24,過去<宗吾視点>
“先生、この本はなかなか面白いですよ。”
「うん、ありがとう。」
小説家になりそれなりに本が売れていた時代。
“先生の本楽しみです。”
「うん、ありがとう。」
同じ言葉を繰り返す毎日、だが、
“借金の返済をお願いします。”
宗吾の所属する出版社が倒産して宗吾に回ってきた。借金は返せたがそのせいで評価が落ちた。
「お願いします。どうか。」
“無理です。”
“不採用です。”
「……。」
悪い評価のおかげでここでも同じ言葉ばかりが返ってくる。
唯一ある出版社からの依頼でつないでいた。
“先生次はどうしますか?”
「………すまない、少し時間を………。」
長い連載も悪い評判で打ち切られ、次の作品を考えるばかり、そのせいかお酒を飲み始めて…………
“お客様、もうお時間が……。”
「……えぇ、すみません。」
書けなくなり、フラフラと
もうだめだ。何も書けない。何も面白いものが……
悩み悩み 苦しんであるバーにたどり着いた。
“君の事が好きなんだ。”
“う、嬉しい。俺も。”
“君はいつだってきれいだよ。だから俺と。”
“えー、どうしようかな?”
そこはゲイが集まるバーで宗吾は気付かずそこで飲んでいた。
「(ふーん。結構面白いね。男同士ね、書いて……!)」
そこで見つけたのが 皐月。
キュッキュッとコップを拭く姿。カクテルを作る姿。
なぜかそれが凛々しく見えて。
「ねぇ、君。」
「はい?」
「私の家に来ないか?」
「…………いいぜ。」
その時、光のせいか瞳に自分が映った。
それが何とも言えなかった。それが………
「 ご? うご? そうご?寝てんのか?宗吾。」
「さ、皐月?」
「寝るなら風呂に入って出てそれからベッドで寝ろよ。風邪ひいたら……。」
くんっ、宗吾は皐月の服の裾を引っ張った。
「……うん、わかってる。皐月。」
「ん?」
「キスしていい?」
バゴッ、せっかくの雰囲気が台無しだ。殴られたところをさする宗吾。
さすがツンデレ皐月。
「寝言は寝て言え。」
「はい……。」