21,
今までの状況を考えると
皐月からしてみると隣は知っている。編集者として遥を知っていたが、この二人が同じ家だとは知らない。
宗吾からしてみると遥は編集者で、隣とは図書館で初めて顔を合わして以来だ。勿論宗吾も知らない。
ということになるが、
「それがお互い知らずとは、」
「面白いですよねー。」
「面白くないぞ。隣。」
話が落ち着いたところでお互いの本音が出る。
「……。」
「?、どうした?皐月。」
「いや、ちょっとアリアの事が気になって。」
「?」
「ありあ?」
「えぇ、内で飼っている猫で、黒キジの猫なんです。」
「……くろキジ?」
ハッと皐月は口を押える、余計な事を話したと思ったが……
「あー、あの猫ちゃん君の猫だったの!」
「……え!?」
「まさか……。」
「いえ、何もしてませんよ。おやつを上げたぐらいですから。」
「「おやつ?」」
「はい。」
隣の言葉に裏があるのかそれとも、と怖いことを考えたがそんな事よりも隣との話についていけない。
「最近近所で飼っていると思う猫たちがボクの所に来るんです。だから嬉しくてついおやつを。」
「おやつってこの前の!!」
「うん。」
隣の話していることがやっとわかった。皐月は二・三日前の隣との会話を思い出す。
“おやつのあげすぎ”“動物を飼ったことがない”“一番好きなのは猫”
「そうだったのか……。」
「えぇ。あぁ、そうだ。ここに来る前、多分アリアちゃんだと思うんですけど他の猫と一緒に物置の上で寝ていましたよ。」
「……。」
ポスン、皐月は呆けたように座った。
今まで不安だった。自分の知らない所で大切な人が亡くなるのはもうごめんだと、だからこそ皐月はずっと大切にしてきた。
「皐月」
「わりぃ、大丈夫だから。」
あぁ、俺のいるところは平和だ。もう昔とは違う。もうあの頃とは違う。
もう失わなくて済むんだ。
「……。」
宗吾は思った、皐月はまだ自分に話せないことがあるんだとなら今だけは抱きしめて少しでも皐月の気持ちを知りたい、知っていきたい。
少しでも君の気持が和らぐのなら君の分まで僕が君を愛そう。
「この二人の物語を」
「ダメだ、やめとけ隣!!」
感激する二人とコソコソと小声で話す二人。
どちらもどうしようもない感じだ。
「さて落ち着いたところで本題の原稿を。」
「「ヴっ。」」
「先生方ー?」
「「はい」」
本題の原稿は終わりました。