよろしく。あの子貧乳だから、良い子だったらあたしが取って食っちゃうわ!」

「ハッ!おっかない事を言うではない……しかし、神にメリットが何もないではないか!」

「そうねえ……そしたら、神様の大好きな脇坂良助(ワッキー)の半裸隠し撮り写真はどうかしら?」

「それ犯罪。でも頼んだ。」

「もう持ってるわ。交渉成立ね。じゃ、お昼頃までにはよろしくね!」


HRも始まる時間、綿華はあっさりと消えていった。

……勘違いして欲しくないのは、長瀬君らの幼なじみ、脇坂君の事を、

別に意識している訳ではなく、ただ彼は水泳で培った筋肉が、

非常に神好みでたまらんというだけでうへえええい生写真来たァァァァ!


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