〇ース・ベイダー日本転生(仮)EP11
〇ース・ベイダー日本転生(仮)EP11
第11話 :卒業、そしてそれぞれの道へ
光と影が交錯した雨の夜から、季節は巡り、まもなく春が訪れようとしていた。
桜の花びらが舞う小学校の校庭を、零は一人見つめている。12歳になった零の表情には、以前のような焦燥感や、誰かを蹴落としてでも一番になろうとするギラギラした優越感の影はもうない。代わりに、どこか穏やかで、しかし確かな決意の光が宿っていた。あの日、土砂降りの雨の中、仲間を置き去りにした自分。ポップコーンの道しるべは、結局誰の役にも立たなかった。あの夜の出来事は、零の心に深く、消えない傷跡を残した。それは、後悔であり、同時に、本当の強さを知るための、かけがえのない教訓だった。
『スタンド・バイ・ミー』の少年たちがそうであったように、僕たちももう、あの頃の僕たちではない。
零は、いつものように放課後の校庭で、田中と伊藤と三人で、他愛のない話に花を咲かせていた。しかし、その輪の中に、秋山の姿はなかった。あの日以来、秋山は転校してしまった。別れの言葉も、ちゃんと伝えられなかった。零は、心の中で秋山に語りかける。-ごめん、秋山。あの日、俺はお前を見捨てた。一番になることしか考えていなかった。
卒業式の日、零は秋山に会うために、彼の家を訪れた。しかし、そこにいたのは、秋山の母親だった。「秋山は、もうこの家にはいないわ。零くん、本当にごめんね。」零は、秋山の母親の言葉に、胸が締め付けられるような痛みを感じた。もう、直接謝ることも、感謝を伝えることもできない。
零の**"力"**は、次第に家族の絆にも波紋を広げていく。零の母親は、零の急な成長に戸惑い、彼を縛り付けようとする。一方、父親は、零の秘められた"力"に、かつての自分を見ているかのようだった。それは、零が一番であることに固執し、それゆえに大切なものを失った、父親自身の過去。零の心に宿る力が、家族それぞれの感情と複雑に絡み合い、光と影のコントラストをさらに鮮明にしていく。
卒業式、在校生からの送辞を読み上げるのは陽菜だった。
「零くんは、零くんのままでいいんだよ」。
陽菜の言葉が、零の心に響く。零は、陽菜の言葉に、そして、これまで自分を支えてくれた仲間たちの存在に、本当の優しさとは何かを知る。一番でなくても、誰かの心の中に、温かい光を灯すことができる。それが、本当の強さなのではないか。
卒業証書を手に、零は、それぞれの道を歩み始める仲間たちを見送る。田中は、将来の夢であるプロゲーマーを目指し、伊藤は、いつものように笑顔で、零に手を振る。そして、零は、秋山と交わした約束を胸に、新たな道へと踏み出す。
これは、たったひとつの経験が、少年を大きく変える物語。
次回、第12話『零の旅立ち、卒業の空』
「ありがとう、そして、さようなら。僕たちは、それぞれの道へ歩き出す。」