第102話 後日談クエスト
しばらくレムナであったことが頭から離れなかった。
翌日、王都でログインした俺は《灰冠戦役・第七補給隊名簿》を開いて眺めていた。
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ロイ
マーロ
エダ
ルッツ
ノーラ
セイル
―――――
その中のエダの名前に目が止まる。
あの西道はこれから少しずつ変わっていくのだと思う。
「もし俺が行ってなかったら……」
いつかはハルド自身があの道を直そうと動いたかもしれない。
別の誰かが先に西道へ辿り着いた可能性もあるし、しばらく何も変わらなかったかもしれない。
どれが本来の流れだったのかは分からない。
今回は俺が西道へ行ったことで、そこが動き出す時期は少し早まっていた。
CROはゲームだ。
でも、この世界では誰かに起きたことがその人だけで終わらないことがある。
ハルドは今も西道のことを覚えていたし、使われなくなった道には当時の痕跡が残っていた。
「……これが後日談なのか?」
これまでにも《後日談クエスト》は何度かあった。
終わった出来事の後に残っているものを追っていくクエスト。
最初は普通のクエストとは少し違うくらいにしか思っていなかった。
大きな出来事が終わった後、その続きを遊ぶために運営が後日談を用意している。
それだけなら分かりやすい。
でも、エダやハルドのような一人一人に起きたことやその後に残ったものまで、全部最初から一つずつクエストとして用意しているのだろうか。
「……さすがにそこまでやるのか?」
CROならかなり細かいところまで作られていても不思議ではない。
ここまで長く遊んできて、NPCが俺たちの見ていないところでも動いているらしい場面は何度もあった。
今回もそうだった。
西道へ行ったとき、そこにクエストがあるとは知らなかった。
ハルドに頼まれて始めたわけでもない。
道を辿り、昔の話を聞いて、その途中でいきなり《後日談クエスト》が表示された。
普通のクエストならNPCから頼まれたり、何かを調べるよう言われたりして始まる。
でも、《後日談クエスト》は少し違う。
NPCが暮らす中で何かが起きる。
その影響や痕跡が残ったまま時間が進む。
そこへ後からプレイヤーが辿り着いたとき、残っていたものがクエストとして拾われる。
「クエストが先にあるんじゃなくて……起きたことがクエストになる?」
口にしてみると、今まで少し変だと思っていた始まり方にも納得できる気がした。
もちろん、本当にそういう仕組みなのかは分からない。
運営が最初からどこまで用意しているのかも、俺には確かめようがない。
ただ、今回の西道では俺が関わったことでハルドが動き、これから道も少しずつ変わっていく。
その変化の先でまた別の何かが起きることもあるのかもしれない。
「……どこまで動いていくんだろうな、この世界は」
前より少しだけ、《後日談クエスト》という名前がCROらしく思えた。
俺は名簿へ視線を戻す。
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ロイ
マーロ
エダ
ルッツ
ノーラ
セイル
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今回、少し分かったのはエダだけじゃない。
ノーラとセイルも一緒に補給の仕事をしていた。
エダについてはあの村で生まれ、西道を昔から知っていたことまで分かった。
名簿の一番上にいるロイとは《失われし丘陵》で会ったきりだ。
あのとき5人の認識票を受け取り、最後まで撤収の仕事をしていた。
《第七補給隊》でどんな立場だったのかまでは分からないが、あのときの様子からも他の5人とは少し違う位置にいたようには思う。
その下。
――マーロ。
「……そういえば」
ベルカ村で見つけた関連記録を思い出す。
確認者として残っていた名前はマーロだった。
あのときは《第七補給隊名簿》に載っている名前を見つけたことばかり気にしていた。
何を運んでいたのかも見た。
でも、それが灰冠戦のいつ頃だったのかまでは特に気にしていなかった。
エダやノーラ、セイルが三人で動いていたのは灰冠戦のおよそ1か月前から直前にかけてのはず。
「……マーロはいつだったんだ?」
同じ名簿に並んでいてもそこに来るまでにそれぞれの時間がある。
エダたちにあったのならマーロにもあるはずだ。
俺は名簿を閉じた。
もう一度、ベルカ村へ行ってみよう。




