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私と彼女の13日の地獄  作者: 詩機吏 架恋
殺戮
4/15

第2談

【7月30日月曜日 午後5時34分】

「な……なんだよ……これ」

 目線を妖光の前に向けると人影がいた。きている白いマントには返り血がこれでもかというほど滴っていた。


一体何がおきたのか。話、いや時間を少し巻き戻してみよう。


 まず一人、2年4組出席番号24番那珂鴫妖光なかしぎようこうは灼熱としていた虫篭の様な街を友人である哉気端亜かなきはしあとともに談笑しながら闊歩していた。言うまでもなくこの二人は普通な少女・死に至った巾足絹糸を蔑んでいたグループの一部である。不知火に脅されて仲間のうちになっていたというならば擁護できたはずだが、この二人は完全に自ら進んで、人間を壊していたのである。じわじわとすみずみまで。

 そんな二人は彼女の死を悼まず悔やまず、新たな虐めのターゲット・出席番号31番慾葦獏よくあしばくを再び、彼女と同じように、いや、まったく同じくじわじわと、一瞬で壊さず、一部一部まるで癌見たく少年を『破壊』していた。

 二人は先ほどまで死ぬほど遊んだゲームセンターから追い出された。何を隠そう、クレーンゲーム機に手を突っ込み、彼女に揚げるぬいぐるみをとろうとしたのが、そこにいた店員に発覚し、問答無用で追い出されたのであった。愚痴をこぼしながら二人はすぐさま携帯を自分のポケットから取り出すと、メールを打ち始めた。

 薄汚い路地に差し掛かると、携帯電話をポケットにしまい、大声でしゃべり始めた。

「今日さ、アイツの家にバルサン炊いてやろうぜ。不知火さんからの命令なんだわ」

「いいジャンいいじゃん。俺持ってくわ。はははははは!」

 不知火の命令により、彼ら二人は獏の家へ向かうことを決定した。そのことで会話は今まで以上に盛りあがっていた。彼らは家に放置されていたバルサンを手に取ると、そのまま獏の家へ向かった。

 慾葦獏の住む家は豪華というのには豪華すぎず、みすぼらしいというにはみすぼらしくない、一階建ての築22年・古くも新しくもない家に住んでいた。彼らの虐めのターゲットになってしまったのは、不知火の脅しに屈せず、絹糸を守ろうとしていたからだ。そんな勇気を不知火たちはよくと思わず、邪魔だと思い、可憐な少女の死後ターゲットにされた。

 彼らは獏の家に着くと、普段からポケットに入れておいたライターを取り出した。ふたを開け、火をつけようとした。突然、妖光の声が消えた。効果音も、声も消えた。ライターの火の音も消えた。突然の出来事に目撃者(獏の家にバルサンを炊いている姿)がいないか見張っていた端亜が後ろを振り向くと、そこにはいつもの妖光がいた。なんてことがあるはずがない。普通に当たり前に、妖光の頭に刃渡り30cmの刃物が刺されていた。

 自業自得とでも言おうか。まさに殺されるべきして殺されたのである。罪を起こしたものがもっとも大きな罰を科されて死ぬのだ。では、時間を元に戻そう。


「お……お前が!お前が妖光を!」

「……」

 人影は端亜の声を聞いているのか聞いていないのか、答えようとはしなかった。妖光の頭から包丁を抜き取ると(見ている限りでは『抜き取る』よりも頭ごと『捥ぎ取る』のほうがあっているかもしれない)、その包丁を端亜に向けた。小さな肉片と真っ赤に染まった血がポタポタと落ちる。

「なんだよ……俺を、俺を殺すってか!? やれるものならやってみろやあ!!」

 実際に目の前で人が殺されているのに、『やれるものならやってみろ』なんて言葉は通用しない。普通に、殺されるだけである。その通りに人影は包丁を端亜に突き刺し、そのまま頭に向けて身体を裂いた。

 彼の脳内に走馬灯が映し出される。

 俺、死ぬんだ……簡単に人間って死ぬんだな。まだ……死にたくない……しに……

 一瞬にして端亜は絶命し、息絶えた。

「不要物……処理」

 小さな声をはき捨てると、その者はその場から消え去った。残された遺体は見るも無残にグロテスクに成っていた。まだ暖かい臓器や肉片が道を赤く染めた。このことが発覚するのは数時間後のことである。



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