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ダース・ベイダー日本転生(仮) EP2

第二話 佐藤陽菜はZDT48?


再会、そして渋谷の地下へ


青山 零は、内なる葛藤とフォースの暴走に苦悶しながらも、幼馴染である佐藤 陽菜の声に救われた。目の前には、故郷の高校を卒業して以来、会っていなかった陽菜が、心配そうな表情で立っていた。


「零くん、大丈夫?顔色悪いよ?」


陽菜は、零の大きな手から、彼のスマホが震えているのを見て、さらに不安な表情を浮かべる。零は、ベイダーの闇が心に囁く声を振り払い、陽菜に笑顔を向けようと必死に顔を上げた。


「陽菜…!なんでここに…?ってか、なんで俺がいるって分かったんだ?」

「え?たまたまだよ!私、今ここの大学に通ってて、バイトに行く途中だったの。そしたら、遠くから零くんみたいな大きい人がうずくまってて…」


陽菜は少し照れたように笑った。彼女の存在は、零の内面で荒れ狂うベイダーの嵐を、一時的に鎮めてくれるかのように思えた。


「そっか…よかった。久しぶりだな、陽菜」

「うん、久しぶり!零くん、寮はどこなの?もしかして、あの大学?」


陽菜は、零が持っている大学の資料を見て、目を丸くした。


「そうなんだよ。俺、ラグビーでスカウトされてさ」

「すごい!やっぱり零くんだね!私、電車で行くから、途中まで一緒にどう?」

「行く行く!俺も寮に行く途中だったんだ。桜新町って駅なんだけど…」

「え、私も!桜新町だよ!びっくり!」


陽菜は目を輝かせた。偶然の再会と、まさかの同じ駅の利用に、零の心は故郷にいた頃のような温かい気持ちになった。ベイダーの冷徹な感情が、陽菜の明るいオーラによって薄れていくのを感じる。

二人はスクランブル交差点から地下へと向かった。渋谷駅は、地上以上に、人々のエネルギーが渦巻く場所だった。壁一面に映し出されたデジタル広告、行き交う人々のざわめき、そして、どこからともなく流れてくる流行の音楽。


「すごいね、この駅。まるで迷路みたい」


零は、ごった返す人波に押されそうになりながら言った。

「そうだよ、だから気をつけないと!…あ、でも零くんがいるから安心だね!」

陽菜は零の腕を掴み、人波をかき分けていく。その純粋な仕草が、零の内面にあるベイダーの闇をさらに遠ざけてくれた。

地下鉄での奇妙な出来事

二人は半蔵門線のホームに降り立った。ホームには、電車を待つ人々がひしめき合っている。その中には、制服を着た女子高生のグループもいた。彼女たちは、スマホで何かの動画を見て、楽しそうに話している。


「ねぇ、見た?ZDT48の最新MV。マジで『きまZ』だよね!」

「わかる!ダンスが『秒で』覚えられるのに、クオリティ『エグい』し!」

「推しが『尊い』すぎて『草』www」


零は、彼女たちの会話に耳を傾け、不思議な感覚を覚えた。故郷では聞いたことのない、奇妙な言葉の数々。これが、帝都の若者たちの流行語なのかと、零は少し面白く感じた。その時、彼の脳裏に、ベイダーの冷徹な思考が閃く。

(…無駄な情報。だが、このグループが、帝国の国民統制に利用されている可能性はある)

ベイダーの冷徹な分析と、零の素直な好奇心が衝突する。


「ZDT48って、人気なのかな?」


零は陽菜に尋ねた。

「うん、すごく人気だよ!私も大好きなの。知らないの?」

「俺、最近までずっとラグビー漬けだったから、あんまり知らなくて」

「そっか!じゃあ今度、一緒にライブとか行こうよ!」


陽菜の言葉に、零は心から嬉しくなった。しかし、その瞬間、彼の胸の奥で、再びあの「静かなる闇」がうごめくのを感じた。


「…乗るよ!」


電車がホームに滑り込み、陽菜は零の手を引いて乗り込んだ。車内はすでに満員で、二人はドア付近に立つことになった。零の背後には、先ほどの女子高生グループが立っている。


「ねぇねぇ、見た?あのインフルエンサーの裏アカウント。マジでヤバいんだけど」

「え、どれどれ?うわ、ガチじゃん。これ、ディープフェイク?」

「いや、マジらしいよ。本人も認めたらしいし…」


女子高生たちの話に、零の心に再びベイダーの冷徹な声が響く。

(…愚かな人間ども。情報の真偽も見分けられないとは)

その時だ。車内に、不気味なノイズが走った。それは、電車の走行音とは異なる、甲高い電子音だった。そして、車内のビジョンに、先ほどの女子高生たちが話していたインフルエンサーの顔が映し出された。


「皆様、ごきげんよう。私、ZDT48のプロデューサー、黒崎 蓮と申します」


ビジョンに映し出されたのは、零が憧れるサブカルチャー評論家、黒崎 蓮だった。彼は、カリスマ的な笑顔を浮かべて、不気味な声を響かせた。


「この度、我々ZDT48は、国民の皆様に、より『真実』に近い情報をお届けするため、新たな試みを始めます」


零は、その言葉に違和感を覚えた。ビジョンに映る黒崎 蓮の顔が、一瞬だけ、冷酷な仮面を被った男の顔に変わったような気がした。それは、渋谷のビジョンで見たのと同じ、不気味な男の顔だった。


「ZDT48のプロデューサーって、そんな人だったっけ?」


陽菜が首をかしげる。その時、車内の女子高生の一人が、突然うずくまった。

「や…やだ…見たくない…!」

彼女はスマホを握りしめ、震えながら叫んだ。彼女のスマホの画面には、ZDT48のMVが流れている。しかし、その映像は、途中でノイズが走り、メンバーたちの顔が、不気味な仮面を被った男の顔に変わっていた。

「なにこれ…怖い…!」

他の女子高生たちも、次々とパニックに陥っていく。車内は、悲鳴と混乱に包まれた。

(…これも、憑依者の仕業か?)

零は、直感的にそう感じた。ベイダーの冷徹な分析が、この状況の背後にある「何か」を鋭く見抜いていた。


桜新町への道、最初の事件


電車は止まった。桜新町駅に到着したのだ。人々は、パニックに陥りながら、一斉にドアから飛び出していく。零は、陽菜の手を握り、彼女を人波から守った。


「零くん、大丈夫…?」


陽菜の顔は、恐怖に引きつっていた。

「ああ、大丈夫だ。俺が守るから」


零は、陽菜の手を握る手に力を込めた。その時、彼の内側から、再びあの圧倒的な力が溢れ出すのを感じた。

(…この力を使えば、この程度の混乱など、一瞬で鎮められる)

ベイダーの声が、零の心に囁く。零は、その誘惑に抗った。

「…いや、俺は…」

零がそう呟いたその時、目の前に、先ほどパニックに陥っていた女子高生の一人が現れた。彼女は、虚ろな目をして、零に向かって歩いてくる。その手には、ナイフが握られていた。


「…消えて…みんな…消えればいい…」


彼女は、零に向かってナイフを振りかざした。零は、陽菜を後ろに庇い、彼女の行動を止めようとした。しかし、彼の体は、まだベイダーの力に慣れていない。

(…仕方ない。この力を使うしかないのか)

零は、ベイダーの力に身を委ねようとした。その瞬間、彼の脳裏に、祖母の穏やかな顔が浮かんだ。

(…あやこおばあちゃん…)

「ダメだ…こんな力、使っちゃいけない!」


零は、ベイダーの支配に抗った。彼は、ナイフを振りかざす女子高生の手を、フォースではなく、自分のラグビーで鍛えた力で掴んだ。そして、彼女からナイフを奪い、地面に落とした。

女子高生は、ナイフを奪われ、その場に崩れ落ちた。彼女の目からは、涙がこぼれ落ちていた。


「…ごめんなさい…私…何してたんだろう…」


彼女は、正気に戻ったようだった。零は、彼女を抱き起こし、優しく背中をさすった。その優しさは、ベイダーの冷酷さとは正反対の、零自身の人間性だった。


「大丈夫だ。もう、大丈夫だから」


零は、そう言って微笑んだ。彼はまだ知らない。この事件が、彼が「日本帝国」というパラレルワールドで、最初の事件解決者となるきっかけであり、彼を憑依者たちの戦いへと導く、最初の事件となることを。そして、この事件の裏に、零が憧れる黒崎 蓮の思惑が潜んでいることを、彼はまだ知らなかった。



予告 第三話 桜新町はサザエさんの町?


桜新町駅に降り立った青山 零は、幼馴染の佐藤 陽菜と共に「サザエさん」一家の銅像を見る。カツオの銅像に自身の家族との葛藤を重ねた瞬間、零の内なるベイダーの感情と零自身の気持ちが衝突し、フォースが暴走。銅像を宙に浮かせ、落としてしまう。

パニックになる零を、陽菜は「ストリートアート」だと嘘をついて庇い、零は彼女の優しさに救われる。零はベイダーの力について陽菜に打ち明けようとするが、ベイダーの声に阻まれて言葉を飲み込む。しかし、「零くんを信じてる」という陽菜の言葉に、零は家族愛にも似た温かさを感じるのだった。


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