プロローグ
今から話すのは俺と猫の話だ。
まぁ、身の上話と言ったところだ。
「私の家に来ないか?」
「……」
仕事していた場所で、酔ったおっさんにそういわれた。
「いいぜ。」
好奇心で、誘いにのってしまった。
が
何もないまま……
「ここに住まないか?」
などと言われ、どいうわけか、居座っている。
彼に理由を聞くが、
「ただの気まぐれだよ。」
と答えるだけ……
ニャー
「ん?なんだい」
あ、そうだ。忘れていた。ちなみに俺たちの足元にいるのが、話に出てくる黒いキジ猫だ。
ニャ?
「……何でもねぇよ。」
ニャ!
こいつと会ったのは大雨の帰り道。
その日はいつもと違う道を通って帰った。
ミー
か細い声が聞こえた。そこには大きな段ボール箱の中には一匹の小さな猫。
母親か、人間に捨てられてしまい、今にも死にそうな体で声を出していた。
「うちに来るか?」
俺はそう言いながら、この猫を連れて帰った。
なんとなく今、俺はこいつ、俺を助けてくれた、橘の気持ちがわかった気がしたのは
いつだったか忘れた。
「ただの気まぐれさ。」