お嬢様とお風呂!
パパさんに、鷹狩りもどきをやらされたので、わたしはすっかり疲れてしまった。
なので、今日はお風呂に入れて貰おうと思う。
わたしの白い毛はなんか汚れにくいのか、常に真っ白でさらさらだから、Web小説の登場人物の様に、前世日本人だからって毎日お風呂に入りたい病に掛かる事は無い。
お嬢様が入浴する3回に1回ぐらい、ご一緒するぐらいだ。
浴室の方に向かうお嬢様の後をちょこちょこ付いて行くと、お嬢様は振り向き、嬉しそうにする。
「キューも体を綺麗にするの?」
「がぁ!」と答えると、お嬢様は「ふふふ」と笑いながら、わたしを抱き上げてくれる。
そして、一緒に連れて行ってくれる。
お嬢様の抱っこ、温かい!
浴室の手前にある脱衣場で、お嬢様の着替えをメイドさんが行う。
お嬢様はお風呂に入る時、裸ではなく、薄い山吹色っぽい服に着替える。
前世で言う湯浴み着かな?
裸の方が、体を洗ったりするのに良いと思うんだけど……。
同性とはいえ使用人さんが一緒にいるからかな?
そんな事を考えていると、お嬢様の支度を終えた巨乳メイドのアネットさんがわたしを抱き上げた。
勿論わたしは湯浴み着など着ない。
ドラゴンだからね!
「キュートリックはわたしが洗ってあげるわね」
アネットさんはそう言いつつ、わたしを運びながら浴室の扉に手をかけた。
因みにアネットさんを含むメイドさん達は、お嬢様のお世話を交代でしつつ、普段のお仕着せの上に白の割烹着っぽいものを着ていた。
あと、水に濡れないようにだろう、普段、しっかり降ろされているロングスカートが、膝上辺りまで上げられている。
白い素足が見えて、ちょっといやらしく見えたりする。
……いや、その感想は、前世、中学生女子として問題かもしれない……。
などと、わたしが考えているとも知らず、アネットさんは浴室の扉を開けた。
浴室はやっぱり広い!
前世中学校の野外学習で使った施設のお風呂場――シャワーが3つぐらいあったそこより若干狭いぐらいかな?
大理石で出来ているっぽい床や壁、天井に高級感があっておしゃれだ。
ただ、浴槽はそこまで大きくない。
前世の雑誌にあったお金持ちな人の家のものぐらいかな?
初めて入った時、なんでこんなにアンバランスなのか不思議だったけど……。
その理由は、すぐに分かった。
お嬢様の入浴だけでも、5人ほどのメイドさんが付いていて、色々とお世話をするために動き回る必要があるからだ。
あと、お嬢様はされないけど、お風呂で温まった後、一旦外に出て飲み物を飲みながら休憩、しばらくして再度入浴するといった為にあるだろう、椅子やお湯を温める道具っぽい物が揃っていた。
異世界のお金持ちは桁違いだね!
そんな事を考えつつ、わたしを浴室の隅に連れて行ったアネットさんが「お湯をかけるわよ」と言いつつ、お湯の入った桶を持ち上げたので目を閉じる。
程良い温かさのお湯を全身で受けて気持ちが良い!
あと、石けんでゴシゴシ洗ってくれる。
泡は余り立たないけど、良い香りがするそれは、とても心地よい。
再度お湯をかけて貰い、石けんを流す。
すっきりした!
視線を浴槽に向けると、先ほどまで他のメイドさんに体を洗って貰っていたお嬢様が、浴槽に入る所だった。
すると、アネットさんがわたしを持ち上げ、そちらに連れて行ってくれる。
うむ、大きい胸がボンボン当たるのも、大分慣れてきた。
運ばれるわたしに気づいたお嬢様が、ニコニコしながら「キュートリック、こっち!」と両手を広げてくれた。
濡れた髪を束ね、湯に濡れた艶やかな白い頬が、温かさのためか薄らと赤みを帯びている。
わたしのお嬢様、恐ろしいほど可愛いんだけど!?
アネットさんがお嬢様の側にわたしを下ろすと、お嬢様が受け取ってくれる。
ふむ、角度の浅い浴槽にもたれるお嬢様の――その胸に顎を乗せ、お湯に浸かる。
う~ん、癒やされるぅ~
さらに、お嬢様が背中を撫でてくれて、心地が良い!
……ふむ。
後ろを向いてみる。
湯気が薄らと立つ水面が、ゆらゆらと揺れる。
浴室に比べて小さいとはいえ、小さなお嬢様が入ると、結構大きく見える。
これ、ちょっとなら泳げそうかな?
振り返ると、お嬢様の足の方に突入する。
これでも、前世で水泳の授業を小中学生で習ったはずのわたしだ!
行けるはず!
などと腕(前脚?)でお湯を掻こうとしたんだけど……。
「ぼぐぼぐぼぐ!」
頭から思いっきり沈んでいった。
わわわ!
慌てていると、首根っこを掴まれ水面から顔が出た。
目の前には、呆れた様に目を細めるアネットさんの顔があった。
「キュートリック……。
あなた、なにをやってるの?」
いやいや、本当はスルスル泳げたはずなの!
多分、この体じゃ、勝手が違うだけで!
お嬢様の元に戻されつつ考える。
大きい頭から見て、小さいわたしの腕(前脚?)ではクロールも、平泳ぎも、少々難しい。
竜って泳げるように出来ていないのかなぁ?
う~ん。
あ、あれ?
そういえば、竜の顔って鰐に近い。
そう考えると、鰐っぽい感じに泳げば良いのかな?
再度、お嬢様から離れつつ、今度は顎をあげ、水面にぺたんと浮く感じになる。
お、きちんと浮いている。
更に、尻尾を、お嬢様に飛沫が掛からない程度に横に振ってみる。
お、すいすい進む!
凄い!
感動していると、またしても首根っこを掴まれる。
「がっ!?」
視線を向けると、今度はお怒りモードなアネットさんの顔が見えた。
巨乳メイドさんは眉を怒らせながら「浴槽で泳がない!」と叱ってくる。
えぇ~
ちょっとぐらい良いじゃない!
でも、お嬢様も少し困った顔で「キュー、湯に浸かるだけにしようね」と言ってくる。
ぬぐぐ、お嬢様にも言われては仕方がないか……。
――
パパさんは、どうにもこうにも、わたしを鷹狩りの鷹にしたいようで、それから毎日、いろいろと練習をさせられた。
正直、かなり迷惑ではあったのだけど、食住でお世話になっているので邪険にし続けるわけにも行かず、三度に一度は言われる通りにした。
そして、そんなこんなとやってるうちに一月が過ぎた。
今日なんて、晴天になり、せっかくのお昼寝日和にもかかわらず……。
屋敷から二時間ぐらいの草原まで強引に連れてこられた。
ピクニックをかねて同行したお嬢様は、少し離れた場所でアネットさんにお茶の準備をさせていた。
わたしもお嬢様と一緒にいたかったのだけど、パパさんに無理矢理引き離された。
酷い!




