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プルル プルル
「!、すまない皐月。何か?」
“「それはこっちのセリフだ。今どこにいる?編集者も困っているぞ?」”
「あぁ、すまない。アリアの様子がおかしくてね。今、病院に来ているんだ。」
“「病院?」”
「!、宗吾。」
「?、高橋?」
「アリアちゃんの原因が。」
“「!」”
「―-っ。わかった、今行く。」
そういって宗吾は携帯を切った。 ピッ
「おい!宗吾! チッ。 申し訳ないです。もう一度、日を改めて。」
突然電話が切れ、いら立ちを隠せない皐月。吐き出す場所がないまま。
「それで、アリアの様子は?」
「あぁ、傷口からウィルスが入ったようで、炎症をおこしている。もしかしたら、他の病気を起こすかもしれない。」
「……治すことはできないのか?」
「できることはできるが、完璧には。」
「………わかった。」
酷な選択肢だ。だが、何にも代えられない。
宗吾は覚悟を決めアリアを病院に預けた。
「(皐月は怒るだ………!……)」
「………」
動物病院から帰ってきた宗吾。玄関を開けると鬼の形相の皐月がそこにいた。
「(怒ってる(汗)……やばい。なんと言い訳を……)」
「……アリアは?」
「………すまない。」
宗吾は意を決してすべてを話した。もちろん皐月もわかってくれているようだ。
「というわけで、しばらくは帰れない。すまない、せっかくの家族を。」
「……仕方ないことだ。わかって、俺は助けた。」
「……うん。それでも家族だろ?皐月。」
「……っ……」
失いたくない。
わかっていても、涙は流れる。いつか本当に失ってしまう。だから皐月は失わないように大切にしてきてそれでも怖くて全て離してきてしまったのだろう。
「皐月、アリアが帰ってきたらあの部屋は寒いと感じるかな?」
「はっ?お前何言って。つーか、手!何握ってんだよ!!気持ち悪い。」
宗吾は良いことを言ってるつもりだったようだが、スルリと手を握るのは……
ないだろう…………
「たくっ。」
「……少し未来の話をしよう。皐月。」
「?」
「例えば、アリアが無事に帰ってきて私達と暮らす。そしたら少しこの家は寒い。こたつか、ヒーターを取り付けた方がいいかな?」
「なんでそこで疑問形なんだ?」
話しかけてきて笑顔で返事を待つ。女の子なら一発で落ちてしまう技。
だが、皐月に通じない。
「そうだな。少し暖かくしないとな。」
今はただ、未来を考えて。恐怖を少しだけ忘れて過ごしたい。
今だけは。
プルル プルル
「!、はい。あぁ、高橋、あぁ、アリアの………え、わかった。すぐに行く。」