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攻略組が帰った後から始まるVRMMO 〜イベントに遅れた俺だけが、誰にも拾われなかったユニークを見つける〜   作者: 桜めんと
第六章『いつもと違う道』

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第91話 イベント後のルガート村

 

 《生息域調査クエスト》が終了した週末の日曜日。

 公式サイトに次回アップデートの予告が掲載された。今回は結構大きめのアップデートになるらしい。


―――――

【次回アップデート予告①】

◎新機能《公式販売所》


プレイヤー間取引を補助する新機能として《公式販売所》を追加予定です。

登録された装備や素材を地域を問わず検索・購入できるようになります。

出品時および取引成立時には所定の手数料が発生します。

従来の露店形式での販売も引き続き利用可能です。


※詳細な利用方法、手数料等については後日公開予定のお知らせをご確認ください。

―――――


「販売所か」


 CROは販売についてもリアルさを優先していたが、最近のリニューアルアップデートを見ると便利さとの共存も重視するようになっている気がする。

 どこからでも装備や素材を探せる仕組みが追加されるのはかなり便利そうだ。

 ただ、露店そのものがなくなるわけではないと思う。

 販売所では手数料も取られるらしい。

 VRMMOでは直接並べている装備を手に取って眺めたり、店主や販売プレイヤーと話したりすることが好きな俺のようなプレイヤーもいることだろう。


―――――

【次回アップデート予告②】

◎初期村リニューアルアップデート第二弾


以下の初期村および周辺エリアを対象としたリニューアルを実施予定です。


・ビーストフォーク初期村《ルガート村》のリニューアル

・ダークエルフ初期村《ヴェスター村》のリニューアル

・対象となる初期村周辺エリアの一部更新

・一部NPC配置および案内表示の調整

・その他、軽微な不具合修正


※詳細は後日公開予定のお知らせをご確認ください。

―――――


「今度はルガート村とヴェスター村か」


 以前のリニューアルでは《ベルカ村》と《シルヴェイル村》が対象になった。

 ベルカ村が変わる前に見ておこうと思って訪れたことが古い木橋やマーロの記録へ繋がるきっかけにもなった。

 今回はビーストフォークとダークエルフの初期村らしい。

 ルガート村には《生息域調査クエスト》で何度も行ったばかりだ。

 だからこそ、どこが変わるのか気になるところだ。

 そして、今回のアップデート予告にはもう一つ大きな追加内容があった。


―――――

【次回アップデート予告③】

◎新システム《ケレンシア》


新たな生物交流システム《ケレンシア》を追加予定です。

CRO各地に生息する一部の生物について、卵や幼体など特定の状態から関わることで、これまでとは異なる交流が可能になります。

対象となる生物はプレイヤーの所有物とはならず、それぞれの性質や育った環境、プレイヤーとの過ごし方によって、その後の行動や居場所が変化する場合があります。

また、《ケレンシア》実装に伴い、対象となる卵など一部アイテムにレアリティ情報が追加表示されます。


※詳細は後日公開予定のお知らせをご確認ください。

―――――


「え……卵?」


 そこだけもう一度読む。

 卵ならすでに持っている。

 星月草原にあった古い打ち上げ台。

 そこに作られていた巣から、俺とミナトとYuruが一つずつ持ち帰ったもの。


 今までは用途も分からず、俺もインベントリに入れたままになっている。

 卵自体に何の変化もない。

 ミナトやYuruたちと何度かやりとりしたが、みんな同じらしい。

 ただ、それ以上に気になったのは別の部分だった。


 ――対象となる生物はプレイヤーの所有物とはならない。


 交流できる。

 でも、手に入るわけではないということなのだろうか。

 育った環境や一緒に過ごした時間によって、行動だけでなく居場所まで変わる――?


 説明を読む限り、捕まえた生物をペットとして連れ歩くだけの単純な仕組みではないらしい。


「CROっぽいな」


 その生物がどこで暮らし、プレイヤーとどう関わっていくのか。

 そこまで含めたシステムなのだろう。

 公式掲示板の雑談スレッドを開くと、案の定すでにかなり盛りあがっていた。


―――――

『要はペット実装ってことですか?』

『倉庫に卵ある』

『待って、所有物にならないって書いてあるよ』

『居場所が変わるってどういうことだろう……?』

―――――


 詳しい仕様はまだ分からない。

 でも、思い当たることが一つあった。

 砂門都市カルダでロヴェルが話していたことだ。


『――だから今後のアップデートでもっと多くのプレイヤーが使える独立した仕組みとして追加されるんじゃないかと思っているんだ』


 獣と出会い、世話をし、共に移動するという遊び方。

 ロヴェルの予想は実はかなり近かったのかもしれない。


―――――

【次回定期メンテナンスについて】

上記アップデートは10日後の定期メンテナンスにて実施予定です。

アップデート作業に伴い、当日のメンテナンス時間は通常より延長する予定です。


※実施時間の詳細は後日お知らせいたします。

―――――



◇◆◇◆◇



 その日の夜。

 俺は早速ルガート村へ来ていた。

 《生息域調査クエスト》が終わった後、ビーストフォークの初期村がどうなったのか気になっていたというのもある。

 それに次のリニューアル対象になったと知れば、変わる前にもう一度見ておきたくなるものだろう。


 イベント中は何度も来ていたけど、調査や村の警戒で慌ただしく、ゆっくり見て回る余裕はほとんどなかった。

 今なら村の中だけじゃなく、その周辺までのんびり見て回れそうだ。


 イベント中は壊れた柵の修理や村周辺の警戒で、NPCたちも慌ただしく動いていた。

 今は柵の修理もかなり進み、あのときの騒がしさはもうほとんど残っていない。


「当たり前だけど、見ていない間にも続いていくんだな」


 壊れていた場所が直されている一方で、新しく補強された木材や地面に残った作業跡もあった。

 イベント前とまったく同じ状態へ戻ったわけではないらしい。


 イベントが終わった後の場所をこうやってゆっくり歩くのは好きだ。


 一通り村を見て回った後、村の周辺も歩いてみることにした。

 ルガート村の周辺まで足を伸ばせば、また何か知らないものが見つかるかもしれない。


 村を出てしばらくしたところで、街道の先の草むらが大きく揺れた。



 ――何かいる。



 俺は足を止め、背中のショートボウへ手を伸ばした。

 この辺りのMOBなら苦戦する相手ではないが、姿も見えないまま間合いに入られるのも面倒だ。


 そう瞬間――草の間から黒褐色の狼が姿を現した。


 頭から首、背中まで長い毛に覆われている。

 四本の脚を地面につけ、体を低くしたまま斜面を進んでいた。


 ――この辺りにこんなMOBいるんだ。


 そんなことを思いながらも他にも隠れていないか《探知》を使おうとして、その頭上に浮かんでいる表示に気がついた。


「え……プレイヤー?」


 相手はまだこちらに気づいていない。

 両手と両足を地面につけたまま、ゆっくり斜面を進んでいる。

 獣化率は見ただけでは分からないが、ここまで獣に近い姿なら相当高いはずだ。


 もしかすると99%――?

 ただ、その動きには違和感があった。


 右手と右足が同時に前へ出たり――。

 体が大きく傾いたり――。

 そして、そのまま草の中へ転がった。


「――痛っ」


 獣はすぐに起き上がると周囲を確認する。

 俺は反射的に街道脇の木陰へ身を寄せた。


 別に隠れる必要はない。

 ないのだが、今は見つからない方がいい気がした。

 その獣はすっと立ち上がり、二足歩行で転んだ場所まで戻ってもう一度四つん這いになった。

 かなり怖い。


「……前脚だけを出すんじゃない。肩から……重心ももう少し前だね」


 ぶつぶつと独り言を口にしながら、今度はゆっくり進む。

 右手、左足。

 左手、右足。

 さっきより滑らかになった。

 数歩進んだところで、長い尾が低木の枝に引っかかる。


「なるほど。耳と尾も含めて動かないとだね」


 俺は以前ルガート村で聞いた「獣化率99%」の話を思い出していた。


『――残りの1%を動きで埋めているんだ』


 そういう人をロヴェルは『努力家だ』と言っていた。

 目の前の黒い狼が再び四足歩行で走り始める。

 ぎこちない。

 でも、さっきより明らかに獣らしくなっていた。

 十歩ほど進んだところで立ち止まり、自分の両手を見ている。


「着地のときに指を開く方が自然か……。これは実際にやってみないと分からないね」


 俺は声を出さないようにした。

 気づかないふりをしたかったが、聞き覚えのある声や話し方だった。


『――サブキャラはもちろんビーストフォークだが』


 頭に浮かぶ人は一人しかいなかった。


「次は下り坂だな。四足ならこっちの方が速いはずだ」


 獣が街道から外れた斜面へ向かう。

 一歩。

 二歩。

 三歩目。

 前脚が滑った。


「うわぁっ――」


 黒褐色の体が斜面を転がり、そのまま草むらの奥へ消える。

 少し遅れて枝が何本か折れる音がした。


「……まだ練習が必要だな」


 無事らしい。

 俺はショートボウから手を離し、草むらから起き上がったプレイヤーの頭上をもう一度見る。


 ――Lovel。


「……」


 見なかったことにしよう。


 今日発表された《ケレンシア》のことを思い出す。

 ロヴェルは獣ともっと深く関われる仕組みをずっと待っていた。

 でも、どうやら実装を待っているだけではなかったらしい。


 イベントが終わった後の世界にはまだまだ知らないものは残っている。

 次にロヴェルと会っても今日のことには触れないでおこう。


 残りの1%を埋め終えて話してくれるまでは――。

 


 

 

彼は本物でした。

 

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― 新着の感想 ―
ナニも見ていないし聞いてない。 抱え込んだ情報は即座に廃棄するべしΩ\ζ°)チーン
販売所システムはいいですねぇ 何故が装備ってNPCに売ると安くなる時ありますし、使わなくなった装備を身内に回したり売ったりギルメンに渡すのも限界はありますし……まあそのうち第2倉庫みたいな扱いになるん…
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 まるで不審者に遭遇したかのよう
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