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煩能〜108の能力で闘う者たち〜  作者: のっぽ童子


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5/12

秋が有ったり無かったり

夜が過ぎ......


竜成は目を覚ました。


(あれ、なんで裸......)


そこはホテルの一室のように思えた。

高級感のある白いベッドに茶のカーペット、右にはお手洗いの部屋がある。

他にも壁付きの机やクローゼットなど。

ただ......


(落ち着かねぇ!)


竜成にはそれが好ましくなかった。

立ち上がると、机に黒い服が置かれているのに気付く。


(これを着ろってことかな......流石に裸で出るわけには行かないし、申し訳ないけど着ようか)


その服を着て、数分後......

なぜか、嫌そうな表情で竜成はリビングへの扉を開けた。


「お、起きたか! タツ......ぷっ......! ガハハハハ! なんだ、その格好!」


ニコラスが椅子に座って、嘲笑うように竜成を見た。

それもそのはず。

竜成が着てたのはドクロのマークが入った服と黒のドクロまみれのズボンだった。


「うっせぇな! というか、これ誰の服だよ!」


「そういうお歳頃なんだな」


サイトがそう言う。


「違ぇって!」


「あー、それ。俺の古着だ」


田中の一言はこの場の全員を凍らせた。

気にせず、田中がショットを呑む。


(絶対に有り得ないと思ってたのに......!?)


竜成は驚きが隠せない。

それと同時に若い頃の田中をイメージしていた。

うん、ダサい、と。


「あ、あの.......! 私、春夏冬(あきなし) 秋有(ときう)って言います!」


そんな空気を切り裂くように女声が聞こえた。

その方を向くと、桃色の髪を持った白ジャージの女の子が居たのだ。

距離は30cmもない。


「ん? って、わっ!!!」


竜成は再び、驚いて後ろに下がる。


「タツちゃん、ごめんね。悪気は無いの。トキちゃんは距離感を治そう? ねっ!」


「はいぃ......」


「いや、俺は......全然」


竜成はそっぽを向いて、顔を赤らめながら言う。

この感じ......女性に弱いのだろう。


(本来、医者がその役割なんだがな)


田中は雨鴉の方を向いている。


「あ、そうだ。今日はデパートに行くぞ。竜成をあの格好のまま、居させるわけにも行かんし......」


「これ、田中さんのせいだからな!」


「皆もこれを機に休め。ただ、問題が起こった時用に俺はここで待機する」


田中は竜成の言葉を無視して進める。


「了解だぜ!」


「まぁ、デパートだから、然程(さほど)の問題は起きないだろうが、頼んだぞ、サイト」


「分かりました」


------時は流れ......


「はぁ......」

(なんでこうなるかなぁ)


サイトたちのいるデパート2Fでは服屋や雑貨屋などが並んでいたのだが、各々が散り散りになったせいでサイトはどうすればいいか分からなくなっていた。


無論、斧はギターのバッグに入れて、偽装してある。


竜成は服屋、雨鴉は飯屋、ニコラスはスーパー、秋有はサイトの顔色を伺いながら、周りをウロウロとしている。


(ちゃんとしているのは秋有だけか。服は良いとして......雨鴉さんを止めないとな、出費が(かさ)むと田中さんの金が無くなる......ん?)


「秋有、竜成の方に行ってやれ。どうも心配だからな」


「あっ、分かりました!」


秋有は可愛い猫のぬいぐるみを持つ手を止めると、すぐさま、サイトに寄った。

その時にぬいぐるみに向かって、バイバイと手を振った。


「どうやら、敵さんは休ませてくれないようだな」

(遂に動き出したか......協会め)


すると、どこからともなく現れた輩がナイフを握り締めて、サイトを取り囲んだ。


「斎藤 彩斗だな。ここで殺れば、俺も幹部昇格だ!!!」


「じゃあ、俺以外も狙ってんのか」


「当然だろう?」


「お前ら......家族(なかま)に手ェ出して、無事でいれると思うなよ?」


極限の怒りは燃えたぎることを忘れ、凍てついてしまう。

そうなったサイトがギターバッグから斧を引き抜くと、赤に染まった柄が顔を出したかと思えば、刃までもが血濡れたようだった。


------1Fのスーパーコーナーでは。


「待てやぁ! 幹部に昇らせろぉ!」


ここでもナイフを持った協会員がニコラスを追いかけていた。


その異常な事態に客たちは一目散に逃げて行く。


「しつけぇなぁ!」

(タツナリとサイト、トキウは大丈夫だろう......問題なのはアマガラスさんだな)


ニコラスは協会員が能力を発動するより前に『睡』を駆使して、そのほとんどを眠らせながら、雨鴉の元へ行く。


------その狙われているであろう雨鴉は......レストランで大きなステーキを頬張っていた。

周りの客は怯えているが、それを気にも留めていない。


「うん、美味い! ......ん?」


雨鴉が振り向くと、後ろに黒いスーツを着た痩身(そうしん)の男が現れる。


「おい、雨鴉だな? お命頂戴する」


「あんた......もっと、肉食いなさいよ!」


「え?」


その瞬間、雨鴉の拳が顔面にめり込むと、男は入口のガラスのドアを突き破って倒れた。


「あ〜、まぁたやってら」

(マジで能力チートだな......)


そこにニコラスが居合わせる。


雨鴉の能力『辺執見(へんしゅうけん)』は雨鴉が思い込んだものをその通りに実現することが出来る。

唾で傷が治るのも、叩いたら機械が直るのも、極端であるが、雨鴉にとっては全て正しいのだ。


「ニコラス! 丁度良かった! そいつ、捕まえてよ!」


「はいはい」


どうやら、ここは大丈夫そうだ。


------その時、サイトは交戦していた。

既に数人を倒しており、残りはあと4人だ。


「グルルルルルル」


見る限り、強面で青の槍を持つ男、細身にオーバーオールを合わせ、橙の球形のバリアを張る男、何も変化がない悪人面の男、狂戦士(バーサーカー)と化した男がいる。


「そろそろ、死ぬと良い!」


強面の男が間合いを潰し、青の槍を突き出す。

その穂先がサイトの横腹に刺さる......と思われた。

しかし、本来、刺さっている部分には赤い光沢を持ち、厚さのある何かがあった。


「お前がな」

【斎藤 彩斗の煩能『忿(ふん)』】


サイトが斧を振り被ると、男は防ごうと槍を前へ出すが、その威力までは殺せない。

そして、槍の男は悪人面の男を巻き添えにして、文房具コーナーの商品棚にぶつかって、2人とも気絶する。


「まじかよ......」


気を取られた瞬間、オーバーオールの男の眼前にサイトが現れる。

バリアの中へ入ろうとすると、斧が弾かれた。


「これはな、煩能を弾くバリア。お前はどうせ、武器が頼りなんだろ? なら、心行くまで殴り合おうや!」


オーバーオールの男は右腕を奥に、左腕を手前に置き、闘う姿勢を取る。


「喋る間があるなら、手を動かせ」

【それは......五体や所持物に怒りを纏わせることが出来る!】


サイトはオーバーオールのストラップを掴み、男を引き寄せると、『忿』を付けた右拳を浴びせた後に足を掛け、体勢が悪くなったところで地面へ投げ、撃墜させた。


「俺は田中(ゴリラ)さんに鍛えられたからな、肉弾戦は得意分野だ。最後」


振り向くと、バリアは徐々に解除され、残ったのは狂戦士(バーサーカー)の男のみ。


サイトは斧を拾い上げると、男に横へ切りかかる。


「ガウ!!!」


男が容易く後ろへ回避した。

すると、すぐ側にあった寝具コーナーのベッドに脚を取られ、座るように倒れる。


「肉体よりも理性が強い時はある。それを見定めてこその人間だろう?」


サイトが右足の靴に赤い何かを纏わせ、そのまま、男の側頭部を蹴ると、男は呆気なく、ベッドから落ちて、意識を失った。


「ふぅ〜.......」


サイトはベッドに腰掛ける。

その時、足音が聞こえてきた。


「サイト〜! 無事か〜?」


ニコラスを見た時、サイトの口角が少し上がる。


「ニコラスと......雨鴉さんも! 後は秋有たちだけだが......」


「あ、いるぞ」


「良いタイミングで来るな......漫画かよ」


右を見ると、歩いてくる2人の影があった。

その姿が掴めて来ると......


「「「ふっ......!」」」


一同が一気に吹き出す。


「ただいまです!」


「サイトさんって。あれ......なんで笑って......?」


竜成は困惑していた。


「いや、だって、お前っ、その格好......」


竜成はドクロ尽くしのファッションから一転......黒の

パーカーに空色のデニムのズボンに切り替えた。

しかし、今度は星尽くしであった。


「あんまし変わってねぇ! ガハハハハ!」


「はぁ? 星はカッコイイだろうがよ!」


「そうだった......竜成だけでも怪しかったのに、秋有は完全にダメな方だったのが抜けてたな......」


「ん......?」


秋有は首を傾げる。


「サイちゃん、気に病まなくて良いわ。トキちゃん関係なく、結局あれだったわよ」


ステーキを食べまくった雨鴉がサイトを慰めるという謎の構図になった。


「確かに......そうだな。とりあえず、帰って。報告するか......」


------一同が拠点に着くと、リビングへ集まる。


「はぁ......なんでそうなった?」


田中が頭を抱える。


「俺だって、分からないです」


サイトもだ。


「まぁ、なんだ......人それぞれの感性があって、良いと思うぞ。俺は」


「なんでこんな扱いされなきゃならないんすか!」


「あ、そうだ」


田中が話をすり替えようとする。


「ちょっ、無視せんでください!」


「この後、親睦会を開こうと思っているんだが.......」


「詳しく」


竜成は田中を凝視した。


「お、おう。支部に新しいメンバーが来た時は食卓を囲んで話し合うって決まってるんだ。ちなみに強盗を追いかける前には予約してある」


「えっ......それって、もし任務で俺が死んでたら、どうしたんです?」


「どうせ、本部の経費で落ちるんだ。新入りが居なくても、ぱぁっとやるさ」


「そんなぁ......!」


竜成は泣きそうになっていた。


「冗談だ、半分」


「はんぶ......えっ?」


竜成の表情は無となる......



車の中で。


サイト「ニコラス、お菓子だけで5000円って初めて見たぞ」

ニコラス「まぁ、皆で食う物だから......な?」

サイト「分かった。その代わりチョコは貰う」

ニコラス「......了解」


サイト「あ、雨鴉さん。食費で1万超えてんですけど......」

雨鴉「しょうがないじゃない! お腹が空いたんだもの!」

サイト「流石に限度が......まぁ良いか」


サイト「そういや、竜成? その服っていくらだったんだ?」

竜成「え〜と、確か......合わせて3万ですね」

サイト「3......?(魂が抜ける)」

竜成「あ、死んだ」

秋有「サイトさぁん!!!」


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