5
「今の所、安定しているがあの子の体では正直、手術を受けるのは危険だ。命を落とすかもしれない。」
「そうか、どちらにしても長くは……」
「生きられない。」
「と、言うことだ。」
「……」
動物病院の高橋院長から言われたことを宗吾は皐月にありのままを話した。
「皐月。」
「大丈夫だ、……わかっていたさ。けど」
飼い主の発見が遅ければ猫の白血病はひどくなる。症状はぐったりして動かない、口の中には口内炎になる。動物の口の中は見えにくいこともあり、人間とは違い、動物は痛みを伝えることはできないだからこそ、発見ができない。
だからこそ
「だからこそ、早く見つけてやればよかったのに、俺は。」
「そうか………すまない、皐月。」
「いや、……手術を受けても助かるのか?」
「……確率はあまり、無いとも言えないが。」
「……そうか。」
「?、皐月?」
「バイト行ってくる。」
「……皐月。」
皐月はその空気に耐え切れず、バイトへと出かけた。
外へと出た皐月、バイト先には向かわず 動物病院へ。
やはり俗にいうツンデ ゲフッ
「………すみません、こちらに預けている猫の」
「?」
皐月はなんか頼み込み、アリアと会うことに成功。
「そうか、君が……」
「えぇ、今日は申し訳ありません。」
「いえ、アリアちゃんを今、酸素室に入れたところです。」
「え?」
院長である高橋さんと話すが、少し理解ができなかった。
ひゅー ヒュー
「……っ。」
「この通りでこの酸素室から出たら、命はありません。今、現在手術を受けても長生きはしないと思われます。」
「……そ、そうですか。」
ニャ……ニャー、ニャー。
「(アリア……)わかりました、お願いします。アリアを助けてください。」
理解ができなかった、いや理解しようとしなかった。
ずっといる、ずっと長生きする。それが人間にとって当たり前のことだ。
それでも皐月はいや、アリアは答えるように返事をした、か細い声で、確かに鳴いた。
皐月は今にも泣きそうな声で、先生に頭を下げた。
きゅきゅっ
「!、そこ、手を抜くな。」
“は、はい。”
“も、申し訳ありません。”
“なんか今日は怖いなあいつ。”
“アルバイトの奴だろ?”
“ほっとこうぜ。”
バイト先の仕事に打ち込む皐月。
「(アリア……帰ってきたら、遊んでやるからな。絶対に……どんな形でもどんな結果になろうとも……)」
そんな形でもいい、どんな結果でもいい。あいつが、アリアが帰ってこれるように頑張らなければ……
君がいる世界が俺にとって一番の世界だ。
君がいない世界は 何もない世界。
一部実はと曖昧な話です。
今回の話は、飼い主側の思いです。母が保護した猫が病気にかかってしまい、病院に二・三週間ほど入院していました。一部実話はその時に聞いたのもです。現実を認められず、私は逃げていました。酸素室に入っているその子を見たときは「あぁ、生きてほしい、誰か助けられるなら私の心臓を悪魔に差し出してもいい。」と思えたぐらいです。
一番、苦しかったのは今年の大雪の際、消防所のサイレンで責められているようで気が狂いそうになりました。多分違うと思うけれど、皐月はその時の私に重ねてしまいました、早くアリアを皐月と宗吾の家に帰してやりたいです。