第5談
集会後、彼女たちはマックドナルドハンバーガーショップ・黄泉泉店にて集まり、ひとつの話題で盛り上がっている。敷枝、獅子、そして敷枝の親友・音刈鎖、獅子の友人・月島秀十郎の4人だ。その中の一人、月島秀十郎は2年4組の中にある3つのグループの中心的存在だ。不知火・晶子の「上層グループ」、彼らに買収された者の「下層グループ」、そして秀十郎中心の「反抗グループ」。ほとんどが「上層」「下層」にわかれるが、彼ら含め約6人がこのグループに属する。しかし、2年4組にはどこにも属さない3人が居た。故・巾足絹糸、現在の虐めのターゲット・慾葦獏、そして影が薄く、教室にいるかどうかもわからない野蠍刃金の3人(2人)だ。彼らは「反抗グループ」に属そうとせず、彼らに守られようとすると、逆にそれに「反抗」し、自ら「孤独」を選んだのだった。
「今回の殺人事件の犯人、結局は誰なんだろう?」
秀十郎がシェイクを飲みながら3人に言った。
「一番怪しいのは、獏じゃない? 今のところ一番殺害動機を持っているし、不知火たちに「復讐」しようとするのは正しいんじゃないの?」
今度は鎖がフライドポテトを口に放り込みながら言う。
「俺は……ちょっと待った、メールが来た。」
獅子はそういうと、着信音のなる携帯を取り出し、メールを確認した。その内容を見て、獅子は顔を引きつらせた。
「おい……嘘だろ……!?」
携帯を3人の目の前に見せる。
【送信者:涌繰吹宋 受信時刻:13時22分 件名:事件 本文:やばい。学校で先生と3人が殺された。】
「今度は、先生まで!?」
敷枝が声を上げる。周りはにぎやかなので彼女の声は消えた。
「当然だろ。あいつ、僕が「巾足さんが虐められている」といって証拠見せたら、それを無かった事にしようとするような典型的な屑教師だぜ? 自業自得だろ。ほかの3人も、不知火のグループだろ? これでわかった。完全に犯人は、このクラスの「下層」か、「反抗」か「無所属」の誰かに絞られたな。」
「私たちのグループと、獏君たちってならわかるけど、何で「下層」まで?」
敷枝が、獅子の携帯のメールを眺めながら秀十郎に言う。
「あいつらは「故意」で仲間になっているんじゃなくて、「無理」に、過去の失敗をネタに脅して、踊らされているんだ。もしかしたら、何かをきっかけに、不知火に「復讐」しようとする奴も居るかもしれないだろ?」
「た、確かに……」
敷枝は過去を思い返した。最近、不知火に恥をかかされた誰かを。
―――始業式4日前
その日はいつもどおり平和な1日だった。はずだった。ことは5時間目。担当教師が急に休んだため、その時間は自習となっていた。その時間を利用して不知火は絹糸を拷問しようとしていた。爪剥し、鞭、大量の針、脱色洗剤。どこから仕入れたのかは知らないがとにかく、それを使って楽しもうとしていた。「下層」の一人、佐々木小五郎 は、ほかの教師が来ないよう教室の外で見回りを任されていた。しかし、とあるミスで、不知火の行為が発覚しそうになり、大声で彼を罵倒し始めた。
「ふざけるんじゃないぞこの童貞野郎! お前のせいで俺は危うく退学になるところだったんだよ。使えるから使ってやったのに、使えないクズが! 死ね! 一生俺の前に現れるな。
そういえば、お前中学の時の事ばらしてもいいのか? ばらされたいか?」
「そ、それだけは……」
「皆聞け! こいつはなあ、中学時代カッコつけて俺に喧嘩を挑んできた。『お前の行為は見るに耐えない」とかほざいてたけど、俺が一瞬でボコッてやったよ。それで、彼女に振られたんだぜ、「ダサいあんたと一緒にいる気はない」っつって! それで許してほしかったら俺の靴なめてトイレの床なめろって言ったらマジでやりやがった! いいか、俺に逆らおうなんて考えるなよ? もし逆らったら……」
不知火はそういいながら小五郎を思いっきり殴った。歯が数本飛んだ。
「死ね、クズ」
不知火はずっと小五郎を殴り続けた。次の日、彼は学校に来なくなった。
「佐々木くんが?」
「わからないが、可能性はあるな」
秀十郎が言う。
「片っ端から調べよう。まずは、学校の裏サイトからだ。」
黄泉泉高校――
「警部、お疲れ様です。」
一人の警官がパトカーから降りた男性に言った。
「まったく、兵庫の全クラスメイト失踪事件で忙しいのに、今度は地元で事件か。まったく、身体が持たないよ。よりによって娘の学校とわな。」
「仕方ないでしょう、苦界警部。警察とはそういうものですよ。」
「そうだな、魔艫君。それで、娘は無事か?」
「はい。」
「良かった。それで殺害された生徒の内訳は?」
苦界暮時允大阪府警警部は部下・魔艫履仮からすべての経緯を聞いた。ふと気が付いた。
「まるで、10年前の事件と同じじゃないか―――――。」