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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第一章 変わること、変わらないこと
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ネガティブ・ニューカマー(1)

皆さんこんにちは。落合恒太(オチアイコウタ)と申します。

高校二年生です。あらゆる面において、平均点以下の男です。

桜があっという間に散り、僕の未来もあっという間に散っていくのです。


夢も希望もない僕ですが、今日は待ちに待った一学期始業式です。

何で待ちに待ったかというと、クラス替えがあるからです。

去年の僕は、なぜか優等生の多いクラスに入れられ、底辺に位置し続け、

豚の様な一年を送ってまいりました。とっても楽しかったです★


だから今年はそんな不運に見舞われたくないという思いと、

ついでに言うと、僕が片思いしている達也(タツヤ)さんという方と、

同じクラスになれたらいいなあ、なんて儚い希望を持っています。

言うの忘れてましたけど僕はたぶんゲイです。あはは。


クラス分けの掲示がされている下駄箱前は、すでに新二年生で賑わってます。

僕は浅はかな幻想を抱きつつ、ちょっとずつ足を踏み出します……。



「ハロハロー。恒太遅かったじゃん。」


友達の宇野剛司(ウノツヨシ)さんです。友達だと思っているかは分かりません。

一部の間では、「うのぽん」という呼び名で親しまれています。

低いテンションと楽天的な性格は、僕とは違って色んな人に人気です。

僕より先に寮を出た彼は、もうクラス替えの結果を見ていたようです。

何となく緊張しながらうのぽんの顔色を窺ってみます。


「ん?まだ見てねーなら自分で見なよ。」

「……あ……そうですね……」


うのぽんに背中を押されて、人混みの中に顔を突っ込みました。

緊張マックスです。心臓がのど下まで上がってきているかのようです。

僕はけっこう目が良いので、そんなに近寄らなくても見えるのですが、

二年一組から二年五組まで名前がずらっと並んでて、

その中から、目立たない存在である僕の名前を見つけるのは困難……


あ、ありました。二年三組でした。

慌ててザーッと上から名前を見渡したのですが、千年に一度の奇跡が起きて、

長瀬達也(ナガセタツヤ)」という名前を同じクラスに見つけてしまいました。


ああ、もう幸せすぎて不幸です。

多分今日寮に帰ったら、何かしら事故が起きて僕は死んじゃうと思います。

それくらい幸せです。うまく伝わりますかね?



「良かったじゃん。まだ達也来てねーみたいだけど。」


後ろからうのぽんに肩を叩かれました。

僕はちょっと顔を歪ませて、不自然な笑い方をしていたので、

うのぽんにはドン引きされました。いつものことです★


「あ、そういえばうのぽんは……」

「俺は二年一組。恒太とはまた違うクラスじゃん。」


去年はうのぽんと達也さんが同じクラスで、僕が一人別のクラスでしたが、

今年はうのぽんが一人別のクラスってことになってしまいました。

……全員一緒なら、一番うれしかったのですが……。


「そろそろ上がる?ずっとここ居ても寒いじゃん。」

「あ、そうですね……」


寒がりでベージュのカーディガンを羽織ったうのぽんが、

身を震わせながら歩き出したので、僕もそれに付いて行きます。

クラス分けの結果を見ても、うのぽんがいつも通りあっさりしているので、

なんだか僕だけ余計に寂しくなってしまいました……。


そういえばクラス分け表をちゃんと見なかったので、

階段を上がりながら、うのぽんに何となく聞いてみました。


「他に一組は誰が居るんですか?」

「えーっと、とりあえず『神様』が居たと思うよ。」


「神様」……とりあえず人間です。高校二年生です。あくまであだ名です。

強烈な個性をお持ちの方なので、無視していてもいずれ現れるでしょう。

紹介しようかと思いましたが、面倒なのでカットします。


「あと、今年は転校生が多いらしーね。」

「え、そうなんですか?」

「七人来るってウワサじゃん。」

「……何かすごいですね……」


そうこう話しているうちに、あっという間にクラスのそばに着きました。

北校舎はあまり使う機会がなかったので、何となく見慣れない感じで、

無機質で殺風景ですが、そのうち慣れますよね、きっと。

うのぽんがあっという間に一組の中に入っていったので、

僕も意志を固めて三組の中へと飛び込んでいきました。


名前順で六番目の僕は、一番後ろの廊下側の席になったわけですが、

僕はいくつか出来上がってるグループには入れず、黙って席に着きます。

そしてキョロキョロ前を見渡してます。ただの不審者です★



……そんな僕の肩を後ろから叩いてくれる人が、一人いました。


「よう恒太。まさか、お前と一緒のクラスとはな……」


まごうことなき達也さんです。僕の片思いの相手です。

去年はうのぽんの友達同士という事を利用して、何とか接点を作って来て、

とりあえず達也さんと普通に話せるようにはなりました。

ただ、今までになかったシチュエーションなので、

若干緊張してきました。今、脇から汗を滝のようにかいてます。


「あ、はい……僕もびっくりしました……」

「そうだな。まったく……とりあえずぼっちは防げたぜ。」


どことなく言い回しが中二病っぽいのにお気づきでしょうか?

そんな達也さんですが、意外と純粋な方です。おいしいおかずです。


「みんな、席に着けよー!」

「クッ、そうか水郷か……」


教室に担任の水郷先生が入って来て、それと同時にチャイムが鳴りました。

立ち話をしていた生徒たちが席に向かい、達也さんも慌てて席につきました。

水郷先生は、去年の一年三組の担任で、僕らにとっても顔なじみなので、

自己紹介をあっさり済ませ、廊下に何か合図を送りました。


「みんなの自己紹介をする前に、転校生に自己紹介してもらおうか!」



入って来たのは、平均的な身長に、整った顔立ち、

ばっちりセットした髪に、さわやかな雰囲気を兼ね備えた、

誰がどう見ても間違いようのないイケメンでした。

教室全体を見渡して、ニッと笑った時に、白い歯がキラリと光りました。


織田直樹(オダナオキ)です。東京から来ました。部活は……まだ考え中かな。とりあえず一年間、よろしく。」


あまりにイケメンすぎるので教室がざわついていますが、

織田さんなるイケメンはそんなの慣れっこという感じで笑ってます。

はあ。織田さんみたいな、汗も爽やかでいい匂いですよーみたいな人は、

僕みたいな年中豚小屋の匂いのするキモ男とは一生無縁ですよねえ……。


先生に席に着くよう促された彼は、こっちへ向かってきます。

そういえば前の席が空いてます。名前順……オダ、オチアイ。……あ。

織田さんは僕の前に座ると同時に、イケメンスマイルを向けてきました。


「よろしく。この学校の事、いろいろ教えてくれ。」



ぐあああああっ!!まぶしィィィィィィィィィィィ!

そのイケメンオーラ、そしてイケメンスマイルの輝きに、

薄汚れたゴミ置き場生まれの僕は、一瞬で浄化させられそうになりました。

イケメンスマイルの転校生と、ブ男で苦笑いの僕。

波乱の一年が幕を開けたのです――。


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