決戦のとき
意外に時間というものは、早く過ぎるものです…。
一年で一番陽気な日が降り注ぐこの日、剣使いの国では毎年剣行祭というもの行われる。これは、国で一番の剣使いを決めるもので、一対一のトーナメント戦で競われる。参加規制はなく、王族から小さな子供まで出られるものだ。競技は王都にある競技場で行われるが、街はお祭りムードとなり、無礼講の一週間となる。そんな剣行祭始まって二日目の今日、観客の一番の目玉は、クリストファー王子と隣国から留学中のアルフォンス王子の対戦であろう。
客席は既に満席で、観客の熱気で会場は包まれている。
「クリス様…。」
会場の様子を見ていたクリスは、その何か言いたげな言葉に振り向いた。
「なんだ?」
その先には、いつも静かにクリスを見守ってきたジェームズ。そんな彼が何か言いたげな顔をしている。
「言いたいことがあるなら言え。」
「いえ、なんでも御座いません。いってらっしゃいませ。」
めったにみない彼の態度に首を傾げつつ、クリスは行ってくると告げて競技場に足を踏み入れた。
至ってシンプルな白服を身にまとったクリスを迎えたのは、地響きする程の歓声。それに手を振りながら、中央へと進む。クリスが中央についたのを見計らい、向かい側の扉からアルフォンスが登場してくる。二人の登場に会場は一段と熱気を帯びていく。
剣使いの国代表のクリストファー王子は、月夜に輝く金色の髪を後頭部で高く一つにくくり上げ、淡い紫色の瞳が戦いの喜びに満ち溢れている。
対する魔術師の国からは、アルフォンス王子。綿毛のような金髪に、暁色の瞳。その容姿に合わせた紅の上着は、大層、彼に似合っている。
さぁ。いざ、決戦のときである。