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私と彼女の13日の地獄  作者: 詩機吏 架恋
殺戮
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第3談

【7月30日月曜日 午後6時44分】

 二人が人影に殺害されて少し時間がたった。妖光のことが気になる彼の彼女・夢造華金むぞうかかねが敷枝に電話をかけてきた。

「敷枝?あんた妖光のことしらない?」

「え?今日は一切あってないけど、どうかした?」

「さっきからずっと、連絡がとれないのよ。心配で心配で……」

「多分ご飯とか食べてるんじゃない?」

「それならいいんだけど……」

「何かあったら連絡するね」

 敷枝が携帯の通話を切る。「ツーツー」と無機質な音がむなしく部屋を駆け巡る。敷枝に眠気が襲う。そして彼女はそのまま寝てしまっていた。


 その頃華金は妖光が最後に居た獏の家へ向かっていた。息を切らしながらも、自分の恋人の下へ向かおうとしていた。「ぐちゃり」と気味の悪い音が鳴る。おそるおそる、華金は自分の踏んだ物を確認した。それは、身体が裂かれ、身体の内部にしまわれていたはずであった血と臓器。その持ち主は華金が探していた人物・那珂鴨妖光だった。

「え……よう、こう?」

 華金は自分の前にある惨状をまったく理解できなかった。はじめてみる、人間の死体。肢体が裂かれてある死体。まさか、自分の恋人がこのようなの姿態で見つかるとは思っていなかった。冗談っぽくジョークを言いながら現れると思っていた。しかしその希望は一瞬にして破壊された。

「い、いやあああああああああああああああ!!!!!」

華金の叫び声は絶望・悲壮・憤怒が織り交じっていた。


「い、いやあああああああああああああああ!!!!!」

 時を同じくして、華金と同じ叫び声を上げながら、敷枝は目を覚ました。夜中に見た悪夢とは違った、現実味のある悪夢を見たのだ。

「いまの、一体?」

 敷枝の見た夢とは、自分の幼馴染が肉を引き裂かれて死ぬ夢だった。それだけではない。自分も包丁で肉を貫かれ、苦しみながら死ぬ。この上なく、怖い夢いや、悪夢だった。

「敷枝~ご飯よ、降りてきなさい」

 悪夢の恐怖に浸っている敷枝を、彼女の母苦界蒔絵くがいまきえがよびだした。

「は、ハイ、今行く」

 敷枝は携帯を持つと、部屋から出て階段を下りていった。すると、町中にサイレンがなっていることに気づく。

「お母さん、何かあったの?」

「そうそうさっきね、隣の奥さんから聞いたんだけど、2人の高校生が殺されたってきいたのよ。あんたも気をつけなさいよ」

「高校生……?」

 いやな予感がした。すぐさま、華金に電話を書ける。

「もしもし?華金?だいじょ……」

 敷枝が言い切る前に、返答が帰ってきた。

「ねえ……妖光が死んじゃった。どうしたらいい?ねえ、ねえ?」

 明らかにいつもの華金ではなかった。強気な華金の精神が完全に崩れ去り、ただ絶望しかない人形みたいな人間になっていた。

「君、今から聞きたいことがあるからちょっと付いてきてくれるかな?」

 電話の向こうから警官と思われる女性の声が聞こえた。

「私はやってない私はやってない私はやってない私はやってない」

 無機質な声が聞こえてくる。普通ではない。完全に壊れた。

「もう一人、排除」

 携帯から、黒い声が聞こえた。華金ではない。誰かわからない。「ブチ」と携帯の電話が切れた。


 食事を終わらせると、敷枝は自分の部屋に戻り、幼馴染に電話をした。幼馴染とは、彼女が幼稚園の頃からずっと一緒に居る、隣の家に住む男子生徒・肉喰獅子ししはみししのことである。別に付き合ってるだの、愛し合ってるだのとそういうものでなく、2人とも、『普通に仲がいい友人』というのが2人の共通認識だった。

 3コール目で獅子が電話に出た。

「獅子…大丈夫?」

「いきなり何?俺の成績のことか?」

「違う。さっきさ、妖光君が死んだって聞いて……」

「そのことか、自業自得だろ?人を虐めてその罰を受けた・ってことじゃない?」

「違う。夢でさ、獅子が引き裂かれる夢見ちゃってさ」

「縁起でもねえこというなよ!こわいじゃんか……」

「はは、ごめんごめん。ありがと、元気でたよ」

「そりゃどおも~」

 通話が切られた。それと同時に、メールの受信音が響く。敷枝はメールの受信ボックスを開き、確認する。

【送信者:学校 受信時刻:21時34分 件名:明日の緊急登校について 本文:明日、緊急集会を行うため、生徒は10時に各教室に登校してください。欠席の場合はなるべく早く自分の担任へ報告してください。】

「そりゃこんなんだから、収集かかるよね……」


伐誤不知火の家では、不知火が部屋で、晶子と連絡を取り合っていた。

「聞いたか? 妖光と端亜が殺された」

「嘘でしょ!? なんでまた」

「俺が知るかよ! だから明日の集会のときに、痛めつけてやるんだ。」

「誰を?」

「あいつに決まってるじゃねえか」

「獏?」

「そうだ。あいつが二人を殺したに決まってる。ぜってぇぶっ殺してやる。晶子、おまえほかの奴らに伝えとけ。『獏が着たらすぐ捕まえて、離すな』ってな」

「わかった。それじゃ、また明日」

「じゃあな」

不知火は怒っていた。自分の『手駒』を殺されたことによって。テレビから、アナウンサーの声が聞こえる。


『今日夕方、黄泉泉市にて二人の男子高校生が死亡しているのが発見されました。警察は殺人事件として、調査を進めています。現場には、被害者の血によって壁に文章が書かれていました。内容は『赤い白骨、白い血液、黒い頭蓋、一人が死ねばまた一人が死ぬ。世界は無必要。驕る者は栄える後崩れ去る。再び死が、訪れる』と、殺害予告を思わせる文章で、警察も……』


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