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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第一章

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王族が入場してきた!

 すると、お嬢様がわたしをぎゅっと抱きしめてくれた。

「お父様!

 キューは竜じゃなくても、凄い子なんです!

 本当に、凄い子なんです!」


 お嬢様……凄く好き!


 わたしはお嬢様にぎゅぅ~っとされながら、お嬢様の愛を体いっぱいに感じていると、竜博士アダンさんがフォローを入れてくれた。

「お嬢様のおっしゃるとおりです。

 確かにこの子は竜ではないにしても、羽があって飛べる白竜モドキは非常に希少な存在です。

 それに、現在の学会(我々)の中での位置づけは、確かに竜ではありません。

 ただ、今後違う解釈が主流になり、この子も新種の竜とされる可能性も捨て切れませんので」

 なるほど、つまりわたしは竜族(仮)といってもけして間違っていないと言うことか。

 う~ん……かといって、複雑な気持ちは抑えられないなぁ。

 なんて考えてしまった。



 パパさん達、男性陣がなにやら話し込んでいる間、わたしやお嬢様はご婦人、ご令嬢、そして、お子さま達に囲まれていた。

 そのほとんどが好意的で、先ほど怖々としていた人たちも、何やらニコニコとしながら近寄ってきた。

 始め、何故かと困惑していたが、徐々にその理由が分かってきた。


 要するに、わたしがドラゴンでないと知って安心したのだ。


 そうすると、何やら可愛らしくモフモフしたトカゲ? に興味津々になり、近づいてきたという事らしい。

 特に幼い子供達は、わたしにメロメロの様で、何人もの子が『撫でさせてください!』とお嬢様に懇願しに来た。

 まあ、わたし、可愛らしくも威厳あるドラゴン(仮)だから仕方がないよね!

 お嬢様はわたしの様子を伺いつつ、要望のあった子にわたしの頭を撫でさせている。

 そこまで気を使う必要は無いのだけど、その心遣いには感謝と共にほっこりとするね。


 突然、BGMの用に流れていた楽団の曲がフェイドアウトしていき、代わりに朗々とした声が響いた。

「ジョセフ第一王子殿下、ヘンリー第二王子殿下、イザベル第一王女殿下、ご入場されます」

 突然、周りにいる皆がその場で膝を付き、頭を垂れた。

 お嬢様もわたしを地面に優しく置くと、優雅に礼をする。

 頭を上げているのは状況に付いていけず、キョロキョロと辺りを見渡すわたしだけのようだった。


 え、え、何これ?


 わたしは怖くなり、取りあえずお嬢様の後ろに逃げ込むと、小さくなった。

 トランペット? とにかく管楽器の音が響く。

 そして、幾人もの人が歩く音が聞こえてきた。

 おそらく、王子様らが入ってきたのだろう。

 わたしは無礼討ちとかになりたくなかったので、さらに身を縮ませた。

 しばらくすると「皆様、頭を上げてください」という女の子の声が聞こえてきた。

 全員が同時に頭を上げ、立ち上がる。

 もう、バッ! とかいう擬音が付きそうに同時だったので、わたしは驚きでビクっっと震えてしまった。

 女の子の声がさらに続く。

「ご談笑中、失礼しました。

 皆様、我らには気にせず続けてください」

 BGMと共に、人々が上げるざわめきが戻ってくる。

 わたしが怖がっていたのに気づいていたのか、お嬢様は振り向くと、「キュー、大丈夫よ」とわたしを持ち上げ、撫でてくれた。

 わたしはまだドキドキしていたので、お嬢様にぎゅっと抱きついた。


 もう、こういうことは事前に言っておいてほしい!

 パパさんは、本当に駄目なパパさんだ!


 などと心の中で悪態を付くと、当人が少し急ぎ足でこちらに向かってきた。

「カティ、殿下達にご挨拶をしに行くぞ。

 キュートリック、お前もだ」

といいつつ、わたしの方に手を伸ばしてきた。

 なので、体をくるっと横反転し、しっぽでその手をペシリとしてやった。

「痛!

 何するんだ!」

とパパさんが手を押さえて小さく怒鳴ったが、こっちだって怒っているのだ!


 わたしをモドキと見下ろして来た事、そう簡単に忘れると思って貰っては困る。


 わたしはお嬢様からちょこんと降りると、映画の怪獣の様に手(前足)を胸元に持ってきて、「がぁ! がぁ!」と威嚇した。

 そんなわたしの剣幕に、パパさんは困惑するように眉をハの字にした。

「なんだ?

 なんで、キュートリックは怒っているんだ?」

 すると、お嬢様が立ち上がると、わたしの後ろで仁王立ちになり、両手をそれぞれの腰に置いた。

「お父様!

 キューはお父様にモドキと言われて傷ついているのです!

 まずは謝ってください!」


 お嬢様……流石お嬢様!

 わたしの気持ちをきちんと汲み取ってくださる!


 わたしが感動しながらお嬢様を見上げていると、カツカツというハイヒールの音が聞こえてきた。

 そして、突然わたしは持ち上げられる。

「がぁ!?」

 見上げると、ママさんのキツメの顔があった。

「あなた達、何をやっているの!

 ほら、行くわよ!」

と言うと、わたしをその豊満な胸で抱きしめると、ママさんはずかずかとどこかに進んでいく。

「お、おい!

 待ってくれ!」

という、パパさんの何とも情けない声が聞こえてくるが、進む速度は変わらなかった。



「イザベル第一王女殿下、ジョセフ第一王子殿下、ヘンリー第二王子殿下、ご健勝のこととお喜び申し上げます。

 また――」

などと、パパさんが長々と挨拶をし始めた。

 その後ろにママさんやお嬢様がひざまずいている。

 わたしは無礼討ちとかされたくないので、お嬢様の後ろに逃げ込み、小さくなった。

 王族とかおっかないもんね。


 にもかかわらず、突然持ち上げられると、前に連れて行かれた。

「ガァアガァア!」

と嫌がるも、どうやら犯人は(わたしの中で)空気が読めぬで定評のあるパパさんだったようで、わたしの脇に手を差し込み、がっちりと固定しやがった。

(このっ!

 このっ!)

としっぽで顔面を叩いてやろうとするも、「こら! おとなしくしろ!」と腕を前に出し、それを避けた。


 くそぉ~パパさんの癖に!


 そんなことをやっている間に、王族だろう二人の男の子と女の子の前に連れてこられた。

 一人はお嬢様が嫌そうにされていた例の男の子だった。

 イケメンだが、相変わらず性格が悪そうな顔をしていて、わたしに一瞥をするとつまらなそうに鼻を鳴らした。

 もう一人の男の子は、第二王子君? 性格が悪い王子より幼そうだ。

 人付きの良さそうな笑顔が凄く可愛い。

 そして、女の子――王女様はお嬢様や王子達よりいくぶんお姉さんのようで、わたしの方を興味深げに見て来た。

「まあ、可愛い竜ちゃんね。

 何という名前なのかしら?」

と王女はパパさんではなく、その後ろにいるお嬢様に訊ねた。

「キュ、キュートリックでございます、殿下」

 わたしからは見えないが、お嬢様の上擦った声が聞こえる。

 お嬢様も緊張されているようだ。

 お可哀想に……。


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