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煩能〜108の能力で闘う者たち〜  作者: のっぽ童子


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煩わしい組織

「ん......」


キャップ男が目を覚ますと、目の前に3人の男が立っていた。


「あぁっ! クソがっ!」

「解きやがれってんだ!」


キャップ男とガスマスク男は縄で縛られ、身動きが取れない。


「お前らは”協会の者”か?」


「協会? はっ、知らねぇな」


「じゃあ、用無しだな。トドメを刺してやれ」


「『(すい)』」


ニコラスが手をかざすと、半透明な緑色の円柱が現れる。

その周りにいた虫は例外なく、地に堕ちた。


(ね、眠っ......)


そんな物に触れた2人は眠る。


「言い方怖すぎねぇ......ませんか?」


竜成はその円柱を不思議そうに見つめている。


「さて、そいつも連れて帰ろうか。えっと、車は......」


田中が振り返る。

すると、そこにあったのは壁に突き刺さり大破した車の残骸だった。


「「「あ」」」


------田中が通話して、少し経ち......


急に勢いの凄い黒塗りのSUVがアパートへ侵入してくる。

さながら、闘牛と言ったところだ。

そこから出てきたのは、雨鴉である。


「3人とも、お疲れ様!」


「あー、来て早々悪いが、雨鴉。あの車診てくんないか」


田中が壊れた車を指差すと、雨鴉はそっちへ向かっていった。


「了解!」


雨鴉は一切、道具を持っていない。


「あれ......雨鴉さんって医療担当ですよね? 機械を任せても......」


医療担当が唾を付けるというのは、中々に終わっているが、能力上仕方がない。


「分かる。俺も最初そう思ったもん。ただ、すげぇよ。雨鴉さんは」


ニコラスは笑顔を見せた。


「こんなん、叩きゃ直る」


雨鴉が車を診て判断し、角をトントンと叩くと、車が一瞬にして新車になる。


「はぁっっっっっ!?」


竜成はその状況を見て、びっくりするどころではなかった。


「な、すげぇだろ。ブラウン管テレビの直し方をどの機械でも通じるって思ってんだよ。ああいうのを化石って言うんだろうな」


「あのレベルは......雨鴉さんだけだと思いますよ」


「同感だ」


「よし、帰るか」


田中が重い腰を上げて、新車になった物へ乗り込む。

今回は雨鴉とニコラス、田中と竜成で分かれて移動するようだ。

捕まえた二人は田中の後方座席に放っている。

そして、2車とも急発進する。


「竜成、初任務はどうだった」


車の中央の上部にあるミラーを覗きながら、訊く。


「強盗があんなに強いなんて、思いませんでしたよ」


「強い......か。まぁ、人それぞれだが、今回のは厄介だったと言う他ない。それはそうと、お前の活躍は目を見張るものがある」


「というと?」


「普通の奴なら、まずビビる。しかし、お前は自分に課せられた任務をやってのけた。素晴らしいことだ」


田中は無表情で淡々と述べる。


「ずっと、気になってたんですけど、皆の能力を知りたいなって」


「ああ、急だったからな。ただ、それよりも先に基礎的な部分も話しておかなきゃならない」


「ん?」


「煩能は人の感情から生み出されるエネルギー、言わば感情エネルギーで創られる。お前だったら、怨恨という感情を出して、あの黒いメリケンサックを形創るって感じだ」


「だから、特定の状況下でしか出ないのか......いや、ですね」


竜成は敬語に直す。


「んで、それは特定の心理状態でも起こる。俺の場合は相手の能力を信じないことで発動するからな」


「でも、能力の存在は知ってるわけですよね」


「ああ、問題はそこだ。俺は脳が出す真実に嘘をついて、心まで操作するが、大抵の人間は出来ない。どれだけ、自分を殺して能力に支配されるかだな」


「んぅ???」


竜成の脳はパンク仕掛けていた。


「つい、話し込んでしまったな。話を戻そうか。煩能には3つの属性がある」


「ほう?????」


「えっとな」


1つは『(しん)』怒りや恨みで発動し、パワーアップする。お前やサイトが該当。


2つ、『(とん)』これは通常時でも発動可能で自分の欲を満たせば満たすほどパワーアップする。ニコラスが該当。


3つ、『()』ありのままで居続けることで発動し、パワーアップする。俺と雨鴉が該当。


「発動とパワーアップしか頭に入らないんですけど」


竜成は聞いた情報を右から左へ受け流していた。


「最後にもう1人いるんだが、中々に曲者でな。教えるより、見た方が早い」


「え、メンバー6人しかいないんですか!?」


(うるさ)い」


田中が竜成の鳩尾(みぞおち)に肘打ちをする。


「ぐぅ......」


あまりの痛みで竜成は声が出ない。


「うちの支部は全支部中、隊員が一番少ない。だがな、強さで言えば、全支部最強だ。俺がいるからな」


「た......っ、確か、に......」


竜成は最強の肘の威力を味わいながら、言った。


「元は本部にいたんだが、ここ最近、フクシマで(わずら)わしい組織が出来てな」


「組織?」


「ああ、お前も今後、接敵することになるだろうから説明しておく。その名も『煩能解放協会』。今回の犯行はあいつらの仕業だと考えていたんだが、ただの強盗とは思わなんだ」


「その組織は強いのか?」


「強い......かは置いとく。だが、お前には言っておかなきゃならないことがある」


その時、田中の言葉が重く感じた。


「なんですか?」


「お前の家にあった痕跡から調べたが、おそらく......竜成の両親を殺したのは、その協会のリーダーだ」


両親が死んだ、あの惨状を引き起こした犯人......それを聞いた途端、竜成は胸を締め付けられ、喉が痙攣し、心にマグマのような怨恨が満たされ始めた。


その証拠に右拳には黒いメリケンサックを帯びている。


「そうか......殺す」


竜成の目標への道が今、形成された。


「落ち着け、今のお前は一般人に毛が生えた程度だ。そんな野郎が挑んだところで前の二の舞だぞ」


「なら、強くなれば良いんだよな? んで、いつか、あんたを越してみせる!!!」


竜成は田中に指を差して、そうはっきりと言った。


「......期待してるぞ。ただ、その前に上司には敬語を使え」


「へぶ」


田中は片手で運転しながら、竜成を拳骨で撃沈させる。


(竜成は周りの影響を受けやすい分、ある意味......ジョーカーだな)


------拠点に戻ると。


「もう帰ってきたのか......あ......ん」


サイトはコーヒーを飲みながら、皆を迎えたが、竜成を見て気まずそうに頭を搔く。


「サイト、そう気にするな。竜成には軽く説明している」


田中は強盗2人の襟を掴んでいた。


「えぇ......」


サイトはなんとも言えない表情になる。


「えっと。サイト......いや、サイトさん。バディとして、よろしくお願いします」


竜成も気まずく手を伸ばす。


「そういや、名乗ってなかったな。俺は斎藤(さいとう) 彩斗(さいと)だ。この先短いかも知れんが、よろしく頼む」


サイトがその手を迷うことなく、受け取る。

竜成は彼の言葉に突っかかるようなことはしなかった......もう、それを身に染みて理解しているのだから。


「雨降って地固まったようでなによりだ」


田中が新しく出したショットを2口呑む。


「サイト〜! こいつな、すげぇんだぜ? 強盗と......」


「ニコラス、(うるさ)い」


サイトは耳を塞いだ。

ただ、仲は悪くないように見える。


「それより、治療だろう! ほら、怪我したところ見してみな!」


「いや、俺は怪我してねぇ......」

「俺も頭が割れたたけなんで......」


竜成の方は無理があると思うが、遮ろうとする2人の服を脱がし、唾を塗りたくった。

嫌悪感はあるが、それでも効果があるので否めない。

雨鴉の能力により、傷はすっかり塞がっている。


「よし、治療完了!」


「サイト、お前とアイツは、もう晩飯食ったか?」


「ん? ああ、食いましたよ。あの子は......もう寝てるんじゃないかな。もちろん、田中さんたちのは残ってますよ」


「いつも助かる。出来れば、竜成に会わせたかったんだが、明日にしようか」


田中は右の方にある扉を開けると、3人に手招きする。

その中は家庭らしさのあるリビングだった。

左側には全員が座れるような木の長机と冷たいステンレスのキッチン、右側には横長のテレビが置かれている。


(この匂い......)


濃厚かつ美味しそうな匂いが鼻を急襲する。

その瞬間、竜成がすぐさまキッチンに駆け寄り、そこにあった鍋の蓋を開ける。

チキンカレーだ。


「サイトの料理は美味いぞ。疲弊した身体には()みる。ニコラス、米を盛ってくれ」


「了解だぜぇ」


ニコラスは炊飯器を開けて、せっせと米を器に盛ると、竜成にそれらを渡した。


「雨鴉は......テレビでも点けてくれ」


「あいよ」


雨鴉はリモコンの電源ボタンを押して、テレビを点ける。


(一滴でも落としたら、踵落としとかはないよな......?)


竜成は丁寧にカレーを注ぎ、テーブルに置いた。

田中は全員分のスプーンを取って、先に座る3人に手渡すと、自身も座した。


「ほいじゃ」


ニコラスが思い切りに手を合わせる。


「「「「いただきます」」」」


その瞬間、一同が一斉にカレーを口に放り込む。

(((美味い!!!)))

(隠し味はチョコか)


1人を除いた全員が舌鼓を打った。


カレーの入った鍋は徐々に減っていき、1時間経つ頃には空っぽになっていた。


「はぁ、食った」

「そうね」

「苦しい......」


その原因はあからさまに3人である。


「俺は先に風呂に入る。ニコラスと竜成も後で来い」


「へいへい」


(後で......来い?)


竜成はその言葉に引っかかっていた。

その違和感はすぐに分かった。


カコン


「銭湯かよ!!!」


中は質素ながらも味わい深く、壁には幾何学的な文様が彫られており、床は冷たくも心地の良い石材が並んでいて、湯は3種類ほどあった。


田中は奥の湯でぐったりとしている。


2人は裸だが、腰にタオルを巻いている。

そして、共々隣で体を洗う。


「ん?」


その時、竜成はニコラスの体に奇妙な跡があることに気がつく。


「ああ、これか? 軍人だった時にちょっとな! 漢の勲章ってやつだ!」


軽い話ではないものの、ニコラスはにこにことしていた。


(この人も辛い過去があったのかな)


竜成は1人げに悲しい表情を浮かべ、シャンプーを塗る手を止めた。


「......なぁ! タツナリ! 早く、流して風呂入ろうぜ!」


ニコラスはそれを知ってか、知らずか気の良いことを言う。


「......うん!」


「おっしゃい!」


竜成とニコラスは体を洗い終え、田中が入っている湯に飛び込んだ。

水飛沫が田中を襲う。


(うるさ)い......が、それもまた一興だな」


動ずることなく、田中は珍しく缶ビールを呑んでいた。


「田中さんっていつも酒呑んでるけど、酔った姿見た事ねぇや」


「酔わない体質なんだよ。スピリタスとかも呑んだことはあるが、味で言えば度数の低い方が美味しいからな」


「ゲッ......」


竜成は率直に引いた。


「じゃあ、酒呑む意味ないんじゃ?」


「酒は百薬の長だからな、呑んだ方が良いんだ」


「それは......田中さんだけじゃねぇかな」


「そう......ですね」


その時、竜成の視界が歪む。

体が倒れそうになるが、ニコラスが前から支える。


「大丈夫か!? って......寝てる?」


竜成はニコラスの肩を枕にして夢の世界へ入った。


「今日だけでも3回は酷い目に会ってるからな......ニコラス、後で部屋に寝かしてやれ。あの服じゃ汚いし、この状態で良い。ただ、タオルは巻いてやってくれ。俺は見回りに行ってくる」


田中が湯から上がると、ニコラスの視界に彼は映らなくなる。


「本当に人遣いが荒いな!」

(これが終わったら、良い枕でも買ってもらわねぇとな.......)


と思うニコラスであった。


------その時、ある廃工場にて。

元は溶接や組み立ての機械があって、作業をしていたのだろうが、残っているのはその冷たい残骸のみ。

所々、壁は腐食しており、穴が無数にある。


「3人とも、よく集まってくれた」


トーテムポールのような仮面を付けた男......『煩能解放協会』のリーダーが壊れた溶接機に身を乗っける。

この男の存在感は異常だ。

その仮面の奥にある目は笑っていなかった。


「リーダーさんよ、何の用でウチらを呼んだんだい?」


ボロボロの茶色い服を着たオレンジ髪の女が話しかける。

今にでも胸がもろび出そうだ。


「紫電、単純なことだよ......分からない?」


「勘が鈍いもんでね。生憎、検討もつかないや」


「勿体ぶる事でもないんだけど......俺たちで煩能軍を潰そう」


その言葉は随分とねっとりとしていた。

仮面で表情は見えないが、目を見れば分かる......


(煩能軍、ひいては日本そのものを脅かすつもりか......)

「良いよ、その話乗ってやろうじゃん」


紫電は喜びの笑みで返す。


「2人はどうかな?」


リーダーの視点の先には、頭までも褐色肌のまるでゴリラかと見紛うレベルの筋肉を誇る男と黒いパーカーを着る白髪で背の低い少年がいた。


「僕は別に......命令に従うだけだから」


白髪の少年が言いにくそうに返答する。


「もちろん良いぜ! 俺の筋肉の素晴らしさを伝えられるならな!」


筋肉質の男はモスト・マスキュラーという腕をクワガタの角つののように下げたポーズをしていた。


「もちろん、そのための歩兵は動かすよ。じゃあ、頼むね。紫電、凱十(かいと)昂大(こうだい)


「おう」


この3人により、フクシマが混乱に包まれることになることを竜成たちは知らない。





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