−第3話−進むべき道
−第3話−進むべき道
−理由は今から説明する−
そう言って、校長は語り始めた。
「…圭一君、1年前の貨物タンカーの座礁・沈没事故は知っているな?」
校長はそう言った。
貨物タンカーの座礁・沈没事故か、俺が高1の時だった…
一隻のタンカーが、日本を出港して東南アジアに向かう途中に座礁して沈没した…
死亡者100名、行方不明者87名、生存者0名。行方不明者の捜索は打ち切り、全員死亡とのことだった…
その船には俺の親父も乗ってた。
俺の親父は貿易関係の仕事をしていたらしい。
それで、親父はよく外国に出張してた。
その時たまたま乗り合わせたのがその船だったらしい…そして、運悪く沈没した…
くっ!、知ってるもなにも、その事故のせいで俺の親父は死んだんだ!!
「……何でそんなこと聞くんですか?知ってるに決まってるでしょ…親父は、その事故で死んだんだ。」
なぜ校長がそんなことを言うのか解らなかった。
「すまないな、嫌な記憶を思い出させてしまって。しかしな、その事故は"事故ではない"んだ。」
校長が何を言っているのか解らなかった。
「え、あ、あの、事故じゃないってどういうことですか。」
「あぁ、実はな、あの事故は事件だったんだ。実は、あのタンカーは爆破されたんだ。
それで、国民が混乱するのを防ぐため、国は事故に偽装したんだ。
いや、それ以前に、貨物タンカーというのも偽装なんだ。あの船は国防軍の輸送船なんだ。そして、国防軍の機密データを積んでいた。だから国は、急いでデータの回収に向かった。しかし、当然ながらデータは無く、乗組員は全員死亡。そこで、君のお父さんも…
その後、事件の捜査が始まった。そして、事件の解明が進むと共に、ある組織が捜査線上に浮かび上がった。その組織は、国際手配犯が率いるテロ組織だった。
強盗、殺人、誘拐、人身売買、金さえ貰えばなんでもする奴らだ。
これが昨年起こった事故の真相だ。
この組織をずっと追いかけているんだが、なかなか尻尾を出さない。
そこでだ、君達にはこの組織の捜索・確保あるいは殺害を頼みたい。
とても危険な任務だ、強制はしない。
引き受けるものは残れ…」
校長はそう言って、深く目を閉じた。
一気に話されたから、整理がつかない。
まず、タンカーは偽装、事故も実は爆破事件だった。そして親父は俺と同じ国防軍だった。そして、爆発に巻き込まれて死んだ。
で、その捜査を俺たちにしろと。
「ちょっと待ってください。
なんで、俺が選ばれたんですか。」
そうだ、俺以外の奴らは、バカ侍を抜いて成績優秀だ。戦闘能力だってそうだ、俺は中の下くらいだ…俺以外は相当強いらしい。
なのに、なぜその中に俺が選ばれた?
校長は目を開き、話し始めた。
「君が、桐生君の息子だからだ。
圭一君、君は事件に出会す度に胸が焼けるように熱くはならないか、そして、気が遠のいて、ふと気付くと事件が解決している。なんてことは?」
「確かに、熱くはなりますけど、そのあとのことは、特にないです。」
朝もそれで少し苦しかった。
「そうか、まだ未完成ということか…だが胸が熱くなるということは…ふむ…やはりそうか。」
全然意味がわからない。
「えっと…どういうことですか?」
「あぁ、すまない一人で喋っていた。
君は胸が熱くなると言ったな。その症状は君のお父さんにもあったんだ。しかし、お父さんの場合は違って、その後に気を失ってしまうということだ。そして気づいた時には、犯人を倒して、事件を解決している。これが、お父さんの場合だ。だが、君は胸が熱くなるだけだ。ということはまだ何か能力がある可能性があるということだ。そこで君をチームに誘ったんだ。」
そうなのか、親父にも…
「よし、もう一度聞くぞ。
チームに参加するものは残れ、危険な任務だ、強制はしない。」
部屋を出て行くものは誰もいなかった。
「全員参加でいいんだな…」
校長が言った。
少なくとも俺は逃げ出す気はない…いや、逃げない。俺は誓い、皆を見渡す。
皆も真剣な表情でそこを動く気はないようだ。
「よし、皆、頑張ってくれ!!」校長がそう言う。と同時にすごい勢いで誰かが、部屋に入ってきた。
。
ん、あの人は情報科の岸田先生だ、こんなに急いでどうしたんだ。
「たっ、大変です。西南西の方角30kmの地点から未確認の攻撃ヘリの大編隊が接近中です!、識別信号は味方じゃありません!!」
なに!?30kmだと?どうやって日本のレーダー網をくぐり抜けたっていうんだ…
そう思った瞬間…
ダァァァン!という耳をつんざくような異様な音に、全員が一瞬恐怖する。
しかし、俺らには、そんなことすら思っている暇なんてない。迅速な対応、それが第一だ。
「クソッ!おい、須藤さっさと対空砲まで行くぞ!」そう言いながら階段を駆け上がる。
「お、おう、分かった!!ついて来てくれ。」
須藤に先導してもらう。
「わ、私達も行こう!!戦わなきゃ!」
そう階段の下の方で聞こえた。
今は、下を気にしている場合じゃない。
校長室を出て、陸上部の武器庫に向かう。
廊下を走っていたら銃声が聞こえて来た…
もう戦闘が始まってんのか。
曲がりと階段を合わせて廊下を100mほど走った。
よしやっとついた。武器庫。