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攻略組が帰った後から始まるVRMMO 〜イベントに遅れた俺だけが、誰にも拾われなかったユニークを見つける〜   作者: 桜めんと
第六章『いつもと違う道』

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第83話 三つの支援

 

『左後脚、そのまま固定で!』


 潜るモーションの起点になる左後脚には前衛たちが張り付いている。その後ろ脚に体重が乗るたびに、剣や槍、槌が一斉に叩き込まれる。

 正面では盾職たちが残った前脚と頭部を同時に押さえ込んでいた。


「まだ来るぞ!」


 ドルガーレンが砂を掘るために前脚を押し下げる。

 大盾を構えた一人が弾かれたが、すぐに別の盾職がその場所へ入った。


「こっちで持つ!」


 後方から回復の光が飛ぶ。

 シグエルも左後脚の付け根へ剣を通し、踏ん張ろうとする瞬間を狙って動きを斬り崩していた。


「……潜るのを止められてますね」


 俺の隣でロヴェルが頷いた。


「ああ。左後脚を踏み込めないとうまく体を沈められないみたいだね」


―――――

《探索支援》の成果が共同討伐へ反映されました。

―――――


 突然視界に表示が出た。

 探索した情報からこの状況を引き起こせた――ということだろうか。

 ドルガーレンが尾を激しく叩きつけた反動で巨体が大きく揺れる。


「来るぞ!」


 シグエルは尾が地面を薙ぐ直前に、外殻を蹴って背中へ跳び上がった。

 大きく揺れる巨体の上を五、六回跳び、反対側の右肩付近まで一気に駆け抜ける。


「――《アキュラスティング》」


 《灰冠竜の穿牙剣》が露出していた黒い表皮へ背中側から深く突き刺した。


「今だ、押せ!」


 盾職たちが一本だけの前脚をさらに押し返す。

 左後脚には前衛たちが再び食らいつき、踏み込ませない。

 地中へ逃げられないまま、ドルガーレンのHPが少しずつ削られていった。

 《Fangline》の攻略メンバーたちも攻撃を重ねていく。


『色の薄いところから崩して。そのまま地上で削り切ろう』


 青蘭の指揮チャットが飛ぶ。

 左右の肩や背中、尾に残っているまだ完全に硬くなっていない外殻へ攻撃が集まった。


 シグエルが大きく張り出した外殻の上へ一気に跳び上がる。

 一突きで薄い外殻を砕き、着地する前に体をひねってその隣へもう一撃。

 さらに次の一枚へ移っていく。

 周囲ではすでに槍や斧が弾かれ始めているのに、シグエルが通った場所だけは次々と灰色の外殻が砕け、黒い表皮が露出していく。


「露出したところへ集中!」


 攻略組が一気に攻撃を重ねる。

 シグエルが作った傷に槍が入り、その横を斧が砕く。後方から矢と魔法も飛び込んだ。

 反対側では《Fangline》のメンバーたちも張り出した外殻の隙間を狙って攻撃を重ねている。


 ドルガーレンのHPが三割を切った。

 ――そのとき、誰かの声が上がった。


「外周にMOBが来てるぞ!」


 赤砂の大地の向こうから、ドルガーレンとは別のMOBが姿を現していた。

 後方にいたプレイヤーたちが振り返った。


 距離はまだある。

 その直後、視界に表示が現れた。


―――――

《掃討支援》の成果が共同討伐へ反映されました。

―――――


「外周はこっちで止める!」


 いくつかのパーティが外側へ走り、現れたMOBを迎え撃つ。

 ドルガーレンとの戦闘を続ける前線まで近づかせない。

 さらに視界にもう一つ表示が現れた。


―――――

《護衛支援》の成果が共同討伐へ反映されました。

―――――


 戦場の後方からカルダのNPCらしい兵士たちが走ってくる。

 そのまま外周に集まっていたMOBの方へ向かい、先に戦い始めていたプレイヤーたちと一緒に攻撃に参加している。


「……三つの支援はちゃんと意味があったんですね」


 ロヴェルが小さく笑う。


「ああ。ここに繋がっていたのか」


 俺たちが気づいても、それだけではあの巨体は止められない。

 前脚を押さえる人がいて、後脚へ張り付く人がいて、後方からそれを支える人たちがいる。

 それぞれの役割を担うプレイヤーたちがいたからこそ、見つけた動きを戦略に変えられた。


 ドルガーレンが巨体を低くしようとする。

 だが、左後脚にはすでに攻撃が集まり、赤砂へ伸びた左前脚には大盾がぶつかっていた。

 太い尾が赤砂を大きく薙いだ。


「離れろ!」


 一度下がった盾職たちは尾が通り過ぎるとすぐに前へ戻った。

 シグエルも左後脚へ入り、周囲の前衛たちと一緒に踏み込みを崩す。


「止まったぞ!」


 HPが二割台へ入る。


『ここから押し切るよ! バフを掛け直して使えるスキルは全部だ』


 青蘭の指揮チャットが飛んだ。

 後方からいくつもの光が前線へ伸びる。

 切れていた強化が次々と掛け直され、武器には再び風属性が宿っていった。

 剣士たちがスキルを発動して傷口へ踏み込み、槍が連続で黒い表皮を貫く。

 魔法職たちの詠唱も重なり、ドルガーレンの背中や脇腹で次々と魔法が弾けた。


 左右からスキルの光が重なる。

 《Fangline》のビーストフォークPTも一斉に前に出ていた。


「《スピードツイン》」


 Nanareeの足元から細い青白い光が弾け、両腕と脚へ走った。

 次の瞬間、その動きが一段、二段速くなる。

 張り出した外殻の脇を鋭く抜け、そのまま外殻が露出しているところへ潜り込む。

 右の爪が黒い表皮を裂き、身を翻したときには反対側から左の爪が走っていた。

 一度離れても動きは途切れず、再び露出部位へ飛び込んでいく。


 シグエルが《灰冠竜の穿牙剣》を構え直す。

 その瞬間、足元に淡い光が一度だけ走った。

 視線が露出部位へまっすぐ定まる。

 青蘭が杖をシグエルに向けた。


「シグ、ラストだ。《スピリットオーバー》」


 杖から強い支援の光が弾け、シグエルの全身を包んだ。

 光の粒が腕を伝って《灰冠竜の穿牙剣》へ流れ込み、刀身を包む灰白色の光が一段強くなる。


 シグエルが一気に踏み込んだ。

 鋭い突きが露出した黒い表皮へ入り、刀身が深く沈む。

 突き刺した剣を引き抜く勢いのまま体を捻り、すぐにもう一歩踏み込んだ。

 刃を包んでいた光が切っ先へ一気に収束する。

 引き戻した剣がそのまま二撃目へ繋がった。

 収束した光ごと切っ先が開いた傷へ突き込まれ、さらに深く黒い表皮を抉る。


 ドルガーレンのHPバーが大きく削れた。

 《スピリットオーバー》の光が残る間にもシグエルは敵から離れない。

 周囲からも剣や槍、斧、魔法が次々と重なっていった。

 俺も弓を構え、露出した黒い表皮へ矢を放った。

 そのすぐ横へロヴェルの矢も刺さり、さらに後方から魔法が飛び込んでくる。


 《Astra Regalia》も《Fangline》も、知らないクランも野良パーティも。

 攻撃できる者たちが次々とドルガーレンへ攻撃を重ねていく。


 HPバーが残りわずかになる。

 ドルガーレンがまた左後脚を動かした。

 でも、左側の前衛たちはすでにそこへ入っていた。


「また潜るぞ!」

「後脚を崩せ!」


 槌が左後脚へ叩き込まれ、踏み込みが外へずれた。

 大盾が前脚を押し返す。もう地中へは逃げられない。


『そのまま押し切れ!!』


 戦場に青蘭の声が響いた。


「行けえええ!」


 誰かが叫んだ。

 剣や槍、双爪、矢、魔法。

 残っていたスキルの光まで次々とドルガーレンへ集中する。


 ラストアタックも分からなかった。

 数え切れない攻撃が重なった後、ドルガーレンの動きが止まっていた。

 前脚が赤砂へ落ち、岩盤のような巨大な頭部がゆっくりと下がる。


 巨体を覆う光が強くなり、《鎧蜥ドルガーレン》の体が無数の光の粒子へ崩れていく。

 最初からあった硬い外殻も、潜るたびに形を変えていった外殻も、すべてが光の粒子へ変わっていった。


―――――

《鎧蜥ドルガーレン》を討伐しました。

―――――


 一瞬だけ、荒原が静かになった。

 誰かが武器を下ろす。


「っしゃあああああああっ――!」


 どこからともなく上がった声をきっかけに、歓声が赤砂の大荒原に広がった。

 ドルガーレンがいた場所では最後まで残っていた光の粒子がゆっくりと消えていく。

 さっきまで巨体を押さえていた盾職たちも大盾を下ろし、剣や槍を構えていたプレイヤーたちも動きを止めた。


 やがて光の粒子が消えきると、その場へ大量のアイテムが一気に落ちた。

 外殻の欠片や爪、牙らしき素材。見たことのない貴重そうなものまで混じり、赤砂の上がドロップアイテムで埋まっていく。


「うお、すげえ量……!」

「これ全部ドロップかよ!」

「こんなの、灰冠竜のとき以来じゃね?」

「いや……あのときはもっとあっただろ」


 さっきまで巨大なドルガーレンがいた場所。

 今は山のような戦利品が広がっていた。


 

 


■種族:エルフ

【初期職】

 ├─【前衛見習い】

 ├─【中衛見習い】

 └─【後衛見習い】

    ├─〈エルフ・ヒーラー〉

    │  ├─《ブルームヒーラー》

    │  └─《グロウキュアラー》

    │

    ├─〈エルフ・ウィザード〉

    │  ├─《ウィスプメイジ》

    │  └─《エルダーアルカニスト》

    │

    └─〈エルフ・バッファー〉

        ├─《リーフバッファー》

        └─《スピリットウォーダー》◀青蘭


―――――

◎《スピリットウォーダー》

〈エルフ・バッファー〉から派生する二次職。

《光》や《風》を扱い、味方への属性付与を中心に速度上昇や属性耐性、状態異常への対策などを組み合わせて戦う支援職。

 敵の弱点や戦況に合わせて支援内容を切り替えることを得意とする。


◎《スピリットウォーダー》のLv65スキル:《スピリットオーバー》

味方単体の攻撃性能や防御性能、基礎能力を大幅に上昇させる。

対象に付与されている属性効果を大幅に増幅し、その属性による攻撃性能とスキル威力をさらに上昇させる。

効果時間:約20秒

リキャスト:約20分


―――――

◎《リーフバッファー》

〈エルフ・バッファー〉から派生する二次職の一つ。

味方へ長時間維持する強化を重ね、戦闘中の能力や継戦力を安定して引き上げることを得意とする支援職。

HP持続回復なども扱うが、回復そのものではなく味方が長く高い状態を維持できるよう支えることが特徴。

敵や属性に合わせて支援内容を切り替えてバフする《スピリットウォーダー》に対して、《リーフバッファー》は汎用性に長け、味方への持続型の強化支援を得意とする。



*リーフバッファーは持続回復が伸びるので掲示板ではソロするならこっちとよく言われていますが、他バッファー職でもソロできないことはないです。

*リーフバッファーのLv65スキルは本編に出てきたらまた書きます。

*どちらもバッファー職派生なので、全体の基礎的なバフスキルはずっと伸びていきます。後衛派生でもあるので、遠距離魔法スキルなども伸びますが、ウィザード職のような威力にはなりません。

 このあたりは他種族のバッファー職派生でも同じです。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 掃討支援を完璧にこなしていたら、MOBは現れなかったりします? 討伐おめでとう!主人公のログ収集に何か影響あるかな?
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