16,
「ヘックション!! う”-、風邪か?」
宗吾と隣が図書館で話をしている時、皐月は家で遅めの昼食を食べていた。
「さてと、今日の授業も終わったし、バイトもないし卒業まであと一か月だし。」
ピンポーン ぶつぶつと考え事とやることを口に出す皐月。そこへ誰かが来たらしい。
「?、はい。 どちら様ですかー?」
「○×出版社の渚 遥です。橘先生に」
たずねながらも扉を開ける皐月、そこには自分より大きい人が「橘先生」と聞いただけで、
「……すみません。」
謝った。
「………えっと。」
「あぁ、すみません。どうぞ上がってください、もう少ししたら帰ってくると思いますので。」
「は、はぁ。」
皐月は前の編集者と同じように対応していた。宗吾は締切や悩んでいるときは必ずといっていいほど編集者から逃げている。そのためか時間があると人には家で待っていてもらうことがよくあった。
「す、すみません。お邪魔してしまって。」
「いえ、気にしないでください。今、コーヒーを。」
「……!、食事中でしたか。」
「え、あぁ、ご一緒にどうですか?」
「え!!、いえ、だ」
ぐぅー、ご飯のにおいにお腹も悲鳴を上げた。
「大丈夫ですよ、たくさんありますから。」
ズルズル ズルズルっ すする音が響く。
「おいしいです。」
「ありがとうございます。」
「……あの」
「はい?」
「いえ、同居人の皐月さんですよね。」
「えぇ、そうですが?」
「今先生はどちらに?」
「えーと……」
編集者がくる意味など知っていたが今日ばかりは「嘘をついてくれ。」と宗吾から言われている。
「す、すみません。俺も知らなくて。宗吾はよくフラッとどこかへ出かけるもんでして……」
「そうですか……!」
「?、何か?」
取りあえずごまかす、皐月には苦しいが編集者は納得してくれた。ふと、目線が違う所を向く。
何か気になるのだろうと皐月もそこに目線を向ける。
「いえ、動物を飼っているんですか?」
「え、えぇ。」
「そうですか。」
「?」
そこにはアリアがたべていたごはん皿と飲み水。
普通に考えればわかるが、
「同居人が、時々来る猫に餌を与えていまして。」
「はぁ。」
「けど、あげる量が多すぎて。」
「……はぁ。」
どうやら愚痴こぼしだ、話す姿は心配なのか、それとも親として言っているのだろうか分らないが、自分からしてみるととてもうらやましいと思えるとこだと思う皐月。そのことに対して何も言えなかった。
昼食を終え編集者は家を後にする。
「申し訳ありませんでした。」
靴を履きながら皐月にお礼を言う。
「いえ、」
皐月も返すように言う。久しぶりに二人で食事したのが嬉しいのか皐月の顔は微笑んでいた。