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攻略組が帰った後から始まるVRMMO 〜イベントに遅れた俺だけが、誰にも拾われなかったユニークを見つける〜   作者: 桜めんと
第八章『測り残し』

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第120話 一行だけ

 

 あれから数日後。

 私は一人で《パラネス山麓》へ来ていた。

 《一角獣観測記録》は今も私が持っている。

 あの後、改めてビリードさんへ返しに行ったが、反応は予想していた通りだった。


『お前が持っておけ』


 それだけ言われてすぐに返されてしまった。

 そして、ビリードさんの方から『測ってこい』と言われた。

 《北側岩場観測点》やその周辺について、測量図を更新しておいてくれ――という依頼クエストだった。


◆◇◆◇◆


 《東登山口》から古い測量路へ入る。

 先日歩いたばかりの道を進んでいくと、しばらくして木々が途切れた。


 特に迷うことなく《北側岩場観測点》へ出ることができた。

 測量道具を取り出し、三本の石柱を順に測る。二本を基準に現在位置を出し、残る一本でもずれがないことを確認した。


「……うん」


 現在の測量図へ観測点を書き込む。

 同じように周辺も何か所か測っていくと、依頼クエストが完了していた。

 これで今日やろうと思っていたことは終わりだ。

 測量道具をインベントリへ戻して、岩場の方を見る。


 数日前、《岩嶺モノセロス》と戦ったのはこの辺りの岩場だった。

 今は静かだ。

 あのとき返しを引っかけた大岩もそのまま残っていることだろう。


 私は何となく岩場に向かって歩き、あのとき私が登った二つの大岩が見える位置まで来ていた。

 岩肌には何本もの傷が残っている。

 ずっと前についたらしい古い傷があり、そのさらに上にも別の傷があった。

 ただ、討伐の日についた傷だけは、まだ白く削れているだけだった。


「……あのとき――」


 ――力が入らなかった。

 背中の大斧へ一度だけ意識が向く。

 そこで、岩場の奥で何かが揺れた。


「え?」


 反射的に大斧へ手を伸ばす。

 木の陰から小さな影が出てきた。

 細い四本の脚に低い位置の背中。

 頭には短い一本角が伸びている。


「……モノセロス?」


 数日前に見た《岩嶺モノセロス》よりはずっとずっと小さい。


「……の子ども?」


 大斧へ伸ばしていた手が止まった。

 《岩嶺モノセロス》と何か関係があるのか。

 それよりも前からここにいたのか。

 幼体はこちらには気づいていないらしい。

 岩の間をゆっくり歩き、途中で草へ鼻先を寄せる。少し食べてからまた歩き出した。


 私はその場から動けなかった。

 やがて、幼体はあの大岩の近くまで来た。


「あ……」


 短い一本角が岩肌へ向く。

 でも、一番低いところに残っている古い傷にさえ角が届いていない。


「……やっぱり小さい」


 思わず声が漏れた。

 少し距離はあるが、幼体は気にした様子もなく、岩の足元に生えた草を食べ始めていた。


 私はインベントリを開き、測量道具に指をかけた。

 体高くらいならこの位置からでも測れそうだ。

 もう少し近づけば、角の長さも取れるかもしれない。


 気になる。

 測量道具を取り出しかけて、手を止めた。


「でも……今日はいいか」


 自分で言ってから、少しだけ変な感じがした。

 測りたくないわけじゃない。またここにいるなら、次に来たときでもいい。

 今はそんな感じに思えてしまった。


 モノセロスらしき幼体はしばらく草を食べた後、岩場の奥へ歩いていった。

 低い木の陰へ入り、そのまま姿が見えなくなる。


「……そうだ」


 このことを伝えておこう。

 こういうのは好きなはず――。

 私はフレンドリストを開き、先日登録したばかりのフレンドへ短いチャットを送った。


 それから《一角獣観測記録》を取り出す。

 ノートを開き、数日前に自分で書いた《成体時観測》の次の白紙までめくった。

 ペンを出し、分かっていることだけを書く。


―――――

観測地点:北側岩場


北側岩場に小型の一角獣を確認。

詳細不明。

―――――


 そこまで書いて、手を止めた。

 さっき大岩の前に立っていた小さな姿を思い出す。


 あの短い角に返しはまだなかった。

 次に来たときにはどこまで伸びているだろう。

 体ももう少し大きくなっているかもしれない。

 返しもいつか生えるのだろうか。


 今度は測ってみよう。

 そう思ってから、何となくページを戻した。


 何度も見たネモラさんの最後の記録。

 その中の一行が目に留まる。


『半年後に確認』


「……半年は……ちょっと長いかな」


 私は今日書いたページへ戻った。

 今はまだこれだけしか分からない。

 でも、次に来たときには測ってみたい――そう思った。


 ペンを取り直し、今日の記録の一番下に一行だけ書き足した。


―――――

一か月後に確認

―――――

 

 

 

 

 

みなさんいつもありがとうございます。

8章はここでいったん終わりです!

この後はいつものおまけ的な掲示板を挟んで、アップデート後のCRO(9章)へ進みます。


【御礼コーナー】

いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。

みなさんのおかげで頑張れています。


ブックマークがまだの方はもうログインされてない方くらいでしょうか。


ここまで読んでくださっているということはそれだけでもう本当にありがたいのですが、まだの方はブックマークや★などをいただけると大変嬉しいです。


あと、新作短編『25年間一度も死ななかった俺、今日初めてキャラロストした』が、今も短編ランキング『1位』にいました。

こちらも本当にありがとうございます。


これは『まぁとりあえず続けなさい』ということでしょうか……?

簡単なプロットと出したいヒロインたち、ラストまでの大まかな案、やりたいネタはあるのですが……時間がないです。

……じわじわ進めておこうと思います。


それでは9章からは例のあれですね。

いよいよですね!!



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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 受け継いだって感じがしますね。大変良い感じです。
…そういえばちょっと思い出し〈てしまっ〉たのですが、モンハンXXの二つ名モンスターに銀嶺ガムートってのがいましたね… (今更だし、銀嶺と岩嶺の意味を考えるとモノセロスの名前は変えなくても問題ないでしょ…
まだ新作の方を読んで無いですが、短編が2作ともランキングに載るのすごすぎます。 それはそうと、モノセロスが気になりすぎる。 成体のモノセロスが大きく動いてたし、あんまり警戒心がなかったから、子供って…
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